カウンター


プロフィール

かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

リンクは嬉しいので、ご自由にどうぞ♪


当ブログ拍手頁

最新の公開拍手コメのレスはこちら それ以前の公開拍手コメ&レスは、各記事の拍手ボタンを再度押していただければ読めます 鍵拍手コメにつきましては、拍手をいただいた記事下コメント欄にレスを書いております

所属してます♪


月別アーカイブ


最新記事


最新コメント


検索フォーム


 
Scene12:旅路



まるで、どこかのリビングのような。
シンプルでいて、調和の取れた家具で、統一された一室で。

青木は、白衣を身に付けた初老の男と二人、テーブルを挟んで座っていた。

「これは、トップ・シークレットだ。分かるね」
周囲に博士と呼ばれるその男が言い、青木は、うなずいた。

くどい程に、何度も念を押されるのは、これが、国家的な極秘プロジェクトであるからだ。
既に、電子契約書にサインも済ませた。
この契約書は、指紋照合をしなければ、無関係の人間は、ファイルを開くことすら出来ない。

最初は、本来の仕事の責務を思うと、こんな責任を新たに抱えることは、重荷でもあった。
だがこれは、日本の未来を担う仕事であるという。
他に適任者が居ないと説得され、青木は承知した。

それに、金銭的報酬よりも、この任務を引き受ければ、家族の身の安全が得られるということが、大きかった。

老いた母親。
まだ10代の舞。
第九分室の室長をしていると、自身のみならず、家族が危険に晒されることもある。
それが青木には、何よりの心配の種だった。

母親にも、舞にも、舞がやがて伴侶を得たらその相手にも、本人の預かり知らぬところでSPが付き、常に安全に配慮するという。
それでも万全とは言えないが、過去に、第九の捜査官であることによって身内を失った青木にとって、それは、実に魅力のある話だった。

「今度、新たな捜査機関設立の準備が水面下で動いていることは、知っているね」
「ええ・・けれど、世論の圧力が掛かるのは必至ですから、まだ、決定事項ではないと聞いていますが」
青木が答えると、博士は、肩をすくめる。

「表向きは・・だ。遅かれ早かれ、こういうことは、一度決定したら、結局は覆されることはない。要は、いつそれを公にするか、そのタイミングを計るだけだ」
「・・オレ自身、そんな物が設立されて、果たして益になるのかどうか、疑問があります。人間の尊厳を、無視することになり兼ねないと」

青木は、ため息を付いて、続ける。

「これまでは、脳を取り出さなければ、脳データを取得し、MRI捜査をすることは叶いませんでした。それが・・技術が進んで、外からの電気刺激でデータが取り出せるようになるのも、時間の問題だと言われています。遺体に外科手術を施さず、MRI捜査が出来る事は、亡くなった方や、遺族の気持ちを考えても、歓迎すべきことだと思います。しかし・・・」

博士が、青木の言葉を継いだ。
「つまり、そうなると、死んだ人間だけでなく、生きている人間のデータを読み取ることが可能になるということだ。そして、第九のような、亡くなった被害者や加害者の脳を捜査する機関とは別に、生きた人間のMRI捜査機関が設立されることになる。そうなれば、誤認逮捕が防げ、更に、既に発覚した犯罪だけでなく、進行中の犯罪も、食い止めることが出来るようになる」

「・・けれど、容疑者というだけで、実際には犯罪に関わっていない人間が、拘束され、強制的に脳データを見られる事態も出て来るでしょう。これまで以上に、MRI捜査を利用する人間も、出て来るかもしれない。新たな捜査機関は、様々な危険を、はらんでいます・・・」
青木は、静かに言った。

「確かに、問題は多い。だが、第九だって、設立当初は、盛んに反対運動が起こっていた。だが今は、皆が第九の功績を認めざるを得ない。今度の捜査機関も、益になるかと言えば、大いに有益だ。彼らは、この設立を撤回することはしないよ。我々配下の者は、その決定の中で、最善を尽くすしか無いのだ」

「・・・・・・」
青木は、じっと考え込む仕草を見せた。

15年前、自分が、姉夫婦殺害の容疑で拘束された際、確かに、真実を皆に知ってほしいと願った。
だが、その為に、自分の脳が人に見られていたら・・どう思っただろう。
あの時は、現場に残った証拠の数々から、冤罪が立証された。
その後も飛び交う疑惑の声を・・薪が、払ってくれた。

生きたまま、MRI捜査が可能だとなったら、その捜査が優先され、現場検証等の捜査が、なおざりにされないだろうか。
手早く真実を探る為に・・簡単に、人の脳が見られる世の中に、なってしまわないだろうか・・・。

「何にせよ、君が、そのことを考える必要は無い。決定するのは、他の人間の役目だ。そして、君の役目は・・・」

「失礼します。よろしいですか?」
ドアのモニターに研究助手の顔が映り、博士はそこに座ったまま、ドアロックを解除するスイッチを押した。

ドアが開き、助手が、台座に乗せた、ある物を運んできた。
「慎重に動かせよ。そこに降ろして・・そうだ」
博士の指示により、それが、青木の目の前の床に、降ろされた。

「・・・・・・」
青木は、思わず立ち上がる。

「これが・・・・」

青木は、それを呆然と見つめた。
目の前に立っているのは、一体の・・ロボット。

だが、事前に知らされていなければ、人間としか思えなかったに違いない。
不可思議な点は、目を閉じ、微動だにせず、そこに立っているということだけ。
それを除けば、彼は、人間そのものだった。

身長は、170センチ台後半といったところだろうか。
現代の日本人男性としては平均値だが、肩幅が狭く、全体的に細身で、華奢に見える。
確か、27歳という設定の筈だが、チノパンにパーカーを羽織ったスタイルの彼は、10代のようだ。

細く長い首の上に、小さな頭が乗り、それを、短い栗色の髪が覆っている。
やや日焼けしたような色合いの肌は、ロボットだから当然だが、シミもシワも一つも無い。

くっきりとした弧を描く太い眉と、薄い唇、すっきり通った鼻筋は、凛々しい少年剣士のようだ。
そして、細いアゴと、長い睫毛は、彼を女性的にも見せていた。

彼に見入る青木に、博士は、言った。
「君の役目は、彼を、君が室長を務める第九分室の新人として迎え入れ、彼を鍛え、守ることだ」

青木は、彼に視線を置いたまま、うなずいた。

「新たな捜査機関が設立されるまでに、あと何年かかることになるか・・・その間、彼は君のもとで経験とキャリアを積み、捜査官としても、そして人間としても学び、やがて、周囲に認められる形で、新たな機関のトップに据えられることになる」

「君も承知のとおり、これは、極秘プロジェクトだ。国内全土でも、このプロジェクトを知っているのは、ごく少数に過ぎない。それを念頭に置き、常識ある形で、彼を見守ってもらいたい」

博士の言葉に、青木は、ふと思いついたように、言った。

「一つお聞きしたいんですが・・オレが、今回この役目に選ばれたのは、何故ですか?」
「・・前にも言ったと思うが。君の人柄や経験・・様々な観点から検討され、適任と目されたからだ」
「それだけですか?」
「・・・・・・」

青木は、博士の顔を見て、言う。
「この警察機関に、優秀な人間や、口の堅い人間は、他にも居るでしょう。第九分室で鍛える必要があるのなら、オレより優秀な先輩方も、沢山居ます。なのに、何故オレなんだろうかと・・・」

「・・自分が、この任務に選ばれたことに、不満があるのかね?」
「いえ、そういうわけでは。ただ・・・」
青木は、何かが引っ掛かっていた。
それが何なのか、このロボットを目の前にした途端、急に疑問が沸き上がってきたのだ。

「・・こういったロボットが、人間社会で重要な地位を担うのは、初めての試みなんですよね・・・?」
青木は、念を押すように、言った。

博士は、静かに、だがキッパリと、言う。
「そうだ。人間が担うには、秘密を伴い、危険過ぎる職務を、人間の姿をしたロボットが代わりに務める。日本初のプロジェクトだ」
「・・・・・・」

博士は立ち上がると、じっとロボットを見つめる青木に向かい、言った。
「では、我々は席を外す。先程説明したとおり、二人になったら、スイッチを入れて、彼に話し掛けてほしい」

「・・分かりました」
青木は、博士に向かってうなずいた。
博士達はドアの向こうに消え、そのドアが閉じられる。

青木は、彼を見つめた。

そして、降ろされている彼の手を取り、その手の平に触れると、平面の、小さなモニターが現れた。
そのモニターの指示に従い、画面に映る暗証番号を押した。

それから、目の前に立つ彼に向かい、教えられた、彼の名を呼ぶ。
すると・・・

手の平のモニターが掻き消え、同時に、ピクッ・・と、彼の長い睫毛が、僅かな動きを見せる。
それから、目が見開かれた。

こぼれ落ちそうに大きな、淡い茶色の瞳が、青木を見上げる。
その瞳を見た瞬間・・・

青木は、めまいを覚えた。

何だろう。
何か、懐かしい物を見たような。
何とも言えない・・苦しいような、嬉しいような、不思議な感覚が自分を襲う・・・・・・・

「・・・・?」
額に手を当てる青木を、彼は、やや首をかしげて、見つめている。

青木は、大きく息を吐くと、改めて彼の前に立ち、その顔を見つめた。
彼の瞳を見ていると、いつの間にか、懸念も疑問も消え失せ。
この任務に対する高揚感が、沸き上がってくる。

それはまるで。
若かりし頃、念願の第九に配属された時のような、心が浮き立つような・・・。

・・・何故、自分がこの役目に選ばれたのか。

オレには分からなかった。

そう。
彼と出会った、その時。
オレは・・その先に何があるのか、何も、分かっていなかった。

でも、きっと。

そこには、未来が開けている。
彼と共に、作っていく、未来が。

そんな予感が・・・した。

青木は、彼にニッコリと笑いかけると、言った。
「オレは、青木一行。これから、君と共に歩んでいく者だ。よろしく」

すると、目の前のロボットは、青木を見上げ。

「アオ・・キ?」

一度、そうつぶやいてから。
やがて・・晴れやかな笑顔を見せて、言った。

「よろしくお願いします。青木さん」






旅路 終







関連記事

コメント

コメントの投稿



管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

■この記事のトラックバックURL

⇒ http://kanon23.blog36.fc2.com/tb.php/783-1a0630f9

この記事に対してトラックバックを送信する(FC2ブログユーザー)

■この記事へのトラックバック

 | BLOG TOP |