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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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Scene7:新人



「薪。今時間取れるか? お前に見てもらいたいんだけど」

捜査中のMRI画像で気になる点があるからと、薪は鈴木に声を掛けられ、二人で、モニターに向かっていた。
「休憩時間なのに・・悪いな」
「いや。確認するなら、早い方がいい」

薪はモニター前の椅子に座り。
鈴木はその左側に立ち、システムを操作していた。

部下達は皆、外に出ている。
二人だけの執務室に、動作中のシステムが、うなる音だけが微かに響く。

・・いや。
薪の、人間より発達した耳には、システムの音と・・鈴木の心臓の音が、聞こえていた。

あの日から。
薪は、以前よりも、鈴木が発する物・・心臓の音や、息遣い、立ち昇る匂いなどが、より強く意識されるように、なっていた。
直接触れることは無くとも、鈴木が傍らに居ると、あの時感じた体温までが、伝わってくるようにさえ、感じた。

今、鈴木は、薪のすぐ傍らで、画面を指差し、問題点を説明している。
薪は、画面を見ていた視線を、わずかにずらし、左上を見上げた。
画面を見つめる、鈴木の真剣な表情が、見える。

薪の肩に、触れそうで触れない位置にある、鈴木の腕。
画面を指す、鈴木の手。

あの日、自分は。
この腕の、この手の中に、包まれていた。

自分をしっかりと、支えた胸。
全てを受け入れるような、太い腕。
そして・・優しい手。

鈴木の身体のパーツの一つ一つが、鈴木という人間を、そのまま表しているようだった。

その中に・・・再び包まれたい。
鈴木を近くに感じると、ふと、そう思うことがある。

そんなことを、何故思うのか。
薪には分からない。
それが、ロボットが生きていく上で、必要であるとも思えない。

ただ・・鈴木の腕が、その温もりが欲しい。
そんな思いが、薪の胸をよぎる。

けれど薪は。
その思いを、決して、口に出さなかった。

何故なら、鈴木は。
鈴木のあの胸は、あの腕は、あの大きな手の平は。
自分を包み込む為にあるのではないと、分かっていたからだ。

そう。
先程まで、鈴木がカフェで会っていた人物。
鈴木の手は、彼女の・・・・・・

「・・で、どう思う?」
鈴木に問われ、薪は、目を見張る。
「・・・・・・」
「聞いてなかったのか?」

鈴木は、薪の顔を覗き込む。
「珍しいな。どこか、調子が悪いのか?」
ごく近くにある鈴木の顔から視線をそらし、薪は、画面を見つめ直す。
「いや。大丈夫だ」

ふう・・と小さく息を吐き、鈴木は身体を起こすと、言う。
「本当か?」
「ああ。定期点検にも、先週行ったばかりだ。何も問題ない」

「・・・・・・」
平静な顔で画面を見つめる薪の横顔を見て、鈴木は押し黙った。
実は鈴木は、先日、薪が一人で見た脳のデータを持ち出し、自分も見ていた。

捜査の記録は無い。
薪がそれを見たという証拠は、どこにも残されていない。
けれど鈴木は、薪が、間違いなく脳データを検証させられたと確信した。

その後の薪は、明らかに様子が普通ではなかった。

だが、決してその事実を口にしない薪を見て、鈴木はその時、何も言わなかった。
追及することは、かえって、薪を苦しめることになる。
その代わり、鈴木は、自分もその脳データを、見たのだ。

それは、大変なトップ・シークレットの画だった。
しばらくの間、薪が幾度も上の人間に呼び出され、疲弊した様子を見せていたのも、無理からぬことだった。
薪が最近、時折、どこか上の空であるのも、きっと、そういったことが原因なのだろう。

だが、そのせいなのかと薪に問うことは、自分もその画を見たと、告白してしまうようなものだ。
薪のことだ。
室長の薪の許可も得ず、勝手にデータを持ち出して見たことよりも。
見てしまったことから、鈴木が薪と同様の危険に晒される可能性が生まれたことを、心配するだろう。

薪にはもう、これ以上、負担をかけるわけにはいかない。
だから・・・何も言うまい。

鈴木は内心でつぶやき。
改めて、目の前にある捜査に、話を戻したのだった。




2058年、2月。

滝沢幹生という男が、新たに第九に配属された。
相応のキャリアを積んだエリートで、年は、薪や鈴木よりも、一つ上だ。

システムは、すぐに完璧に使いこなし。
捜査中の勘、洞察力と言った点も、問題ない。

ただ一つ。
問題があるとすれば。
滝沢が、着任早々、鈴木にある提案をしたことが上げられる。

最初、滝沢は、第九で誰よりも年齢が上ながら、態度も礼儀正しく、申し分なかった。
だが、薪と鈴木の会話を耳にすると、滝沢は不審げな様子を見せた。

「副室長は、室長と、随分気さくな態度で接していらっしゃるんですね」
「あ・・ああ。元々、同期だからな。年齢も一緒だし」
鈴木は、滝沢に問われ、笑顔で答えた。
薪もそこに立ち、二人の話を聞いている。

「・・そうですか。日本の警察機構というものは、たとえ年齢が上であっても、部下は部下であり、上司に絶対服従だと思っていましたが」
薪と鈴木は、顔を見合わせる。
滝沢の言うことは、もっともだったが。

「まあ、原則はそうだけどな。そこまで、薪もオレも、気にする方じゃないし・・」
鈴木がそう言うと、滝沢は言った。

「・・そうですか。では、私も副室長より年上ですし、同等な口調で話をさせていただいても、よろしいですか?」
「うん? ・・ああ、別に構わないさ」
軽い気持ちで、鈴木が言うと、更に滝沢は、口の端に笑みを浮かべて、言った。

「それに、室長も」
「え?」
聞き返したのは、鈴木だった。
だが滝沢は、薪の方を見ていた。

「『薪』と呼んでも?」
「それは・・・」
鈴木が、言いよどむ。

「・・・・・・」
薪は、束の間、黙って滝沢を見上げていたが。

「構わない」
そう、答えた。





「最初から、どこか慇懃無礼だと感じた。一見、へりくだった態度の裏で、その実、他の捜査員達を見下していると」

薪は、言った。
「そこに来て、あの態度だ」

「・・まあ、あれだけ優秀なら、多少、人を見下していても不思議じゃない。エリートには、よくあることだ」
鈴木は、端末と、手元の資料を付き合わせつつ、データを打ち込みながら、言った。

室長室で、薪と鈴木は、一つのデスクに二台の端末を置き、互いにデータの整理をしながら、話していた。

「それだけじゃない」
薪が言い、鈴木は、顔を上げる。

「あいつは・・滝沢は、初めてMRI画像を見た時から、どんなに残酷な画を見ても、全く動じなかった。これまで第九に配属された者は、例外なく、その画に慣れるまでに時間を要した。なのに・・・」
「余程、精神力の強い人間なのかもな」
鈴木は、言った。

「そういった点も含めて、上野や豊村は、滝沢を賞賛してる。滝沢の方が新人なのに、上野達の方が、既に頼りにしている部分もある。いい傾向じゃないか。部下が優秀で、互いに打ち解けて捜査に当たるのは」
「・・・・・・」

鈴木は穏やかに話していたが、薪は、同意出来なかった。
「いい傾向、そうだろうか。滝沢は・・何を考えているか分からない」

じっと端末の画面を見つめながら、そう言う薪を見て、鈴木は、言う。
「・・・もっと信頼してやれよ。滝沢は、お前の部下なんだから」

視線を上げる薪を見て、鈴木は、ニッコリと、笑った。
そして二人は、目の前の作業に向かう。

部下を信頼出来なければ、仕事がし辛いのは、薪だ。
鈴木は、そう思っていた。

それに、鈴木の目には、滝沢に、問題があるようには見えなかった。
確かに、滝沢の提案は意外だった。
だが、相手は年齢が上であるし、鈴木は、そんなことは些細なことだと思っていた。

ただ、自分は構わないが、薪にまで、ため口を聞いたことには驚いた。
だが、そんなことは薪も気にしない・・そう言ってしまったのは、自分自身だ。

滝沢も、その方が仕事がし易いのなら、それでいいだろう。
一人でも多く、優秀な部下が薪を支えるのは、歓迎すべきことだ。

鈴木はそう、自分に納得させた。





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