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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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Scene10:見えた物



薪は、そこに。
力なく座り込んでいる、人影を見つけた。

鈴木
鈴木か?

何をしている・・・?
お前、自宅療養中じゃ

鈴木!!

薪・・・
駄目なんだ・・・

オレの頭を撃ってくれ

駄目なんだ
自分では出来ない
だからお前が
この脳を

・・・・・・・・!!

狂ったか!

もう誰にも
こんな画が見られないように

よせ鈴木!
鈴木!

薪、見るな
撃て
オレの頭を撃て、薪

お前が、撃ってくれ

この脳を、もう誰にも見せるな・・・・・・

薪が、2発目の引き金を引いてから。
鈴木の心臓を撃ちぬくまで。

1秒にも満たない、ほんの一瞬。
そんな僅かな時間に、何かの画像が脳内に流れるなど、不可能な筈だった。

けれど、鈴木は、確かに見えたと思った。
その瞬間。
薪と出会ってから、これまでの日々、全てが。

その時、鈴木に銃口を向けた薪は、涙を流していた。
なのに。

鈴木が、最後の最後に見た光景は。

薪の・・・柔らかな笑顔だった。






貝沼事件により、捜査官の二人は自殺、一人は病院に収容され。
残る二人のうち、一人が、もう一人を射殺して。

第九は、崩壊した。

この事件の後、薪は、緊急メンテナンスが必要とされ、研究所へと搬送された。
全ての検査を終え、ダメージに対する、出来る限りの処置が施されると、薪は、この部屋に連れて来られた。

無機質な空間で、薪は、博士と二人、座って向き合っていた。
そして、虚ろな瞳で、ぼんやりと、前を見ている。

博士は、そんな薪を励ますかのように、穏やかに、言う。
「貝沼事件の捜査、部下達の末路、そして、鈴木警視の事件・・これだけのことを経験しても、君は、君という人格を保ち、身体機能の数値も、全く衰えていない。素晴らしい成果だ」

「・・僕は何故、ここに居るんでしょう」
「うん?」
ここに来てから、初めてその口から出た薪の言葉に、博士は、耳を傾ける。
薪は、ゆっくりと顔を上げ、博士の顔を見て、言った。

「僕は・・人を殺しました。ロボットは絶対に、人間を手にかけてはならない。ロボットは、人間が生み出した物だから。もし・・そのルールを破ったら、ロボットは、この世から抹殺されるべき存在になる。そうでしたね・・・?」

「・・・・・・」
「なのに、何故僕は・・何の罪にも問われずに、ここに居るのか・・・」

博士は立ち上がると、ゆっくりと、周囲を歩きながら、言う。
「・・あれは、正当防衛だった。誰が見ても、それは明白だ。君がもし、あの距離で、彼の銃弾をその身に受けていたら、いくらロボットと言えど、全く再生出来ない程に、破壊されていただろう。人間で言えば、それは『死』だ。あの状況で、撃ち返したことは、正当な行為だったのだ」

「・・・・・・」
薪は再び、視線をそらす。
その先には、何が見えるのか・・・。

「確かに、ロボットが人間を射殺するなど、前代未聞だ。このプロジェクトが、中止になってもおかしくは無い。だがあれは、彼が狂ったことによる、異例の事態だった。彼は、貝沼事件の捜査によって・・プロジェクトとは、直接関係の無いところで、精神に異常を来たしてしまった。残念なことだが・・」
博士は立ち止まり、死者を悼むかのように、一度、目を閉じて見せる。

それから、目を開き、言った。
「だが、プロジェクト自体は、成功と目された。全ての捜査官が、精神に異常を来たす程の過酷な捜査で、君だけは、こうして事態を乗り切ったのだ。人間そっくりの姿の君が、人間には不可能な領域まで、その職務を全うすることが出来る。それが、証明された」

博士はそこで、薪を振り返り、言った。
「ただ・・・一つ、疑問な点がある。何故君は、腕や足、あるいは肩ではなく、彼の心臓を撃ち、絶命させてしまったのか・・」

「・・・・・・」
薪は、何も答えない。

「事情聴取では、発砲され動揺していたゆえ・・ということになっているようだ。だが、そこまで機能が正常に作動しなくなっていたら、それ以前に、停止装置が働く筈だ。けれど君は・・この事件を経てもなお、薪剛という、ロボットの人格を保っている。なのに・・・」

何も言わず、どこかを見つめている薪を見ながら、博士は言った。
「・・いずれにせよ、これからも、プロジェクトは続行だ。予算もこれまでどおり投入され、来るべき日本の未来に向けて、活躍するロボットの開発が進められることだろう」

「未来・・・」
薪は、ぽつりとつぶやいた。




薪は、その後も、室長として、第九に居続けることとなった。

薪は、思う。
あの日、鈴木は、貝沼の脳を見ていた。
鈴木は、もしかしたら、自分を殺したくなるような画を、見たのかもしれない

全ての元凶は・・自分にあるのでは、ないか。

幾度も、幾度も。
鈴木の、幻を見た。
ロボットが幻影をみるなんてことがあるのかと、自分でも驚いていた。

でもこれが。
鈴木を殺した自分への、罰なのかもしれない。
誰もが罰しない・・そんな自分の罪への、唯一の・・・。

もう、自分を傍で見守る役目を担う人間は、居ない。

「元々、君が室長に納まるまでの、準備期間を手伝う為に、彼は居たんだ。君が室長になり、事が機動に乗った時点で、彼の任務は終わる筈だった。だが、彼が、続行を希望したんだよ。いずれにせよ、副室長として、君の傍に居ることに変わりは無かったし。我々も、この最初のプロジェクトを進める上で、彼が居た方が、安心だと思った」
そう、博士は言っていた。

「彼は、当初の契約期間を超える報酬は要らないと言ったが。結局、減額されたとは言え、それなりの年間報酬もあった。彼にしてみれば、それも、魅力だったのかもしれないな」
「・・・・・・」
報酬・・そんな物の為に、鈴木が傍に居たとは、思えない。

鈴木が、多額の貯金を残していたことに、遺族は驚いた。
更に、鈴木に支払われる筈だった、残りの報酬も、年金や保険という名目で、遺族に支払われたのだった。
そんなことを、薪は何も、知らなかったが。

「僕は、いつまで・・この仕事を続けることになるのでしょうか」
薪は博士に、そう尋ねた。

「そうだな。いつまで続けることになるのか・・それは私にも、分からない」
「もし、僕が」
薪は、言う。

「僕が、もう辞めたいと願ったら、全てを終わりにすることは、可能なのでしょうか」
「君・・・」
「僕には、そんな権利さえ、無いのでしょうか。自分で自分の終わる日を、決める・・・」
「・・・・・・」

博士は、薪を見つめた。
手塩に掛けて生み出し、そして・・大きな目的に支配されている、このロボットを。

「もし君が。いつか・・辞めたいと願う日が来たら、出来る限り、力を貸そう。だが君は、根っからの警察官だ。第九の室長になる為に、生み出された存在だ。室長の任から退くとしたら、永遠に、姿を消さねばならない。他の場所で生きることは叶わない存在なんだ。・・言ってる意味が、分かるか?」

「・・はい」
薪は、静かに答えた。

それから。
薪のもとに、新しい部下が、集い始めた。

薪はもう、自身の思いを偽り、部下に笑顔を作ることを、辞めていた。
本気で思うことを、部下達にぶつけた。

それで、部下達が去っていくなら、それはそれで、構わない。
実際、部下の多くが、MRI捜査の厳しさだけでなく、薪との折り合いの悪さに、次々と辞めていった。

だが、やがて。
岡部をはじめとする、何人もの部下達が。
そんな薪に、付いてくるようになった。

そこに。
本気で守りたい物が、生まれた。

そして数年後。
遂に、薪は、言った。

「あなたのお力を、お借りしたいのです」





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