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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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※これは、「メロディ」6月号を読んで思い描いたものであり、清水先生の「秘密」とは、別世界でありますことを、ご了承下さい。


以前書いた「記憶」の続編です。


オリジナルストーリー

「記憶 最後の光景」




それは、夏も盛りを過ぎた日のこと。

「・・よし、OKだ」
そう言って、岡部は、書類を手に、顔を上げた。

「休憩にするか」
「はい」
岡部に報告書の合格をもらった宇野は、返事をしながら、微笑む。

ドアを叩く音がする。
「岡部さん、いいですか?」
「何だ?」
開いたドアから、中を覗き込む、小池。

「青木が来てるんですけど」
「ああ・・もう、そんな時間か」
岡部は、腕時計を見て、立ち上がる。

岡部は、室長室のドアから出た。
「お前らも、区切りを付けて休憩を取れよ」
そう言って、岡部は、そこを通り過ぎていく。

「はい!」
執務室に居た曽我や、岡部の後ろに立つ小池が、返事をする。

「あの・・こちら、青木さんからいただいたんですが」
山本が、干菓子の紙袋を手に、岡部に話しかける。

「ああ。休憩コーナーに置いて、皆で食べるといい」
「岡部さんの分は、室長室に持って行きましょうか」
「いや。後で、オレもそっちでひと休みする」
「分かりました」

「ちょっと、出て来るからな」
そう言って、岡部はその場を去っていく。
その後ろ姿を、残った者達が、目で追う。

その向こうには、かつて、共に捜査をした、長身の男が立っていた。




庁舎から、少し歩いた公園のベンチに、岡部は座っていた。
「どうぞ」
「お、すまないな」

青木が、自販機で買った缶コーヒーを、岡部は受け取る。
そして青木は、自分も同じコーヒーを手に、岡部の隣りに座った。

二人並び、コーヒーに口を付ける。

「前に・・・」
「ん?」
「前に、こんな風に、薪さんと二人で、ベンチに座って、コーヒーを飲んだことがありました。オレが落ち込んでいるのを気遣って、薪さんが買ってくれて・・・」

ゴクリとコーヒーを飲み込み、青木は続けた。
「あの時も。薪さんは、ずっと・・オレのそばに居てくれました」

「・・・・・・」
岡部は、そんな青木を見上げ、それから、視線を地面に戻し、口を開く。

「仕事・・始めたんだってな」
「はい。伯父のつてで・・事務の仕事なんですが」
「大丈夫か?」

「はい。まあ、まだ慣れないんで、戸惑うこともありますけど・・仕事自体は、何とかこなせそうです。それよりも、問題は、人間関係ですね。面接の時に、この学歴と職歴で、こんな仕事でいいのかって言われまして。最初は何だか、周囲の人達が、気を遣ってるというか、何だか遠慮されてる感じで。・・やっと、最近になって、新米として、こき使われるようになってきました」
「・・・・・・」

「給料が下がったのはキツイですが。でもまあ、貯金もありますし。父の残した退職金や、母の年金などをやりくりすれば、皆を食べさせる位は、何とかなります」
「・・青木」
「薪さんは、自分の退職金も使えと言うんですけど。何だか、それに手をつけるのも、申し訳なくて」

「青木、そうじゃない。オレが心配してるのは、そんなことじゃない」
岡部が言い、青木は、押し黙った。

「お前、このままでいいのか? ずっと、このままで・・・」
「・・・・・・」

束の間の沈黙の後、
「はい・・!」
青木は、キッパリと、言った。

「薪さんは、まだ、お前のことを・・」
「ええ」
岡部が何を言いたいのか、青木には、分かっていた。

「それでもいいんです。薪さんの心が、それで安定していられるのなら」
「・・確かに、ある意味、薪さんは、それで幸せかもしれない。だが青木、お前は、それでいいのか?」
「はい」

「あるいは、もしかしたら、薪さんが、元に戻る可能性だってある。その時はまた・・薪さんは、大きな苦悩を伴うだろう。その時お前は、それを、受け止め切れるのか?」
「・・・・・・」
「薪さんがこのままでも、元に戻ったとしても・・お前は、大変な責任と苦悩を抱えることになるんだぞ。お前に、その覚悟があるのか?」

『覚悟があって、言っているのか!』
青木の胸に、かつて、薪に言われた言葉が、浮かぶ。
そう・・あの時はまだ、自分は何の覚悟も、背負っていなかった。

「・・今のうちに、薪さんから、離れた方がいいかもしれないぞ」
「・・・・・・」
青木は、岡部の話を、じっと聞いていた。

岡部の言うことは、痛い程分かる。
岡部は本気で、青木を・・そして薪を、心配しているのだ。
生半可な思いだったら、かえって、薪と自分、双方を傷付けることになると。

だが、自分は・・・

「薪さんは」
青木は、話し始める。

「薪さんは、最後の最後まで、一緒に・・オレの為に、戦ってくれました」

・・あんな事になり、世の中は、大騒ぎになった。
カニバリズム事件も、大臣の自殺事件も、全ては白日のもとに晒され。
薪は、もう「特別」ではなくなった。

もちろん、薪の類まれな頭脳やキャリアが、特別な物であることには、変わりは無い。
だが、少なくとも、薪が一人で抱えていた数々の「秘密」は、「秘密」ではなくなり。
薪が、命を狙われる要素は、無くなった。

そして・・貝沼事件直前からの、全ての記憶を、失った、薪。

それは、薪を疎ましく思っていた多くの人間にとって、絶好の機会だった。
そして、薪自身も・・・それを、望んだ。

「・・あの薪さんが。第九から、この警察機構から離れるなんて・・有り得ないと思っていました。未だに信じられない・・。でも、それは全て・・オレのせいなんです」
「・・・・・・」

「薪さんのあの頭脳が、捜査に生かされないなんて、もったいないことだとも思います。でも・・薪さんは、もう既に、人の一生分に値する程の、重荷を背負い、人の為に、世の中の為に、生きてきたと思います」
青木は、そこで、一度息を付いた。

「そして・・最後はオレの為に、戦ってくれた。だから、今度はオレが」
青木は、頭を上げ、言う。

「これから先は、オレが、薪さんの背負う物を、全て共に背負って・・生きていくつもりです」

ふう・・と、岡部のため息が聞こえた。
「お前に・・それだけの覚悟があるなら、オレはもう、何も言うつもりは無い」

黙ってコーヒーを飲み干す二人の間を、風がすり抜けていく。

「色々と・・ご心配をお掛けして、すみませんでした。岡部さん、第九室長の仕事だって、忙しいのに」
「室長代理だ」
岡部は言った。

「もうすぐ、警視正に昇格になる。正式に室長になるのは、それからだ」
空になった缶を手に、岡部は、ふっ・・と微笑む。

「最初の第九分室には、今井さんが行かれるんですよね?」
「ああ。今は、その為の準備で、あっちとこっちを、行ったり来たりしてる」
「あれだけのことがあっても・・第九は、存続するんですね」

「そうだな」
岡部は、立ち上がる。

「こんな悲しい捜査方法・・無くなる方が望ましいと、オレは思う。だが世の中は、MRI捜査を必要としなくなるには、遥かに遠い。それが現実だ」
岡部は、数歩進み、目の前のゴミ箱に、手にした缶を、ぽんと投げ入れた。

青木も立ち上がり、岡部に並ぶ。
岡部は、空を見上げ、言った。

「薪さんを・・頼んだぞ」




「ただいま」
青木が玄関に足を踏み入れると、向こうの部屋から、母の顔が覗く。

「お帰り。・・舞、一行おじちゃんが帰ってきましたよ」
「んばっ」
姪の愛らしい声が聞こえ、青木は、急いで中へと入る。

「ばー、だー」
手を伸ばす姪を、青木は抱き上げる。

「ただいま、舞。うわっ・・ヨダレだらけだな」
「お腹すいたみたいでね。今ちょうど、ミルクをやろうと思って」
「ミルク? 用意しようか?」
「大丈夫よ。今・・」

母が指差したその先に・・・

「お帰り」
立っていた、美しい人。

その人が手にする物を見て、青木は、慌てて言った。
「薪さん、オレがやりますよ。待って下さい。今・・手を洗ってきますから」
「僕だって出来る。お前が出掛けてる間にも、何度も僕がミルクを作ったんだ」

微笑みながら、薪は言う。
「・・・鈴木」

青木も、ふっ・・と微笑み返す。
「じゃあ、お願いします」

薪の手で、ミルクの入った哺乳瓶が用意され、青木に渡される。
青木は床に腰を降ろし、赤ん坊にミルクを飲ませた。

「やっぱり・・ママが作ったミルクは美味しいですねえ」
青木の母親が、そう言いながら、赤ん坊を覗き込む。

・・・・・あの日。

薪が入院する病院に、面会に行った青木は、薪に「鈴木」と、呼び掛けられた。
「いいえ、青木です」
青木がそう言っても、薪は、首をかしげ。

「何を言ってる?・・鈴木」
薪はそう言って、微笑んだ。

薪は、記憶を失っていた。
鈴木を・・手にかけたことも。

あんな事があり、再び大きな衝撃を受けた薪は。
この世界に、もう戻れなかった。

鈴木を手にかけ、次々と部下が亡くなった、様々な困難に満ちた、この世界に。
今の第九には、戻れなかった。

薪は、青木を鈴木だと思い込むことで。
かろうじて、精神をそれ以上、壊さずに済んだのだ。

薪は、現状を受け入れることが出来ず、第九を去った。
そして、青木の・・薪の中では、鈴木のそばに居ることを、望んだ。

最初に、薪を家に連れ帰った時、青木は、母親に説明しようとした。
その時、母に抱かれていた舞が、薪に向かい、手を伸ばしたのだ。
思わずその手を取った薪を見て、母は言った。

「和歌子。今まで、どこに行っていたの?」
と・・・。

「これは、どういうことだ?」
薪に尋ねられ、青木は答える。

「あの・・この子はオレの姪なんですが。母親である姉が亡くなって・・その、母はそれを、未だ受け入れられなくて。つい、他人を姉だと思い込んでしまうんです。きっと、もう少しして落ち着けば、混乱も無くなるとは思うんですが・・」
「姉? 鈴木、お前に姉なんて居たか?」
「ええ・・その・・」

二人が話している間にも、母親は、薪に言う。
「子供を放っておいて。母親なんだから、しっかりなさい」
「あ・・母さん・・」
青木が戸惑っていると。

「すみませんでした」
薪が、言った。

「え?」
青木が、呆然として薪を見つめる中、薪は、もう一度言った。

「すみませんでした、お母さん。これからは、赤ん坊はちゃんと僕がみます」
「そうしてね。赤ん坊には、ママが居てくれないと」

「薪さん・・・」
つぶやく青木と薪の間で、舞は、「だっ、だっ」と言いながら、テーブルを叩いている。

「大切な人間を失ったその気持ちは・・その悲しみの大きさは、計り知れないものだ。僕がお前の姉に成り代わることで、お前の母親が生きていけるなら・・僕は構わない」

「・・・・・・」
青木は、言葉を失っていた。
薪が言っているのは、母親のこと、それだけだろうか。
それとも・・・

こうして。
青木は今、母親と、姪と・・・薪と共に、住んでいる。

母親は、薪を、姉の和歌子だと思い。
その薪は、青木を、鈴木だと思い込んでいる。
こんな奇妙な家は、他に無いだろう。
そう、青木は思う。

母親の混乱は、そのうち治まるかもしれない。
その時、薪の存在を、どう思うだろうか。

舞が成長して、物心付く頃になったら、どう、説明したらいいだろう。

何より・・・
薪は、この先、どうなるだろう。

自分のことを、鈴木だと思い込んで、生きていくのだろうか。
それとも、いつか、全てを思い出し、再び真実を見る日が、来るのだろうか。

いずれにせよ。
自分は、薪と、共に生きていく。

この先、母が老いて、旅立つことになっても。
舞が、一人立ちして、自分のもとを去って行っても。

薪だけは。
薪のその手だけは。

もう二度と、離さない。

自分のこの気持ちを、何と呼んだらいいのか、それは、分からない。

ただ、この先。
何があろうとも。
自分は、薪の全てを背負い、薪と共に、生きていく。

最後の。
最後の、その瞬間まで・・・・・

「・・おき」

声が聞こえ、青木は、顔を上げる。
「薪さん・・今、何て・・?」

「あ・・」
薪は、目を見開いて、青木を見つめていた。
そして、幾度か瞬きをすると。

「鈴木」
そう言って、笑みを見せた。

それは、かつて、第九では見せたことの無い。
心からの、穏やかな笑顔・・・・。

それを見て、青木は思う。

そう。
誰だっていい。
薪にとって、自分が、誰であろうが。

薪は言う。
「腹が減ったろう。何か作ろう」
「あ・・オレがやりますよ」
ミルクを飲み終えた舞を、母に預け、青木は、立ち上がる。

「今日は暑いな。サッパリした物がいいか?」
「かと言って、またソウメンだけの夕食は勘弁して下さい」

そんなことを言いながら、二人は、キッチンへ足を運ぶ。

青木の母は、舞を抱いて、窓際に座る。
残暑が残る夕暮れ、外では、生き残りのセミが、盛んに羽を震わせ鳴いている。

木々の向こうには、赤く染まった空が、広がっていた。




記憶 最後の光景 終




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コメント

■ 鍵拍手コメ下さったCさま

○5/2に鍵拍手コメント下さったCさま

早速のコメント、ありがとうございます。
いつも見ていただいて・・本当に感謝しておりますm(_ _)m

Cさんの反応が・・何だか凄くて、びっくりしてしまいました。
お心を乱してしまったようで、申し訳ございません~!(><;)
でも、こんな風に真剣に受け止めていただくことは、光栄でありがたく思っております。

前作の「記憶」もそうですが、これは、「こういうのも有り得るかな」と、「思い浮かんだ」だけであり、「こうなったらいい」と思っているわけではございません(^^;)

どこかで、こういったラストが希望という意見をご覧になったとのこと。
私は、そういった意見を拝見したことはございませんが、きっとその方は、「すずまきすと」でいらっしゃるのでしょう。

私は、「すずまき」の関係も、とても大切ですが、それ以上に、やはり「あおまきすと」なので、薪さんには、青木を「青木」として愛していってほしいと望んでおります。
なので、このラストは、決して理想ではないんですね。
ただ、青木に、その他の全てよりも薪さんを、薪さんの全てを背負い、薪さんと共に歩む道を選んでほしい・・という点では、やはり理想の部分も入っているのかもしれません。

実際の「秘密」は、きっと、Cさんが望まれるとおり、薪さんは薪さんのまま、毅然として、歩んでいかれるラストを、清水先生は見せて下さるのではないでしょうか。

「こちらの薪さんも」とは、あちらの薪さんが、目覚めて「青木」と呼んだシーンを、覚えていて下さるのですね。
過去のお話を読んで下さり、時にこうして思い返していただけること、書き手冥利に尽きます(つ;)
ありがとうございます。

■ 鍵拍手コメ下さったAさま

○5/3に鍵拍手コメント下さったAさま

コメントありがとうございます。

前作とあわせて読んで下さったとのこと、ありがとうございました。
前作を書いた時は、こういった続きは考えていなかったのですが・・6月号を読んだ時点で浮かんだ映像が、前作の光景と繋がっていきました。

青木、可哀相でしたか。
こんなお話が浮かんだのは、薪さんはもう休んでもいい・・そんな思いが、私の中にも確かにあったからだと思います。

青木は、もう既に、とうの昔から「一人の人間として」の薪さんを愛していると思います。
ただ、その感情に何て言葉を付けたらいいのか、それが分からないだけなのだと。

読んでいただき、また感想をいただいて、とても嬉しかったです。
ありがとうございました。

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