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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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Scene8:衝動



「ああ・・疲れた」
「下で、コーヒーでも飲んでくるか」
「薪、お前も来るだろ?」

休憩時間になり、滝沢に声を掛けられ、薪は一度そちらに目を上げてから、次に後ろを振り返った。
薪の視線の先には、鈴木が、居た。

「あ、オレはちょっと・・・」
鈴木は、ケータイを取り出しながら、言い淀んだ。

「ああ、鈴木は、あの女医先生と待ち合わせか」
からかうかのように、滝沢が言った。
今や滝沢は、薪にも鈴木にも、同等の口調で接していた。

「いいなあ・・」
「豊村、お前だって、婚約者が居るだろうが」

「いやー・・でも、鈴木さんと違って、警察関係の人間じゃありませんからね。捜査続きで全然会えなくて、式の打ち合わせも出来ないって、電話する度、彼女が嘆いてるんですよ」
「式に漕ぎ付ける前に、破談になるかもな」
「やめて下さいよ~、上野さん、シャレになりませんから」

鈴木は、彼らの会話を聞きながら、何も言わず、ただ、微笑む。
「・・・・・・」
薪は、そんな鈴木の姿を見つめ、そして目をそらすと、部下達と共に、部屋を出て行った。

鈴木は、雪子と連絡を取り合い、カフェで待ち合わせることにした。
そして、紙袋から、リボンの付いた小箱を取り出すと、それを、ポケットに入れる。

本当は、今の事件の捜査が終わってから、外でゆっくりと話をしたかったのだが。
予想以上に捜査が長引き、泊り込みの日々に、デートをするどころか、家に帰るのもままならなかった。

せっかく指輪まで用意したというのに。
これ以上時間を置くと、ここで区切りを付ける決意が、揺らいでしまいそうだった。

豊村が結婚すると報告してきた時、捜査員達は、祝福の声に沸いた。

「次は、鈴木だな」
そう言ったのは、滝沢だ。
「なあ?」
更に滝沢は、首をめぐらし、その場に居た薪に、同意を求めた。

薪は、何も言わなかったが。
誰よりも、雪子との付き合いを知る薪の前でそんな話が出たことに、鈴木は、苦笑するしか無かった。

滝沢がそんなことを言うのも、当然と言えた。
雪子との付き合いも2年を過ぎ、周囲には、公然の仲になっている。

最初、鈴木の両親は、遺体と向き合う雪子の職業に、懸念を示していた。
鈴木が、第九という、やはり亡くなった人間と向き合い、世間的にも何かと問題の多い職業に就いているだけに、結婚相手は、そんな世界とは無縁の人間の方が良いのではないかと、望んでいたのだ。

だがやがて、鈴木の父親は言った。
「考えようによっちゃ、同じ医者なら、既に死んでいる人間を相手にした方が、医療ミスで死なせたりする心配も無くて、安心かもな」

鈴木の母親も、
「あなた達の子供なら、きっと頭がいいわよ。早く孫の顔を見せてちょうだい」
そんなことを言い出した。

雪子の気さくな人柄のせいもあり、いつの間にか、雪子はすっかり鈴木の両親と打ち解け、家族ぐるみの付き合いとなっていた。
周囲は皆、二人が遠からず結婚するだろうと、思い込んでいた。

だが鈴木は。
なかなか、決意することが出来ず、ここまで引っ張ってきてしまった。
とにかく、共に仕事が忙しく、そんなことを、ゆっくり考える暇も無かった。

・・・いや。
仕事を理由にして、引き伸ばしていた・・と、言えるかもしれない。
理由ははっきりしないが、どこか、決意を鈍らせる何かが、自分の中に、あったのだ。

だが、自分はともかく、雪子の立場を思えば、年齢を考えても、そろそろ決めた方がいいだろう。
豊村の話だって、近いうちに雪子の耳に入るだろうし、そうなったら、雪子も、色々と考えることになるかもしれない。

それに、自分だって、雪子のことは好きだ。
彼女以外の女性は、考えられない。

だったら、何を迷うことがある・・・?

もしかしたら自分は、自由な独身生活から決別することが。
妻を持ち、家庭を持ち、責任を持つことが。
不安なのかもしれない。

だが、雪子となら、きっと上手くやっていける。
そう、この辺りで、決断をするべきだ。

色々と思いを巡らし。
雪子にその話をする決意を、改めて奮い起こし。
鈴木は、待ち合わせ場所へと、向かった。

カフェに入るなり、彼女の姿に気付いた。
そこに・・・雪子が、居た。

だが彼女の目には、鈴木の姿は、入っていなかった。
首を横に向け、何かを、見つめている。

その視線が追っているのは・・・・・・・・




自分の中にある、わだかまりが、何なのか。

鈴木は、気付いてしまった。
本当は、とっくに知っていたのかもしれない。
雪子の・・あの視線に。

なのに自分は、自分でも、気付かないフリをして・・・。

雪子自身は、きっと、気付いていない。
もちろん、薪も。
だったら、このまま進めてしまえばいい。

いや・・本当にいいのか?
本当に、それで。

愛する女性を、他の男に譲ろうなんて気持ちは、無い。
だがそれは、正々堂々と、勝負してからの話だ。
自分だけが、雪子の気持ちを知っていて。
最初から勝負もせずに、先に進んでしまったら・・・。

勝負をする気が無いのは、雪子自身にも、誰にもそれを告げないのは。
自分が、勝負に勝つ自信が、無いからだろうか。

オレは・・・・・・

小箱を前に、思い悩む自分の視界に。
白い手が、割って入った。

「どうした」
それは、大切な・・大切な人の、声。

「どうした・・・鈴木」
淡い茶色の、澄んだ瞳が、自分を見つめる。
どこまでも、汚れの無い、その瞳が・・・。

「いや・・何でもない。その、ちょっと疲れただけだ。心配ない」
鈴木は、平静な声を装う。

「そうか」
薪は肩をすくめ、自分が見ていたモニターの前に戻る。

そして、再び振り返り、
「無理するなよ」
そう言って、ニッコリと、笑った・・・。

・・この純粋な魂を。
自分は、裏切ろうとしている。

薪も、雪子も。
自分にとって、大切な存在だから。
二人に打ち解けてほしいと願い、努めて、共に過ごす時間を作ってきた。

それが、こんなことになろうとは・・・。

考えてみれば。
薪の類まれな頭脳と容姿、そして、その中に秘めた美しい魂に。
雪子が惹かれるのも、不思議ではない。

そして、薪は・・?
もしも、雪子の想いを、薪に打ち明けたら。
薪は、どんな反応を示すだろう。

生涯、家族を持たず、職務に生きる運命にある、薪。
そのことを、自分でも信じて疑わない薪に。
お前を想う女性が居ると、そう告げたら。

薪にだって、幸せを求める、権利がある。
薪が、雪子の気持ちを、自分を想う女性の存在を知ったら、愛し愛される可能性が、そこに、開けるかもしれない。

けれどオレは。
そ知らぬフリをして、その可能性を、排除してしまおうと、している。

『誰が何と言おうと、お前は、お前だ。薪剛という、この世で、たった一つの存在だ』
『そんなことを・・言うな・・!』
そんなことを言いながら、自分は、本気で薪のことを、思ってはいなかったのではないだろうか。

自分は、薪が、女性と愛し合う可能性を、全く考えていなかった。
薪が、誰とも愛を育むことなく生きるのは、当然のことだと、思い込んでいた。

それは、所詮、薪はロボットだからと、軽んじていたことには、ならないだろうか。
薪は、子供を成すことは出来ないが、女性と愛し合うことは可能であり、それは、薪に幸せな日々を、もたらすかもしれないのに。
自分は、そんな可能性を、全く考えておらず・・・

薪を守りたいと、そう願っていた筈なのに。
オレは・・・・・・

その時鈴木は、混乱していた。
一斉に襲い来る、いくつもの衝撃を、受け止めきれずにいた。

薪への視線から見える、雪子の想い。
そんな想いに、気付かぬフリをしてきた、自分自身。
そして・・薪が、誰かと愛し合う可能性を秘めた、存在であること。

最後の衝撃は、何故それがショックであるのか、自分でも、よく分からなかった。

結局、鈴木は。
目の前にあったその指輪を、雪子に渡すことは、無かった。




「鈴木。鈴木、大丈夫か?」

やっと捜査に区切りが付き、薪と鈴木は、飲みに出た。
いつもの鈴木だったら、薪が酔わないことを知っているだけに、加減して飲んでいた。
多少機嫌が良くなる程度で、悪酔いすることなど、一度も無かったのだ。

そう・・今日のような鈴木の姿を見るのは、薪は、初めてだった。

薪は、鈴木をマンションまでタクシーで送り。
更に、部屋まで鈴木に付き添った。

「ごめんな・・薪」
そう言ってふら付く鈴木に肩を貸し、薪は、玄関から廊下を歩いた。
鈴木の身体は、薪に覆いかぶさる程に大きいが、ロボットである薪は、身体は華奢でも、通常の人間より、力は強かった。

寝室に入り、ベッドまで歩く。
「着いたぞ・・」
薪が、鈴木を肩から降ろし、ベッドに寝かせようとしたが・・・

「あっ・・!!」
鈴木の腕が引っ掛かり、薪も共に、ベッドに倒れ込んでしまった。

「う・・ん・・」
鈴木は寝ぼけた声を出し、更に薪をしっかりと抱き寄せる。
薪は、通常の人間より、力は強い。
鈴木に引き寄せられたところで、簡単に腕をほどくことが可能だった。

薪は、もがきながら言う。
「離・・・」
言い掛けて・・・

「・・・・・・」
薪は、振りほどこうとした鈴木の腕をそのままに、鈴木を見つめる。

ベッドの上に、鈴木は仰向けになり、片足の膝から下が、ベッドの脇にぶら下がっている。
その鈴木の胸の上に、薪は頭を乗せ、うつぶせに寝た状態になっていた。

鈴木の胸と腕に、包まれる感触。
鈴木の匂い。
鈴木の心臓の音。
鈴木の・・体温。

その時。
薪の中で、ある衝動が、沸き起こった。

薪は、目を見開いた。
自分の身体が・・信じられない感覚に包まれていた。
何故そんなことが起きるのか、理解出来なかった。

鈴木の心臓の音に、自分の、人工心臓の音が、重なる。
大きく脈打つ・・その音。

「どうして・・・」
薪は、つぶやいた。
ロボットの自分に、何故、こんな衝動が必要なのか。

下半身に起こる、その衝動と共に。
これまでに幾度も繰り返された、胸から生まれる痛みが、身体を駆け巡る。

頭頂部から、爪先まで。
衝動と痛みで・・しびれていた。

薪は、鈴木の上に身体を乗せたまま、頭を上げ、手の平で、鈴木の頬に触れた。

「っ・・!」
鈴木の額に、滴が・・こぼれ落ちた。

それが、一体何なのか。
薪は、自分の顔に手を触れ、自分の涙であることを、知った。

何故なのか。
何故なのか。

やっと・・・分かった。

ずっと抱いてきた、胸を塞ぐ、痛みの意味も。
衝動が起こる、その理由も。
そして・・何故それが、ロボットの自分に、必要なのかも。

「うっ・・くっ・・」
薪は、漏れ出る嗚咽を、必死にこらえた。
溢れる涙を、自分の手で受け止め、その滴が、手首を伝っていった。

「ん・・薪」
鈴木の声が聞こえ、薪は、鈴木の顔を見つめる。

「ごめん・・薪」
その言葉に、薪は、ビクッ・・と、身体を震わせた。

だが鈴木は、目を閉じたまま。
そして、もう一度、言った。

「ごめんな。薪」
「・・・・・・」

鈴木は、力の抜けた両腕を脇に下ろし、寝息を立てていた。
薪は、その鈴木の顔に、自分の顔を近付ける。

唇と唇が、あとほんの少しで、触れる・・・・・・

けれど薪は。
それ以上近づくことはせず。
目を上げ、濡れた鈴木の額を、手でそっと、拭った。

そして、身体を起こすと。

風のように身をひるがえし、部屋から出て行った。





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コメント

■ 鍵拍手コメ下さったAさま

○8/24に鍵拍手コメント下さったAさま

コメントありがとうございます。

そうですね。
挙げてらっしゃること、それらは、大きな謎ですよね。
今のところ、読者がそれぞれに想像するしかなく、読者の間では、実に様々な解釈が溢れていると思います。
彼女の気持ちに関しては・・理解しようと頑張った時期もありましたが、最近は、もう「どうでもいい」と思うようになって参りましたが・・。

謎は、もしかすると、全ては解明されずに連載が終わるかもしれませんね・・。
読者の想像にゆだねて終わる・・あるいは、その後の番外編に持ち越しになるなら、それはそれで良いと思いますが。

薪さんの気持ちの経緯について、「書いてある通りでは」とのお言葉、恥ずかしくも嬉しく思いました。
ですが、原作薪さんの場合は、生身の人間であるだけに、もっと早い段階で、鈴木さんへの自分の気持ちに気付いてらしたと思います(;;)
こちらのロボット薪さんは・・何しろ、鈴木さんへの気持ちに気付くまで、恋愛経験ゼロ、もちろん性体験もゼロの初々しい薪さんですから、気付くのが遅かったんですね。
知識だけは(何の?)色々とあったと思いますが・・。

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