カウンター


プロフィール

かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

リンクは嬉しいので、ご自由にどうぞ♪


当ブログ拍手頁

最新の公開拍手コメのレスはこちら それ以前の公開拍手コメ&レスは、各記事の拍手ボタンを再度押していただければ読めます 鍵拍手コメにつきましては、拍手をいただいた記事下コメント欄にレスを書いております

所属してます♪


月別アーカイブ


最新記事


最新コメント


検索フォーム


 
※清水先生の作品とは、関係ございません。


オリジナルストーリー

「絆」




それを鈴木が知ったのは。
鈴木が、薪と知り合い、友人付き合いをするようになって、何年もの月日が流れてからのことだった。

何か事情があるのだろうと、薄々感じてはいた。

休暇の際に。
盆や正月といった、節目の度に。

帰省するかどうかといった話題を口にする、同僚達の中で。
薪だけは、そういったことを、一切口にしなかったからだ。
考えてみれば、薪の口から、親きょうだいの話が出たことすら、無かった。

「薪は? 実家に帰るのか?」
最初の頃こそ、鈴木は、気軽にそう、薪に尋ねることもあった。
「いや・・。こっちでやることもあるからな」
薪も、ごく自然に、そう答えていた。

だから鈴木も、深く追求しなかった。
やがて、薪に家族の話題を振ることは、控えるようになっていた。

それは、ある事件の捜査が終了した夜のこと。

薪と鈴木は、鈴木の部屋で飲んでいた。
最初は、捜査員全員で、居酒屋で飲んでいたのだが。
どこか・・心ここにあらずの薪の様子に気付いた鈴木は、薪に二人で飲み直そうと持ち掛けた。

「薪」
「ん・・」
薪のグラスが空になったのを見て、鈴木は、ビールの缶を差し出し、薪が持つグラスに、並々とビールを注いだ。

上着を脱いで、ネクタイを外し、ワイシャツのボタンを2つ開け、カーペットの上に直接座り込む薪は。
皆と居た時より、かなりくつろいでいるように見えた。

だが・・その表情は、未だ冴えない。

ビールを一口、二口、飲んだ後、グラスの中の泡を見つめている薪に、鈴木は、声を掛けた。
「薪。・・どうした?」
「うん・・・」

薪が口を開く瞬間を、鈴木は、辛抱強く待った。
やがて・・・

「自殺した・・あの少年」
薪は、話し始めた。

50代の夫婦と、17歳と11歳の息子、更に、居合わせた次男の友人までもが、惨殺されていた、その事件。
ごく普通の、中流家庭で起きたもので、当初は、強盗事件かと目されていた。
だが、その後の鑑識の調べや、検死の結果から、これは、17歳の長男が、両親と弟、その友人を殺し、自殺したことが判明した。

何故、そんなことが起きたのか。
その場に居た全員が既に絶命していたことから、真相究明の為に、この事件は、第九に回された。

そして・・一見穏やかな家庭の中で、長男が、段々と身の置き所を無くし、屈折していく過程が、浮き彫りにされた。

「彼は・・養子だった。子供に恵まれない二人が、不妊治療の末に、結局もう子供を儲けることは叶わないと諦めて、まだ赤ん坊だった彼を、養子にした」
「・・・・・・」
鈴木は、何も言わずに、耳を傾ける。

「脳で辿れたのは、彼の中学時代からだが、その時既に彼は、弟に、敵意を感じていた。養子を迎えた後に、思いがけず、血の繋がった子供を授かった両親は、さぞ、喜んだことだろう。そして彼は、6歳までは一身に受けていたであろう両親の愛情を、弟に取られたと感じたんだ」

「・・捜査資料では、家族の仲は、良かったとあったけどな」
そう言い、鈴木は、自分のグラスのビールを、ぐびりとあおった。

「確かに・・彼の脳を見ても、両親や弟と、表立って敵対することは無かった。むしろ、両親は、次男以上に、長男を気遣う場面さえあった。それを、長男も感じていた・・。でもだからこそ、自分は愛を得られていないと・・自分を本当に愛する者は居ないのだと、孤独を感じていたんだ」

薪が手にするビールは、もう、泡がすっかり消えている。
そして薪は、それすら見ていない。
その視線は・・どこか、遠くを見ていた。

薪は言った。
「あの少年は、僕だ」

鈴木は、顔を上げる。
どういうことかと、目を見開いて。

「僕も、養子だった。・・かつては」
「・・・・・・」
鈴木は、薪を見つめる。
薪は、片手にグラスを持ったまま、自分を抱え込むように、丸くなって座っている。

「彼らは、僕の本当の両親の、遠縁だった。そして、跡継ぎを必要としていた。僕は引き取られ、彼らの期待に応えようと・・勉強やスポーツに勤しんだ」
薪は、静かに話し続ける。

「彼らは、優しかった。特に父親は『自慢の息子』そう言っていた。だが・・ある日、彼らに、本当の息子が出来た」
薪は顔を上げて、じっと・・そこに何かを見ている。

「最初、僕は、弟が出来たことが、本当に嬉しかった。けれどいつしか・・いつも、僕の手を引いていた父が、弟の手を引くようになったことに気付き、何か、割り切れない思いを感じるようになった。隣りを見上げればそこに居た父が、いつも、弟の手を引き、あるいは、弟を肩車して・・僕は、父の背中ばかりを、見るようになった」

「僕は・・益々何事にも、全力で取り組むようになった。けれど、頑張れば頑張る程、僕が学業やスポーツで優秀な成績を取れば取る程・・彼らは、弟と比べ、ため息を付くようになった。血の繋がりの無い絆なんて、結局は、脆い物だ。僕はもう、彼らにとって『自慢の息子』ではなかったんだ・・」

薪の目は、一点を見つめている。
「そして僕は、養子縁組を、離縁した」

「・・・・・・」
鈴木の視線の先で、薪の表情には、感情が表れていなかった。

「・・彼らは、僕を引き止めなかった。以来、僕は一度も、彼らと連絡を取っていない。苗字も元に戻し、もう、彼らとは一切関係を絶った。あの少年も、家を出るべきだったんだ。そうすれば・・」
「薪」
鈴木が、そこで口を挟んだ。

「オレだって、妹が出来た時は、正直、妹に嫉妬したよ。まだオレは4つだったけど、それでも覚えてる。親に構ってほしくても、親の腕の中には、いつも妹が居て。弟や妹が出来れば、少なからず、そういったことはあるもんだろ。血の繋がりとか、そんなもの、関係ない」

薪が、顔を上げる。
「でも・・」
「薪」
鈴木は、じっと薪を見つめる。

「あの事件は、確かに不幸だった。少年、その家族、どちらにとってもだ。だが、同じ条件で、同じことが起きるわけじゃない。結局は、それぞれ、その人間自身の問題だ。そうだろう?」
「・・・・・・」
薪も、鈴木の瞳を、見つめる・・。

「お前は、弟が出来た時、嬉しかったと言ったよな。その気持ちは嘘じゃない。それに、離縁したと言うのも、自分が居ることで、家族のバランスが崩れると、お前が感じたからじゃないのか? 跡継ぎを弟に譲ることで、無用な争いを避けた。違うか? それはお前なりの、家族に対する・・愛情じゃないのか?」

「・・鈴木」
つぶやく薪の、瞳が揺れる。

鈴木は薪の傍に座り直すと、すっかり気の抜けたビールのグラスを、薪の手から掴み取り、テーブルに置いた。
そして、自分を抱え込むように座る薪の、その頭を、そっと・・抱き寄せた。

「・・お前は、確かに、家族と愛情を育んでいたんだ。人と人との関係に、血の繋がりなんて、問題じゃない」
「・・・・・・」
自分の腕の中で、ただ目を伏せる薪を、鈴木は、見下ろしている。

「なあ、薪」
薪の小さな頭に向かい、鈴木は、話し掛ける。

「お前とオレは・・元々他人だ。だが、だからと言って、その関係は脆い物だと、お前は、思うのか?」
ピクッ・・と、薪の身体が、鈴木の腕の中で、こわばったようだった。

「他人だから、お前とオレの絆は、大したものじゃないと、お前は言うのか? もし、薪の身に何かあったら、オレは、何よりもお前を守りたいと思う。お前だって、オレの身に何か危険が迫ったとしたら、全力でオレを守ろうとするだろう? 仕事仲間として・・友人として」

薪は、顔を上げた。
長い睫毛に縁取られた、大きな瞳が、鈴木を見つめ、こぼれ落ちそうに、揺らめいている。

「・・さあ、な」
言いながら、薪は、鈴木の腕から抜け出し、グラスを手に取った。
残ったビールを飲み干し、やや眉根を寄せたのは、気の抜けたビールが、不味かったからだろうか。

鈴木は立ち上がり、冷えたビールを、冷蔵庫に取りに行く。
そして再び、薪のグラスにビールを注ぐ。

薪はそれを飲みながら、言う。
「実際に、その時になってみなければ、僕がどうするかなんて、それは分からない」
「・・酷いな」
言いながら、鈴木は笑う。

「お前だって、この先、彼女が出来たり、結婚して子供が出来たりしたら、自分の妻や子供が、何より大事になる筈だ。僕のことなんて、後回しになる。お互い様だろう」
済ました顔で、薪はそう言う。

テーブルに向かって座り、グラスに口を付けるその顔には、事件のことで塞ぎ込んでいた陰は、もう無い。
その様子を見て、鈴木は、安心したように微笑むと、自分もグラスにビールを注ぎ、一気に飲み干した。

「・・・・・・」
そして鈴木は、改めて、薪の顔を見つめた。

自分と同じ年齢の、同じ男とは思えない、類まれなる美貌を湛えた、その顔。
その小さな頭には、第九を率いる、これまた誰も代わることの出来ない、優秀な頭脳が詰まっている。

けれど今は。
仕事を終えて、部屋で飲んでいる、ただの友人。

その友人の身に、何かあった時。
自分は、一体どうするだろう。

そう・・薪の言ったとおり。
その時になってみなければ、自分がどうするか、それは分からない。

だが・・・・・・・・・

鈴木は、口を開いて何か言おうとし。
けれど、結局は何も言わず。

ただ黙って、目の前に居る、友人の顔を、見つめていた。





絆 終





関連記事

コメント

■ 鍵拍手コメ下さったAさま

○9/22に鍵拍手コメント下さったAさま

コメントありがとうございます。

そうですね、どういった形であれ、保護者的な立場の人間は居た方が自然ですよね。
薪さんと鈴木さんについて・・このようなお言葉をいただいて、書いて良かったと思うことが出来ました(;;)
千堂に関わるコメントをいただきましたが、実はまさしく、原作のこの部分から、今回のお話が浮かびました。
薪さんは、親子の愛情を信じていた・・おっしゃるとおりだと思います。
この辺りに関しては、後で改めて、後書きに記すつもりです。
ありがとうございました。

コメントの投稿



管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

■この記事のトラックバックURL

⇒ http://kanon23.blog36.fc2.com/tb.php/769-db8d2851

この記事に対してトラックバックを送信する(FC2ブログユーザー)

■この記事へのトラックバック

 | BLOG TOP |