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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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後編


岡部は、万年筆を胸の内ポケットに入れると、第九の執務室へと入った。
皆、帰ったようで、誰の姿も無い。

だが、その先の室長室からは、人の気配がする。
まったく、いつも部下を先に帰して、自分は遅くまで仕事をして・・・。

岡部はふと、先程の万年筆が入っている胸元に、手を当てた。
自分に関しては、さしずめ、とりたてて神頼みをしたいことなんて無い。
自分のことは、自分自身で努力をすればいい。

だが、他人のこととなると、そうはいかない。
今願うのは、薪がもっと、薪自身を大事にしてくれることだ・・・。

カタッ。
その時、室長室のドアが開いた。

「岡部、まだ居たのか」
そう言う薪は、スプリングコートを手にしている。
そして、岡部が見ているその前で、薪は、室長室のライトを消した。

「あの・・今日はもう、お帰りになるんですか?」
「ああ」
「珍しい・・ですね・・こんな早くに」
岡部の言葉は、滅多に無い出来事に、途切れがちだ。

岡部に見つめられ、薪は、やや視線を落とし、言った。
「・・お前がいつも言ってることだろう。自分自身を大事にして、たまには早く帰れと」

「!!・・薪さん!・・・・・・・」
岡部は、それ以上声が出なかった。

「目が赤いぞ。お前こそ寝不足なんじゃないか? 早く帰って休め」
「う・・・・・」
何も言えない岡部をよそに、薪は、テキパキと執務室の電源を落としていく。

「あ・・薪さん」
岡部は、内ポケットを探りながら、薪に近付いた。

「うん?」
振り返って見上げる薪に、岡部は、手にした物を差し出した。

「薪さん、これ、受け取って下さい」
「・・何の告白だ?」
「願いが叶う万年筆だそうです。オレはもういいですから。どうぞお持ちになって下さい」

薪は、第九を後にした。

岡部から万年筆を渡され、別に要らないからと、薪はそれを返そうとしたが、岡部は受け取ろうとしなかった。
そして、
「後は、オレがやりますから。お帰りになって下さい」
その言葉に、薪は岡部に任せて、帰路に着いたのだった。

庁舎を出ると、自然に足が速まる。

幸い、部下達の仕事も、今日は全て区切りが付いた。
今井と宇野の報告書も、及第点だった。
欲を言えば、2、3修正させたい点もあったが、宇野から受け取った文書データをもとに、その場で自分で書き直した。

何故なら・・・・・

今、薪の胸の中は、一つの願いで、占められていた。

「お帰りなさい!」
玄関を入るなり、出迎える声、その姿。

「・・青木」
靴を脱ぐのももどかしく、互いに、その場で抱き締め合う。

「驚きませんでした? 予定では、研修から帰り着くのは、もっと遅い筈でしたから」
「・・・・・・」
青木の声に耳を傾けながら、薪は、回した腕に、更に力を込める。

「最後の懇親会、断ってきちゃいました。・・研修自体はもう終わってるから、構わないと思って」
「・・お前なら、そうすると思っていた」

「薪さん・・・」
青木は、そっと薪の身体を離し・・その顔をなでる。
見上げる薪の瞳は、潤んだように輝いている・・・。

「・・・・・・」
青木は薪を抱き上げ、寝室へと連れて行った。




ベッドから抜け出し、青木は、散らばった服を手に取った。
薪のコートや上着を、ハンガーに掛ける。

そして、薪の上着の胸ポケットに刺さる物に気が付いた。
「これ・・願いが叶う万年筆じゃないですか?」
言いながら、青木は、それを手に取る。

薪は、ベッドで横を向き、頬付えを付いた姿勢で、言う。
「知ってるのか?」
「・・ええ。この前テレビで宣伝してしました」

「どうやら、願いが叶うというのは、本当らしいな」
「え?」
「僕は・・お前に早く会いたいと願った。そして、そのとおりになった」

薪の言葉に、青木の胸に、温かい疼きが走る。
そして、ある願いが生まれた。

青木は、万年筆を元に戻すと、ベッドへと戻る。
「・・早くないですよ。二週間ぶりに会うなんて・・遅すぎます」
そう言いながら、布団にもぐる青木の頭を、薪は、自分の胸に引き寄せた。

「青木・・」
薪は、青木の頭を胸の上で抱きながら、そっと・・言う。
「僕には、あの万年筆は必要ない。お前が使うか?」
「え?・・・」

見上げる青木を、薪も見つめて、言った。
「僕の一番の願いは・・既に、叶っているから」

見つめ合う二人は、顔を寄せ・・・口付けした。
顔を離すと、薪は、静かな笑みを湛えている。

「だったら、オレにも必要ないですね」
青木は、言った。

「薪さんの笑顔を見たい・・ずっと見ていたい。その願いが、今ここで、叶っていますから」
「青木・・」

薪の両手が伸び、青木の頬を挟む。
「青木。その願いが、この先も叶うことを望むなら・・・お前は、僕の願いを叶え続けさえすればいい」
「それは・・」
言いかけた青木の唇を、再び、薪の唇が捉える。

薪の願いが何なのか・・・薪も青木も、口にする必要は、無かった。




誰よりも先に出勤したその男は、第九の執務室を、あちこち歩き回っていた。
「あれえ?・・・やっぱり無いのかなあ・・・」

そこに到着した、青木。
「曽我さん、おはようございます。早いですね」
「ああ、青木。研修お疲れさん」
「留守にしてすみませんでした・・どうしました?」

尋ねる青木に、曽我は言った。
「それがさあ・・。万年筆が無いんだよ」
「え?」
「願いを叶える万年筆。テレビでやってたろ? あれを買ったんだけど・・昨日、どこかに落としたらしいんだ」

実は昨日、曽我は帰り際、浮かれて帰り支度をし、振り返った際に、デスクにぶつかって転んでしまったのだ。
ポケットに仕舞った筈の万年筆は、小池の席に飛んだ。

曽我は、万年筆はきちんと仕舞ってあると思い込み、探さなかった。
ぶつけたところをさすりながら、そのまま帰宅してしまったのだった。

「夕べ気付いて、慌てて家の中を探したんだ。でも見つからなくて・・後は、考えられるのは、ここしか無いんだけどなあ」

曽我は、デスクに座り、ガックリと肩を落とした。
その様子に、青木は、手帳を取り出すと、そこに刺してある万年筆を、抜き取った。

「あの・・もし良かったら、これ、差し上げます」
「え?」
青木が差し出した万年筆を見て、曽我は、目を丸くする。

「何だ!? お前も買ったのか?」
「いえ・・もらった物なんですが」
「これをもらった!? 誰に?」
「あ・・」

青木は、少し躊躇する。
薪も青木も、どちらも要らないと言いながら、結局、青木が持ってきたのだが。
薪から受け取ったと話すのは、薪との関係を晒すようで、少々マズイ気もして・・・

「あの・・研修先で知り合った方から、いただきました」
とっさに出たのは、そんな些細な嘘。

「はあ? 5万もするんだぞ? そんな太っ腹な人が居るのか?」
「ええ・・まあ」
言葉を濁しながら、青木は、曽我にそれを手渡した。

「オレは要りませんから。どうぞ」
「・・いいのか?」
見上げる曽我に、青木はうなずき、ニッコリと笑った。

「そうだ。研修先の土産、車に置いてきちゃいました。取ってきます」
青木は、部屋を出て行く。

それを見送り、曽我は、辺りを見渡した。
どうしても、失くした万年筆のことが、諦めきれなかった。

青木の気持ちは嬉しいが、出来ることなら、自分が買った、あの万年筆に返ってきてほしかった。
持っている間は、立て続けにいいことが起きた、あの万年筆。
自分のところに来るべくして来た・・そんな気がしていたのだ。

戻ってこい・・・!

曽我はそう願い、改めて周囲を見渡したが、やはり、どこかに落ちている万年筆が見つかる・・なんてことも無かった。
ふーっ・・と、大きくため息を付き、手にした万年筆を持ち上げて眺めてみる。

そして・・・・

「えっ!?」
思わず、声を上げた。

何度も瞬きをし、その部分を確かめる。
「・・・・・・」

間違いない。
これは、自分が買った万年筆だ。
掘り込まれたシリアルナンバーが、その証拠だ。

でも・・どうして?
何故、青木がこれを持っていたのだろう。
曽我は、首をひねる。

青木は、実は執務室に落ちていたこれを、拾ったのだろうか?
だが、それでわざわざ自分に嘘を付く必要は、どこにも無い筈だ。
第一、昨日まで研修に行っていて、今出勤した青木が、これを拾えるわけが無い。

どういうことだろう。

もしかして。
今自分が願ったから、瞬間的に、すり替わったということだろうか・・・・・・・。

・・よく分からないが。
とにかく、この万年筆は、自分の手元に戻ったのだ。
曽我は、そう自分に言い聞かせ・・・。

満面に、笑みを浮かべた。

その後。
この万年筆を手にする曽我を見て、小池が声を掛けた。
「曽我。それって・・」

「ん?」
「その・・前に見せてくれたやつか?」
「ああ」
曽我が、万年筆を手に、振り返る。

「あ・・いや、だったらいいんだ」
小池は、目をそらしてそう言った。
そして、前と同様、嬉しそうに万年筆をもてあそぶ曽我を見て、心底ホッとしていた。

さて。
そもそも、曽我がこれを手に入れた目的。

その一番の願いは、果たして、叶ったのだろうか。




願いごと 終





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コメント

■ 鍵拍手コメ下さったCさま

○3/9に鍵拍手コメント下さったCさま

コメントありがとうございます。

第九メンバーは欲が無い・・ですか。
あまりそういったことは考えていなかったので、なる程と思いました。

昔話編、想像してみました。
面白いですね♪

久々なあおまきラブラブとのお言葉に、過去記事を振り返ってみたら、「昔々の・・」は別世界バージョンでしたから、メイン創作のあおまきがこんなことをするのは、1月半ばの「デートに行こう!」以来なんですね。
当ブログでは、約2ヶ月ぶりのラブラブ・・ということになるでしょうか。

嬉しかったとのお言葉、こちらこそ大変嬉しく思いました。
お読み下さいまして、ありがとうございました。

■ 鍵拍手コメ下さったAさま

○3/9に鍵拍手コメント下さったAさま

こんにちは。
コメントありがとうございます。

岡部さんの無償の愛には、自分で書きながら泣けます(つ;)
それでいて、薪さんの反応は淡白で・・。
笑っていただけて嬉しいです♪

やはり、「久々のラブラブぶり」とお思いなのですね。
メイン創作のあおまきは、「デートに行こう!」以来、約2ヶ月ぶりのラブラブなのですが、2ヶ月開くと、「久々」という印象になるんですね。
それだけ皆さん、あおまきの幸せを見たいと願ってらっしゃるんでしょうね・・。

薪さんの一番の願いが叶う限り、青木の願いも叶う・・。
互いに、相手が居なくては成立し得ない願いだと思います。

曽我のこと、応援ありがとうございます(笑)
楽しかったとのこと、とても嬉しく、励みになりました!
どうもありがとうございました。

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