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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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Scene11:終末



今や薪は。
いくつもの組織から、監視されていた。
極秘で研究所を訪れることは、不可能だった。

そして、博士の方から、薪の指定した場所に、赴いたのだ。

「今こそ、あなたのお力を、お借りしたいのです」
そう、薪は言った。

第九の理想を、守る為に。
部下達の未来を・・・守る為に。






薪は、救急車で、搬送された。
即日の、死亡の連絡。

誰もが、それは悪夢だと・・・思った。

一般の病院で、死亡が確認され。
薪は、極秘に研究所に運ばれた。

死亡したとされたことで。
やっと・・薪は、全ての物から、解放されたのだ。

それは、薪自身が、望んだこと。
全てを背負い、この世界から、姿を消す。
後に残る者達に、希望を託して・・・・・・

「博士」
研究所のスタッフが、報告する。

「薪剛の身体機能ですが・・停止装置が作動した筈なのに、脳の機能だけが、停止しません」
「何だと・・・?」

博士は、ベッドに横たわる、薪の身体を、見つめた。
いくつもの銃弾が貫通した跡が残り、ボロボロになった、薪の身体。

けれど・・その頭部だけは。
美しいままに、残されていた。

目をつぶる、薪の顔を見て、博士は、言った。

「どういうことだ・・?」
「これが、人間だったら、酸素不足でニューロンが破壊され、大脳皮質は、身体の臓器の中で、一番先に活動を止める筈です。けれど・・彼の場合、それが停止しないんです」
助手は、首をひねる。

博士も、思案するような顔をして、言った。
「彼の脳は・・人間と同様の作用が起こるように、プログラミングされている筈だな」

「はい。人間であれば、脳が活動を止める直前に、身体の苦痛や不安を取り除くため、脳内麻薬を出します。その為、酔っ払ったかのように、心地のいい気分になる。それと同時に、その人間の記憶に関する部分の側頭葉が活発に働き始め、結果、家族や友人、親しい人々が次々と現れ、走馬灯のようにその人生を振り返る。必ずしも現実にあったシーンでなくとも、本人が自分の中で作り出した、一番幸せな世界が生まれることになります」

「つまり・・彼は、薪剛は、幸せな世界を、まだ見ていない。だから・・機能が停止しない。逆説的ではあるが、プログラミングによって、完全な停止を妨げていることになる」
「電源を切り、強制終了をする手もありますが・・」

「・・いや、そうすると、初期設定が破損し、残されたパーツにまで、不具合が生じる恐れがある。これだけの精巧な機械だ。幸い、人工心臓の破損は少ないし、他にも、利用出来るパーツは、最大限、そのまま生かして、今後の開発に再利用する。自発停止装置が正常に作動するよう、何か手を打った方がいい」

博士は考え込むと、やがて、言った。
「・・そうだな。では、彼が望む夢を、見せることにしよう」

「彼の・・薪剛の、望む夢とは・・?」
「彼が、この14年間に蓄積した記憶チップの情報をシステムに読み込ませれば、自動的に、彼が最も望む、幸せな世界が、構築される筈だ」

博士の言葉によって、薪の記憶チップを読み込む装置が作動される。
そこから・・薪が望む夢が、薪の脳内に流れ始めた。






ここは・・どこだ?

薪は、振り返る。
そこは、第九の執務室だ。

そこには・・・鈴木が、居た。

『鈴木・・!!』

薪は、駆け寄った。
『鈴木・・どうして・・!』
『薪の方こそ、どうした?』

『お前、どこも、何とも無いのか?』
薪は、鈴木の肩を掴み、その顔を覗き込む。

信じられない。
鈴木が・・・居る。

『何だよ、薪』
鈴木の声に、薪は我に返り、ずっと言いたかったことを、言った。

『鈴木。お前、あの時・・・』
薪は、一瞬、言い淀む。
けれど、改めて、鈴木を正面から見つめ、言う。

『お前は、自分を撃ってくれと、心から願っていた。僕は、マスターであるお前のその願いに、反応してしまった。ロボットとして、マスターの強い意思は、絶対だ。だが、人間との交流との間で学んだ精神は、それを、拒絶しようとした。お前を撃つまいと・・けれど僕は・・お前の願いを、この手で、実行してしまった。・・お前が死にたいという願いを、僕は・・・』

『僕が、今でも僕であり続けるのは、ロボットとしての性能が良かったからではない。お前が居たからだ。お前が、命を掛けて、僕を守ろうとしたことが・・僕を、ここまで・・・・』

『・・何を言っている? 薪』
鈴木が、笑顔で、そう言った。

鈴木が・・・笑う・・・・・・。

『どうしたんですか? 室長』 
その声に、振り返ってみれば。

『上野・・豊村・・!』
部下達が・・笑っている。

『一体どうしたんだよ、薪』
鈴木が、薪の背中を、笑いながら叩く。

『ただいま戻りました~』
『あ、お疲れ』
鈴木が声を掛けた方を見ると・・・

『曽我・・小池。今井に、宇野、山本・・!』
薪が声を上げると、
『第九も、優秀な部下が増えて、安泰だな』
傍らで、鈴木が、微笑んで言う。

そこにまた、顔を出した者が居る。
『薪さん・・会議、滞りなく終了しました』

『・・岡部!』
『ああ、薪さん。今度立ち上がる第九分室関西支部の話ですがね、会議の席上で、室長を誰にするか、検討しろと言ってきました』

『私なんて、どうですか?』
岡部の話に、割って入る声がする。
『天地・・!!』

『ええーっ! オレを差し置いて、天地が先に出るなんて、有り得ねーだろっ!』
『小池さん、いいじゃないですか。私だって、一人前に仕事が出来るようになりましたし。女性室長っていうのも、悪くないと思いますよお・・ねえ、青木さん?』

『・・青木?』

薪は・・その名を聞いただけで、胸が、痛んだ。
そう、これは。
この痛みを、最初に味わったのは、確か・・・

『薪』
ふわりと背後から誰かに抱きすくめられて、薪は振り返る。

『あ・・鈴木さん、また、そんなことして・・』
目の前に現れた、長身の部下・・・。

『いいだろ。薪とオレは、長い付き合いなんだから』
『・・そうは言っても、明らかに仲が良すぎなんですよ。他の部下に示しが付くような接し方を、心得ておいて下さいね』
『焼くなって』
『そんなんじゃありませんよっ』

皆が・・居る。
皆が、ここに・・・・・・・。

『そうだ・・!』
薪は、鈴木に急いで尋ねる。

『貝沼は・・どうなった?』
『貝沼・・?』
薪に腕を振りほどかれた鈴木は、首をかしげる。

『28人殺しの犯人だ。彼は今、どうしている?』
『28人殺し? ・・何言ってんだ? 薪』

『貝沼? ああ・・薪さんが昔、万引きを見逃してあげた男性ですよね』
青木が、明るい声で言う。

『彼なら、スーパーの営業部長をしてますよ。迷惑を掛けた店に、償いをしたいと言って、清掃員から始めたんですよね。そこから出世して・・薪さんには今でも感謝してるって、大量の試供品を持ってきてくれたこともありますよね』

青木の話に、薪は・・胸が、つかえたようになった。

『そう・・か』
言いながら・・薪は、涙がにじむ。

『小さい娘さんも連れてきて・・奥さん似だとかで、可愛かったなあ』
青木が、笑顔で言う。

『何、泣いてるんだよ、薪。次の捜査が、始まるぞ』
『薪さん』
『室長』
『薪さん!』
『薪室長!』

部下達が・・薪を、取り囲む。
皆、無事だ。
薪の部下達は、誰一人、殉職してなど、いない。

皆・・笑っている。

そうだ。
皆が、一丸となって、捜査に取り組んでいるのだ。
自分は・・一体何を、憂えていたのだろう。

『何、油を売っている。皆、すぐに、仕事に戻れ!』
背筋を伸ばし、薪は言う。

『はい!』
『了解!』
『分かりました!』
部下達は、笑顔で、それぞれの持ち場に就く。

第九の職務は、厳しい。
この先も、悩み、苦しみ、困難にぶつかることもあるだろう。

けれど、彼らが居れば。

第九は、もう・・・・・・






「彼・・笑ってますね」

研究助手が、横たわる薪の顔を見て、言った。
「一体、どんな夢を、見ているんでしょうね」

「・・・・・・」
じっと薪を見つめていた、博士が言う。

「・・分からない。記憶チップは、脳の機能が完全停止した瞬間に、初期状態に戻る。彼が職務で見た秘密が、外に漏れ出ることの無いように、設定された物だ。だから、彼がこれまで見てきた物を・・今、彼が見ている夢も含めて、我々が、見ることは出来ない」

博士は、改めて、薪の寝顔をじっと見つめると、言った。

「彼が見た夢は、永遠に、彼だけの、秘密だ・・・・・・」

死を目前に迎えた人間と、同様に。
一番幸せな世界を見た、薪は。

その夢を見終えると。

「あ・・今、薪剛の心身機能が、完全停止しました」
助手の言葉により。

薪は、薪剛としての生涯を終えたことが、確認されたのだった。





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コメント

■ 鍵拍手コメ下さったAさま

○8/26に鍵拍手コメント下さったAさま

コメントありがとうございます。

後ほど後書きに書くつもりでおりますが、このシーンは、映画「A.I.」のラストシーンから生まれた物です。

薪さんが、薪さんとして生きているその間に、幸せを感じてほしい・・それが私の願いであり。
こんな風に、叶わなかった幸せな光景を、夢の中で叶えるしかないというのは、痛くて苦しくて、自分で書きながら、辛いものがありました。

こんなお話を書いてはおりますが、原作の薪さんには、生きることがどんなに苦しくても、永遠の眠りの方が楽であっても・・生き続けて、生きて、幸せを掴んでほしいです。

「原作のノベル版を読んでいるよう」だなんて、光栄・・を通り越して、恐れ多くて逃げたくなってしまう程です・・(><;)
でも、お言葉ありがとうございます。

明日は「メロディ」発売ですが、週末は時間が取れないので、来週になってから開くようだと思います。
それまでは・・原作のことはなるべく考えないようにしたいと思います・・・(;;)

お読み下さいまして、ありがとうございました。

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