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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
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Scene6:運命



その日、第九は休日の筈だった。
なのに、その庁舎に、おそらくは、第九の執務室周辺に居るであろう、人物がいる。

「やはり、ここか」
鈴木は、ドアの前で、ため息を付いた。
そこは、通称「特捜室」。

ドアにはロックが掛かっていて、外から開くことは出来ない。
鈴木は、執務室で、待つことにした。

第九が発足して、1年が過ぎた頃から。
薪は時折、こうして一人、特捜室にこもるようになった。

特捜室とは、元々、刑が執行された死刑囚の脳を見るといった特別捜査の為に、捜査官が一人で脳を見る為に、設けられた部屋だ。
だが薪は、そういった捜査の為ではなく、何かもっと別の目的の為に、ここで、誰かの脳を見ているのだ。
一体誰の指示で、誰の脳を見ているのか、部下達にも、鈴木にも、知らせずに・・。

朝、目覚めると、薪が今どこに居るのか、鈴木はケータイを使い、確認するのが日課になっていた。
休日のこの日、いつもより遅く目覚めた鈴木は、既に、薪がこの庁舎に居ることを知り、自分もやって来たのだ。
途中で、薪のケータイに電話も掛けてみたが、電源が切られていて、通じなかった。

鈴木は、じっと、そこで待った。
時計を見る。
雪子とのランチの約束には、間に合いそうも無い。
急な仕事が入った、すまない・・・と、メールを打った。

昼を過ぎても、薪は出てこない。
また、食事抜きで、没頭しているのか。
鈴木は、自分だけが、食事を取りにその場を離れる気には、なれなかった。

いつ、薪がここから出て来るか分からない。
薪が出て行ってしまったら、もう捕まえられない・・そんな気がした。
鈴木は、待ち続けた。

そして、夕刻・・・・

ドアが開き、薪が、一歩足を踏み出した、その瞬間。
「っ!!」
腕を捕まれ、否応無く引き出されて、薪は、驚きに言葉を失った。

「薪」
「鈴木・・・・」
こぼれ落ちそうな瞳が、鈴木の姿を、捉えた。

いつも、穏やかで、微笑みを湛えた鈴木が。
まるで別人のように、鋭い瞳で、薪を見つめていた。

「薪。手にしているそのディスクは、何だ?」
「・・・・・・」

薪は、自分の手にしたディスクの入ったケースを見、次いで、その腕をしっかりと掴んでいる、鈴木の手を見た。
節の張った、力強い、大きな手。
いつもは、優しく肩を叩いてくるその手が、今は、痛い程に強く、薪を捉えている。

「・・離せ」
「・・・・・・」
薪の一言に、鈴木は、無言で手を離した。

薪は、鈴木から目をそらす。
心臓が、大きく波打っていた。

「・・いつから、ここに居た?」
「そんなことは、どうでもいい」
薪の問いに、鈴木は静かに言い放った。

「それよりも、そのディスク。一体、何が入っている? お前は一体、何を見た? 2ヶ月前にも、同じようなことがあった。お前は総監に呼び出され、一人、特捜室に入った。けれど、オレ達には何も言わない。お前が脳を見たという、記録すら残らない。お前は何をしている? 何故オレに一言も・・」

「そんなことは、どうでもいいだろう!」
薪は、そらしていた視線を戻し、鈴木をぐっと見上げた。
澄んだ瞳に、天井からのライトの光が、はね返った。

「・・そういうわけにも行かないか? お前の任務は、僕を監視することだからな」
「薪・・」
思いがけない薪の言葉に、鈴木は、じっと薪を見つめる。

「お前は、自分のことは、どうでもいいと言う。ああ、そうだ。お前は、ただの人間だからな。好きな場所に行き、好きな人と会い、好きなことをして、自由に行動すればいい。体内に発信機が埋め込まれ、常に監視されている僕とは、違う」
「・・・・・・」
鈴木は、薪の前に立ち、ただ、薪の姿を見ていた。

「お前の役割が、僕の監視役だとしたら、僕の役割は、何だと思う?」
薪は、まるで挑発するかのような口調で、尋ねてみせる。

「より、人間に近い、人間に代わるロボットの開発は、継続して研究されてきた。そんな中、まだ極秘のうちに、第九設立の計画が立ち上がった。そして、その室長を担うという目標に的を絞り、僕というロボットが生み出された」
薪は、話し続ける。

「第九が発足したその時に、突然僕が現れ、室長に就任するには、無理がある。それまでに、周囲に納得させる為に、警察官としての、相応のキャリアを築かねばならない。また、いくらロボットとして精巧に作られていたとしても、実際に人間の間で生活して、覚えていかねばならないことも、多々ある。こうして僕は、8年という準備期間の末に、第九の室長に就任した」

薪の言葉に、鈴木の脳裏にも、薪と出会ってからこれまでの出来事が、よみがえり、流れていく。

「・・一部の特殊な任務に就く人間は、『家族』を持つことを望まれない。任務の秘密保持の為、また、任務の危険性の高さゆえに。だが、天涯孤独な上に、その任務に就くにふさわしい資質を持った人間など、そうそう居るものではない。また、人間が秘密を本当に守りきれるのか、その保証も無い。そして浮上したのが、開発中のロボットを、その任務に当てることだった」

「ロボットなら、最初から、その任務に就くにふさわしい能力をプログラミング出来る。血の繋がった親きょうだいも居ない。子供が出来ることも無い。アルコールも麻薬も自白剤も効かず、必要とあらば、最後まで秘密を守り通すことも出来る。任務に当たるには、理想的な存在だ。だが本当に、ロボットに人間の代わりが務まるのか、僕はその、最初の実験材料となったんだ」

「実験て・・薪、お前・・」
鈴木が、口を開きかけたが、薪は、構わず話を続けた。

「ずっと以前から、人間は、人間が行なうには危険な作業の代役を、ロボットに求めた。高温・高圧の環境で、データ収集をするロボット、遮断された事故現場で、救助活動に当たるロボット、そういった物と、僕は同じだ。そして・・ロボットのもう一つの大きな利点は、たとえ破損しても、作り直せば済むということだ。もし、僕が抱える秘密を永久に消滅させたければ、秘密ごと僕を破壊して、作り直せばいい」

「薪・・・」
「お前は、僕を、たった一つの存在だと言った。確かに今は、この世に一体しか無い、貴重なロボットだ。だが、僕が第九の室長を勤め上げ、このプロジェクトが成功に至ったとなれば、今後、同様のロボットが次々と開発されるだろう。今は多額の費用がかかるが、技術が進めば、いずれは、安価に大量生産されるようになるかもしれない」

「日本中・・いや、世界中で、僕と同様のロボットが動き回る。危険な任務、面倒な仕事は、全てロボットが請け負う。たとえ一体が壊れたところで、代わりの一体を取り寄せればいい。ロボットの運命とは、そんなものだ。人間とは違う。たかがロボットだ、いくらでも代わりは居る・・・!」

薪は、驚きに目を見開いた。

鈴木が。
目の前に立っていた鈴木が。
突然、薪を腕の中に、抱き込んだのだ。

「そんなことを・・言うな・・!」
鈴木は、両腕で薪の肩を抱き寄せ、自分の胸に押し付けた。

「鈴・・」
「言うな、薪。お前は・・・」
鈴木の声が、かすれた。

「・・・・・・」
薪は、鈴木の体温を感じていた。
それはとても、温かかった。

何のことは無い。
鈴木の皮膚表面の熱を、自分の皮膚表面のセンサーが、感知しているに過ぎない。
ただ、それだけのことなのに・・・

何故だろう。
その温かさが、鈴木の腕の感触が、心臓の音が、鈴木の匂いが。
今、自分が居るその場所の全てが。
・・心地良かった。

心地良くて、それでいて・・・

「苦しい・・」
薪がつぶやくと、鈴木は、
「あ、ごめん」
そう言って、腕を緩めた。
自分が強く引き寄せたせいで、薪の身体が押し付けられ、苦しいのかと思ったのだ。

だが、薪は、離れなかった。
そして言った。
「そうじゃない」
「え?」

そうじゃなくて・・・

薪は、鈴木の胸に自分の顔を押し当てたまま、そっと・・腕を、鈴木の背に回した。
「・・・・・・」
そんな薪の姿に、鈴木も再び、そっと・・ごくそっと、両腕で、薪の華奢な肩を引き寄せた。

そして、思った。
鈴木は、この時、改めて決意したのだ。
薪を、この手で守っていくと。

薪が、第九の室長を務めるのは、全てを一人で背負わせ、万が一の時には、薪一人を破壊してしまえばいいという、そんな物ではない筈だ。

もし、また薪が、特捜室にこもるような事態が起きたら、その時は、それがどんな状況であれ、薪が見た物を、自分も見る。
薪一人に、全てを背負わせは、しない・・・・・・。

薪は、目を伏せ。
そこにある全てを、感じていた。
鈴木が与えてくれる、五感に伝わる、全てを・・・。

この翌日。
亡くなった、とある大臣の脳が、損傷が激しくMRIに掛けられなかったとし、自殺と断定されたニュースが、報道された。

それから程なくして、北海道の根室沖のある島が、大地震に見舞われる。
そして、後に「カニバリズム事件」と称される事件が、発生する。





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