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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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Scene21:震え


薪は、第九へ戻るところだった。
歩きながら、内心は、怒りと衝撃に打ちのめされていた。

だが、フォスターに心を許してしまったのは、他ならぬ自分だ・・。
そのことが、薪の衝撃を更に深めた。

執務室を出る前の、フォスターとの会話が、浮かぶ。

「君も、今までの体制でやっていくことに、不満がある筈だ。ここで、1人で全てを抱えていて、何になる? 何も変わらないまま、続けていくのか? 向こうに行けば、私と共に、MRI捜査の新しい道が開ける」

じっと黙ったままの薪に、フォスターは続けた。
「10日で向こうに発つ。それまでに準備しろ」
「・・勝手なことを言うな! そんなこと出来るわけがないだろう!」

「それ以上ここに居たら、君のことだ。長く居る程、責任を感じて、第九から離れられなくなるだろう。今抱えてる事件を片付けるのに、10日もあれば充分な筈だ。引継ぎ事項は、やり残したら、向こうに着いてから、通信を使っても出来る。そういったことに割く時間は、充分に取れるよう配慮するつもりだ」

「僕は行かない。日本を、第九を離れたりはしない」

「・・本当は、今すぐにでも君を連れて帰りたい。だが・・」
フォスターは薪から目をそらし、言った。
「10日だ。それが私の・・・」

「帰るなら、一人でアメリカへ帰るんだな」
薪はそう言って、フォスターの元を出てきた。

自分が第九を離れる・・考えたことも無かった。
「もちろん・・これからも無い」そう思うのに、それで済む筈なのに、何故こんなにも動揺するのか・・。

「薪さん?」
青木に声をかけられて、薪はハッとした。

いつの間にか、第九の前まで来ていた。
「総監のところに行ってらしたんですよね。どうしたんですか? 何かあったんですか?」

心配そうな顔をして、青木は片手で薪の肩に触れた。
その瞬間、薪はビクッと震えた。
「薪さん・・?」

「・・何でもない」
そう言うと、薪は青木と目を合わせないまま、第九に入っていった。

数日が過ぎた。

その間に、米国MRI研究所の不正と、所長の辞任が正式に発表された。
「フォスター捜査官が、次の所長になるらしいですよね」
「今井、それ、どこから聞いた?」岡部が驚いて聞いた。

「緊急会議がありましたよね。薪さんも出席した・・あれで話が出たそうです。別の部署の知り合いから聞いたんですが」
「そうか」

その会議の後に、薪とフォスター、それに、田城の3人だけが、総監に呼ばれた。
薪の、米国MRI研究所行きの件が、話された。

「私は行きません」薪は、きっぱりと言った。

「急にそんなことを言われても、第九室長が、薪君の代わりが、すぐに見つかるわけもないですし・・」
田城は、うろたえていた。

「・・確かに。薪君のような優秀な人間を手放すのは、私としても忍びがたい」
そう言って、総監は頭を抱えた。

総監も、ジレンマに陥っていた。
どういう力が働いてるのかは知らないが、薪をアメリカにという要請は、その上からの圧力は、強力な物だった。

しかし、口にした理由以上に、総監が自ら薪に口止めをした、その数々の秘密を抱えたまま、薪が手元を離れるということが、問題だった。
それは、総監自身の進退にも関わることだった。

出来る事なら、この件は断りたいが、総監の立場から断るには、あまりにも上の力が大き過ぎた。
薪がどうしても受け入れず、その独善さから要請をはね付けたと、そういう方向に話が行けばいいのだが・・。

「・・・少し、返事を待ってもらう。その間に、少し考えてみたらどうだ、薪警視正」
「いくら待っても、返答は同じです」
薪は言い切り、田城はため息を付いた。

総監室から出ると、田城は言った。
「この件は、確定するまでは皆には言わない方がいいだろう。下手に動揺を与えることになりかねない」
「言う必要はありません。私が第九を離れることは、ありませんから」
そう、薪は言った。

薪は、いつものように仕事をこなしていた。
何も変わらず、いつものように・・。

時々、フォスターが第九を訪れた。
その度、薪は、フォスターをまるで、居ない人間のように扱った。

薪が、仕事に夢中になると、他が全く見えなくなるのはいつものことだ。
第九メンバーは、あまり気には留めなかった。

フォスターも、時々話しかけてくる第九メンバーと、軽い会話を交わすだけで、後は、薪に声をかけるでもなく、じっと薪の姿を見ては、出て行った。

青木は、フォスターが用も無くやって来ることを、そして、その視線の先が、いつも薪を追っていることを、不思議に思っていた。

ある夜、残業をしていたメンバーが、薪の姿を探した。
「これ、今日中に目を通したいって言ってたのにな。せっかく仕上げたのに。どこに行ったんだろう」
曽我が言うのを聞いて、青木が立ち上がった。
「呼んできますよ」

薪が1人で居る場所は、だいたい決まっている。
いくつか建物内を探したが、姿は見当たらなかった。

「とすると・・」
青木は、上着をはおって、外に出た。
もう11月も終わろうとするこの季節。
夜は、冷え込んでいた。

第九の裏の庭で、薪は、木の陰に、座り込んでいた。
膝を抱え、頭を埋めるその姿は、まるで、少年のように見えた。

「風邪を引きますよ」
薪が上着も着ていないことに驚き、青木は自分の上着を、薪の背中にはおらせた。

薪は、青木を見上げる。
「? 何ですか?」言いながら、青木も薪の隣りに座った。

第九の建物から漏れる薄明かりだけが、二人を照らす。

「こんなところで、どうしたんですか?」青木が、穏やかな目で、薪を見る。
「・・・・・」

薪は、青木から、目をそらした。
やはり、何も言えない・・。

言葉が、たくさんの言葉が、胸からあふれ出そうなのに、実際には、何一つ・・。
自分を覗き込む、青木の全く邪心の無い目が、今の薪には、痛かった。

何も言わず、苦しげな顔をして、目を伏せる薪を見て、青木は思った。
以前にも、こんな顔を、どこかで・・。

「そうだ、貝沼のことを自分に告白した時、薪さんは、こんな顔をしていた・・」
青木は、3年近く前の出来事が、突然脳裏によみがえった。

「あの時、薪さんは、自分で抱えていたものを、オレに話した。・・話してくれたんだ・・」
特別なこととは思わなかった。一度も。
第九に配属になったばかりで、自分も夢中だった。

「今も、薪さんは何かを抱えている・・。でも、今のオレには・・」
これ以上尋ねても、もう薪が何も言わないことは、分かっていた。

「薪さん、中に入りましょう。みんな待ってますよ」
薪を立たせようと、その肩を抱くように触れたその時、薪はビクッと、肩を震わせた。

青木は、数日前にも、薪が同じ反応をしたことを、思い出した。
「あの時も、薪さんは、様子が変だった・・」

青木から離れ、先を歩く薪・・青木の上着をはおったまま。
青木は薪の背中を見つめ、急に寒さを覚え、あわてて中に入った。



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