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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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Scene9:決断



2059年、夏。
連続殺人鬼、貝沼清孝、逮捕。

その名を聞いて、薪が、驚愕の表情を浮かべたことを。
鈴木は、見逃さなかった。

「・・何が、あった?」
他に、人の居ない室長室で。
鈴木は、尋ねた。

「僕は・・」

蒼い顔をして、薪は話し出す。
薪が、第九に着任してから一年目の。
貝沼との、出会いのことを・・。

「彼は・・僕の生みの親である博士と、同じ位の年齢に見えた。方や、最先端の研究所で、清潔な白衣を身にまとい、億単位の金をその手に任され、動かしている。一方、貝沼は、値引きされた惣菜と即席飯を盗んだ・・長い間、身体を洗っていない人間の匂いがして」

「何故、今まで・・」
オレに、話してくれなかったのか・・そう、鈴木が口に出す前に、
「軽犯罪とは言え、警察官が、犯行を見逃したんだ。だから、誰にも話さなかった」
薪は、そう言った。

「それは・・話した相手をも、犯罪を見逃した共犯になるからか? オレを巻き込みたくないと、自分の胸の内に秘めていれば良いと、そう、お前は思ったのか?」
「・・・・・・」
「薪・・・」

「僕はあの時・・間違ったことを、したんだろうか・・・」
「・・・・・・」
鈴木は、何も言えなかった。

誰よりも正義感の強い薪だからこそ、貝沼を、解放するという行為に出たのだ。
それが、何故、こんなことに・・・。

そして。
貝沼の自殺の知らせと。
同時に、その脳を第九で捜査せよとの指示が、薪に、言い渡された。

28人もの少年を、様々なやり口で惨殺した、狂人の脳を・・・・・・。

これまでも、第九の捜査官達は、様々な犯罪者や被害者の脳を、捜査してきた。
第九に来るのは、ただの殺人犯の脳ではない。
全国でも特に凶悪な、特殊な死に方をした脳の、狂った画を、彼らは見てきた。

だが・・貝沼の脳は、それらを遥かに超えた、異常さを持っていた。
それは、本物の、モンスターの脳だった。

検証を始めて、30分と立たないうちに、一人・・また一人と、捜査官が、席を外していく。
何年も捜査をしてきた、彼らが。
そして・・そんな彼らを率いてきた、室長の薪でさえ・・・・

「薪・・!!」
鈴木の声に、薪は、ハッとした。

「・・大丈夫か?」
自らも蒼ざめながら、鈴木は、薪の肩に手を置いた。
薪は、大きく目を見開き、ハアハアと、息をついている・・。

「薪、少し休め。あとはオレが・・」
「馬鹿なことを言うな!」
蒼ざめ、汗をかきながら、薪は、鈴木に向かって叫ぶ。

「室長は、僕だ。僕が、第九の責任者だ。部下のお前に任せて、お前が責任を取れると思っているのなら、それは誤りだ!」
半ば瞳孔の開いた目で、薪は鈴木を睨み付けた。

「薪・・・」
鈴木は、首を横に振りながら、薪を見つめ・・その両肩に、手を乗せた。
呼吸と共に、大きく上下していた薪の肩が、鈴木の手の中で、次第に落ち着きを取り戻す。

「・・すまない」
薪は、言った。
「すまなかった。・・前にも言ったろう。僕は、お前達人間とは違うんだ。僕なら耐えられる。心配するな」

それから、薪は、鈴木の手から離れると、システムを一時停止させて、言う。
「誰も居なくては、捜査にならない。休憩にしよう。30分後に再開だ」

一人、室長室に入っていく薪の背を、鈴木は見送った。
鈴木は、大いなる不安に包まれていた。

だが、まさかそれが、取り返しの付かない事態の幕開けになろうとは。
この時は、まだ分からなかった。




「ううっ・・!!」
自分のうなされる声に、鈴木は、目を覚ました。

鈴木は、一人、自室のベッドに、横になっていた。
時計を見ると、意識を失ってから、10分も眠っていない。
繰り返される悪夢が、頭の中を巡る。

貝沼事件の捜査は、大変な状況になっていた。
捜査官が次々と離脱し、鈴木も、自宅療養を強制されていた。

休もうと思っても、貝沼の狂気の映像が、目の前に焼き付いて離れない。
そしてまた、その映像を見て、頭を抱えていた、薪の姿も・・・。

ロボットの薪は、これまで。
誰よりも冷静に、捜査に当たっていた。

捜査の過程で困難にぶつかり、悩み、苦しんでいたこともある。
けれど、少なくとも、MRI画像を見て、正気を失うことは、無かった。

そんな薪が。
今回は、現れる画の一つ一つに、怯え、苦しんでいる。

『僕なら、大丈夫だ』
『この身体なら、耐えられる』
そう言っていたが・・・本当に、そうだろうか。

鈴木は、ベッドから身体を起こした。
もうろうとする頭で、ケータイを探る。
そして、ある短縮ダイヤルに、電話を掛けた。

それは、薪を生んだ研究所の、緊急用の直通番号。
短縮ダイヤルと共に、鈴木が自分の声を認識させなければ、通じない仕組みになっている。

もし誰かにケータイを後ろから覗き込まれても、見られることが無いように、画面には、番号が出ず、掛けた履歴も残らない。
更に、どういうからくりかは知らないが、当然電話会社に残る筈の通話記録も、この番号に限り、残ることは無いということだった。

電話は、すぐに研究所の人間が取り、そしてまたすぐに、博士に代わった。
「お聞きしたいことが、あるんです・・・」

鈴木の話を聞き、博士は言う。
「今、大変な状況になっているのは、知っている。だが、彼なら、大丈夫だろう」
「何故、そう言えるんですか?」
「君も知ってのとおり、彼は、君達とは違うからだ」

「本当に・・薪が、心身に変調を来たすことは、絶対に無いんですか?」
「・・・・・・」
博士は、一度押し黙る。
そして低い声で、再び話し始めた。

「・・可能性が無い、とは言えない。人間より遥かに大きいとは言え、ロボットにも、心身の容量の限界という物がある。身体の場合、多少の怪我なら、手当てをせずとも回復するが、破損が大きければ、使い物にならなくなることもある。そして、精神の場合・・・」

鈴木は、黙って、続きを待った。

「身体と同様に、大きく傷付けば、正常に機能を作動させることが困難になり、機能そのものを停止することもある」
「停止・・・」
鈴木は、息を呑んだ。

「そうだ。精神的に追い詰められると、身体を動かす指示すらも狂い、暴走する可能性もある。ロボットが、その身体能力を制御出来なくなったら、どうなる? だから、そうなる前に、精神的容量が限界を超えると判断したら、心身の全ての機能を、自発的に停止させるようプログラミングされている」

「!・・もしそうなったら、その後は、どうなるんですか?」
「完全に機能を停止するということは、全てが、初期状態に戻るということだ。ロボットとして動き始めてから、それまでの間の記憶を、全て失い、二度と戻ることは無い。薪剛というロボットは、居なくなるんだ」

「そんな・・・!!」
鈴木は、言葉を失った。
そして、ツバを呑み込むと、博士に告げる。

「・・一刻も早く、薪を、捜査から外して下さい。薪はきっと、このままでは、もたない・・」
「それは出来ない」
「何故ですか!!」
鈴木は、叫んだ。

「捜査の指示を出しているのは、我々プロジェクトチームとは無関係だ。警察上層部で、捜査を中断すると決定しない限り、我々が口を挟むことは出来ない。それに・・」
博士は、一瞬、言い淀んでから、続ける。

「彼が第九の室長に着任した目的は、まさに、こういうことだったのだよ。人間が限界を超える捜査に、彼は、耐えることが出来るか。皆、様子を見守っているんだ。彼が、どこまで耐え得るかをね」
「・・何て・・!」
鈴木は、怒りに、身体が震えるのを感じた。

「・・本音を言えば、私だって心配だ。強制的に、今すぐ彼を連れ帰りたい位だ。だがね・・これは、国家プロジェクトなんだ。ロボットが、どこまで人間の代わりを成せるのか。人間には成し得ない領域で、成果を上げることが出来るのか。その結果如何によって、日本の未来が変わるんだ。私達個人の思いで、左右出来ることではない」

「オレの任務は、薪を守ることです」
「そうだ。プロジェクトが滞りなく遂行されるよう、彼を適度に手助けし、見守り、こちらに報告するのが、君の役目だった」

博士は、重ねて言う。
「・・もし、彼が狂ったとしたら。その上で、機能を停止させたら。その時は、直ちに専門部員が回収に向かう」
「回収・・だと・・っ!」
鈴木は唸り、唇を噛んだ。

「そうなったら、その時点で、君の役割は終わりだ。そして契約どおり、報酬を手にする。君も、長年の任務を終えて、肩の荷が降りるだろう」
「・・これ以上話しても、無駄なようですね」

鈴木の声色が静かになり、博士は何かを察したのか、言う。
「余計なことはするな。君も分かっているだろう。もし、このプロジェクトを妨げるようなことをしたら・・・っ」

鈴木は、電話を切った。

自分が、何を成すべきか。
鈴木の心は、決まっていた。





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