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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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Scene3:光



時刻は、夜の11時。

鈴木は、いつものように、いつもの番号に、電話を掛けた。
・・コールが長い。

諦めかけた頃、コールが鳴り止んだ。
「鈴木」
滑らかなその声に、鈴木は、ホッと息を付く。
「薪・・」

「取るのに時間が掛かってすまない。今、外に出たところだ」
「今夜は、まだ仕事か?」
「ああ。署の前に居る」

警大での研修期間を経て、同期は皆、現場での経験を積む為に、各都道府県へと、散った。
薪と鈴木も、同じ署に勤務というわけにもいかず、それぞれ、離れて暮らすことになった。

共に過ごした数ヶ月のうちに、薪は、様々なことを学び、人間との交流も、薪なりに無難にこなすようになった。
だが鈴木は、薪と離れることが、どこか不安で仕方が無かった。
警察官としての素養は、遥かに薪の方が優秀で、自分が心配することなど必要ないと、分かってはいたが。

このプロジェクトが始まる際、鈴木は、責任者の男から、新しい携帯電話を与えられた。
それは一見普通のケータイのようだったが、暗証番号を入力することで、薪が今どこに居るか、確認出来るようになっていた。
薪の身体には、特殊な発信機が埋め込まれており、このプロジェクトに関わる人間だけが、その位置を把握出来るようになっているとのことだった。

今夜も、薪がまだ、署に居るということは分かっていた。
だがそれでも、鈴木は、離れる際に、薪と交わした約束・・毎晩決まった時刻に電話を掛けることを、止めたことは無かった。

勤務中で、薪が出ないこともあった。
自分自身、忙しく、話が出来ないこともあった。
それでも、合間を見つけて、電話の発信ボタンを押し、薪のケータイに番号を残す。
それは、いつも薪の傍に居るという、鈴木なりの、メッセージのつもりだった。

「薪。調子はどうだ?」
「大丈夫だ。お前は?」
「オレも、元気だ」

たとえ電話を取っても、そんな二言、三言で、会話が終わることも多い。
だが、その短い会話が、鈴木の胸を、安堵させるのだった。

この夜は、もう少し、会話が続いた。
「・・・・・・」
薪が無言になり、かと言って、電話を打ち切る様子も無いことに、鈴木は、察するところがあった。

「薪。どうした?・・何か、あったか」
「!・・・・」
何となく、何となくだが、薪が、鈴木の言葉に反応し、息を呑む様子が伝わってくる。

「・・大したことじゃない」
薪は、そう言った。

「時々、思うんだ。何故僕は、生みの親に、こんな外見を与えられたんだろうと。人間は、外見を見て、中身を押し測ろうとする。もっと言えば、外見しか見ずに、全てを知ったかのようなことを言う。生まれた時からこの顔を付けているのだから、他人が何を言おうと、僕に外見に関しての責任は無い。そうじゃないか?」

「・・・・・・」
鈴木は、しばし無言になった。
具体的に、誰に何を言われたのかは聞かなくても、状況は想像出来た。

薪の突出した容姿は、突出した優秀さと同様に、他人の目を引くものだ。
警大での研修中は、表立って言い立てる物こそ少なかったが、それでも密かに、薪はどこでも、噂の種になっていた。

所轄に赴き、面と向かって、薪の容姿を揶揄する者と出会っても、不思議ではない。
その優秀さ以前に、容姿で薪の人となりまで判断する発言をする者も居れば、優秀さを知るゆえに、あえて容姿を引き合いに出す人間が居ることも、想像に難くない。

「なあ・・薪」
鈴木は、言った。

「誰が何と言おうと、お前は、お前だ。そうだろ?」
「僕は、僕・・」
「そうだ。薪剛という、この世で、たった一つの存在だ。誰が何を言っても、それは、変わることは無い」
「・・・・・・」

電話を手にしながら、鈴木は、窓の外を見ていた。
そこには、星が広がっていた。
その時、薪も空を見ていた。

二人とも、互いに同じ星を見ていた。
けれど、共にそんなことは、知るよしも、無かった。





2056年。
科学警察研究所に、MRIスキャナーを使った捜査を行なう、法医第九研究室が設立された。

先にアメリカで導入されたMRI捜査は、故人のプライバシーや倫理上の問題が取沙汰されていたが。
その最先端かつ問題の多い捜査機関を、若干30歳の警視正が率いることが発表され、更に第九は注目を集めることとなった。

「お疲れ」
共に、第九発足記念の式典に出た薪と、執務室で二人だけになると、鈴木はそう声を掛け、ふーっ・・と息を吐いた。

薪はというと、まずは、手に持った小型のセンサーを作動させている。
部屋に隠しカメラやマイクが無いか、異常を探知する物だ。

薪が、ロボットであることは極秘だ。
薪も鈴木も、警大の寮で過ごしている頃から、部屋に他人が入った後は、まずこのチェックをすることが、習慣になっていた。

薪のその姿を見ながら、鈴木は上着を脱いで、傍らの椅子の背に掛けると、給湯スペースに足を運ぶ。
薪は、室内をゆっくりと歩き、そこにあるシステムを一つ一つ眺めていた。

鈴木が、カップを二つ手にして、部屋の隅のテーブルへと進む。
「コーヒー、入ったぞ」
「うん・・」
言いながら、薪が、システムを指先で、そっと撫でるような仕草をしていることに、鈴木は気が付いた。

「・・どうした?」
鈴木の問いに、薪は手を止める。
「この捜査システム・・」

そして、目の前の機械に、じっと見入りながら、言う。
「僕と同じ、機械で出来ているんだよな・・」
「・・・・・・」
鈴木は、薪の指先を見つめる。
薪の仕草が、愛おしそうに見えたのは、そのせいか・・。

「見かけは、大分違うけどな」
鈴木は、肩をすくめて言った。

薪は振り返り、それから、クスッと笑うと、鈴木のもとに近付いた。
二人は、テーブルの角を挟んで、斜めの位置に座ると、互いにカップを手にする。

「それに、お前は風呂に入っても平気だけど、システムは、水に弱い。人間に操作されなければ、自発的に動くことも無い。全然違うさ。ただ・・とんでもなく優秀だってところだけは、共通してるけどな」
そう言って、鈴木はコーヒーを飲んだ。
薪も、そんな鈴木を一度見上げてから、目を伏せ、カップに口を付ける。

鈴木は、カップを両手に持ったまま、その先に見える、薪の姿を眺めた。

出会ってから今日まで、薪は、ちっとも変わらない。
ロボットなのだから、当然と言えば、当然なのだが。

その白い肌も、柔らかな髪も、長い睫毛も、艶やかな唇も。
この8年の間、その容姿は、一片たりとも、衰えることは無かった。

その間、薪と鈴木は、同じ部署に配属されたり、また離れたりしながら、警察組織の人間として、着実にキャリアを築いていった。
類まれなる頭脳と容姿、それによって、薪が不当な扱いを受ける姿を、鈴木は見てきた。
きっと、鈴木の目の届かないところでも、様々な場面で、そういうことがあっただろう。

だが、薪の純粋な精神は、それによって、ゆがめられることは無かった。
それどころか、そういった困難の数々を、自らの糧にして、成長してきた。
薪のそんな姿を見て、鈴木も、自分も頑張らねばと、大いに奮起し、薪に追い付く勢いで、昇進を重ねてきたのだった。

「・・?」
自分を見つめる視線に気付き、薪は、目を上げる。

薪の外見で、何より変わらないのは、その瞳だと、鈴木は思う。
吸い込まれそうに大きな、澄んだ瞳が、じっと鈴木を、見つめている・・・

その瞳に向かい、鈴木は微笑んで、言う。
「遂に、『第九』での捜査が始まるんだ」

「設立計画は、実は既に10年以上も前にあった。だが、莫大な費用と、システム構築の煩雑さ、世論の反発等を考慮しても、なお設立を推し進めるべきか、MRI捜査の有用性が争点となり、一時は設立が撤回されるところだった。・・だが、最後は、この一年のアメリカの実績が、追い風になったと言えるだろう」
淡々と、薪はそう言った。

そんな薪を見て、鈴木は思う。
「第九」は、その内容の特殊性ゆえ、しばらく人事異動は無いと通達を受けていた。
これまでのように、数ヶ月で配置換えになったりすることは無い。
つまり、これからしばらくは、薪と同じ場所で、共に仕事が出来るのだ。

この最先端の部署で、薪と共に。
それを思うと、鈴木は、浮き立つ心を、抑えられなかった。

「・・すごいよな」
鈴木は、言った。

「『第九』だぜ!! 最先端の捜査方法だぜ」

明るい声でそう叫ぶ鈴木を、薪は見やる。
「あまり、期待はしない方がいいぞ。独自の捜査権があるとはいえ、『第九』は、警察機構図の一付属機関に過ぎない」

自分を見つめる鈴木の顔を見返しながら、薪は続ける。

「僕達捜査員が、死者の『脳』の記憶映像を見て捜査を進めるが、この『死者の脳の映像』がそのまま証拠として使われるわけではない。たとえ、犯行現場の画が再現されたとしても、その画を元に、その人物に自供を求め、自供を得ない限り、あるいはその画を元に、実際の物証を探し出さない限り、有罪、起訴には至らない。いくら僕達が画を集めたところで、捜査の主導権は、他部署が握ることになるだろう」

「・・まあ、な」
鈴木は、少し声のトーンを落として、言った。

「その点は、上にも釘を刺されてるしな。だけどさ、薪」
鈴木は、カップをテーブルに置くと、立ち上がり、システムの傍へと進む。
そして、先程、薪の指先が辿っていたその機械に、同じ場所に、鈴木も触れ、言った。

「・・この捜査方法が取り入れられるまでは、死体を監察医が検死するしか術が無かった。しかし、検死だけでは、十分には解明されなかったんだ、そうだろ?」
鈴木の声は、再び、明るさを取り戻している。

「けれど、これからは」
そこで鈴木は、一度、言葉を途切らせた。
そして、部屋全体をぐるりと見渡し、言った。

「何故死んだ、何故こんな風に殺されなければならなかったのか、この死体は、死ぬ前に、何を考え、何を見ていたのか。被害者が死んでも、『おしまい』じゃない。今まで『ヤブの中』だった犯行動機や犯人が、これからは分かる。何でもわかる。・・これからは何でもわかるんだよ!! 薪」
鈴木の顔は、生き生きと、輝いている。

「オレ達がその使命を追ってるんだよ、薪!! やりがいのある仕事だ。すごくやりがいのある仕事だよ、薪!!」

鈴木が振り返ると、いつの間にか、薪も椅子から立ち上がり、鈴木を、見つめていた。
二人の目が合った。

鈴木は、薪に向かい、ニッコリと、笑った。
薪は・・まるで呆けたように、鈴木の顔を見つめていたが。

やがて、鈴木につられるように、薪も、微笑んだ。

その瞬間。
外から遮断されたこの空間で。

鈴木の目には、まるで、そこに柔らかな日の光が差したかのように、映ったのだった。





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