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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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Scene4:余地



「ローザ。・・まだ居たのか」
その声に、ローザは振り返る。

「今井さん・・」
ローザはつぶやくと、視線を前に戻し、そこに横たわる病人の顔を、見つめた。

「気持ちは分かるが、君も帰って休んだ方がいい。このままでは、君も身体を壊してしまう」
「・・ありがとう。でも、靖文さんの傍に居たいから」

微笑むローザの肩に、今井は手を置いた。
「こんなことを言いたくは無いが。もしかすると、岡部さんは、もう・・・」

ローザの目に、また、涙が溢れた。
「いえ!・・いいえ。彼は生きてるのよ。必ず目を覚ますわ。だから、私は・・・」
その先は、言葉にならなかった。

悲しみに暮れ、周囲に慰められる彼女のその姿が、ニュースの画面に映し出された。

「ローザ・・・」
岡部は、ソファに座ってモニターの画面に見入り、額を抱えていた。

「岡部さん」
呼ばれて顔を上げると、目の前に、コーヒーの入ったカップが、差し出されていた。

「あ・・ああ」
岡部はそれを受け取り、そこに口を付け、ゴクリと飲み込んだ。

傍らに立つ青木が、次のニュースを映す画面を見つめている。
「今の・・ローザ・サシェさんですよね。岡部さんと結婚するという噂のあった・・」
青木は、やや目を伏せて、言った。

岡部は、座ったまま、背後に立つ青木に向かい、言った。
「・・オレは、一体いつ、地球に帰れる?」
「それは・・」
青木は、言いよどむ。

岡部は振り返り、ソファの背もたれに腕を置き、青木をじっと見つめて、言った。
「・・いいか? お前達のやっていることは、立派な犯罪だ。分かっているだろうが。こんなことが続くようなら、オレは、地球に帰ったら即、出るところに出るつもりだ」
「・・・・・・」
青木は、岡部を見つめ返すと、それから、首を横に振り、言う。

「お気持ちは分かります。むしろ、お怒りは当然だと思います。ですが、訴えたところで、岡部さんが勝つことは、残念ながら有り得ません」
「・・どういうことだ?」
岡部は、怪訝な顔をする。

「今は亡き薪さんの父君は、政府高官と繋がっていて、今でも多額の寄付が各星々に贈られているんです」
「また金か!」
岡部は、叫んだ。

「金、金、金・・・! 一体、あの坊ちゃんはどれだけの金持ちだって言うんだ!?」
両手を挙げて、岡部は言う。

「うーん、そうですね・・。例えて言うならば、あと星を千個程は楽に買い取れる位です」
「はあ・・・!?」
岡部は、千個の惑星を頭に浮かべ・・束の間、めまいを覚えた。

「何てこった・・」
しばらくして、岡部は、大きくため息を付いた。

「ここまでして、人一人さらって来るなんて、およそ正気の沙汰じゃないとは思ったが・・。あの若さで、それだけの金持ちとなれば、普通の感覚が麻痺するのも無理からぬことだな」
「岡部さん・・?」
岡部の言葉に、青木は、目を見開き、岡部を見つめる。

「あの坊ちゃんは、年はいくつなんだ? 地球の感覚なら、高校生位に見えるが」
岡部に問われ、青木は答える。

「そうですね。薪さんは、実は、ああ見えて35・・」
「えっ!?」
「・・なんてオチがあるわけでもなく、お見立てのとおり、17歳です」
「・・・・・・」

「薪さんは」
青木は、言う。

「・・長くても、次の誕生日までには、あなたを解放すると思います」
「うん?」
岡部は、身を乗り出す。

「薪さんは、18歳の誕生日を迎えたら、父君が残した物を全て受け継ぎ、事業の表舞台に立つことが、約束されているんです」
「じゃあ・・」

「ええ。これまでは、代理人である一族の方々が、薪さんの父君の意思を受け継ぎ、事業を動かしていました。だから薪さんは、ここで経済等を学びながら、ネットを通じて各星々の全ての事業の様子を見守ってきたんです。けれど18になったら、もう傍観者では居られません。薪さん自身が、この星を出て、全ての責任を負わねばなりません」

「・・・・・・」
青木の話を、岡部は、黙って聞いていた。

千個の星を買える程の、各星々の政府に寄付を贈り続ける程の、財産を。
あの若さで全て受け継ぎ、動かしていかねばならないのか・・・。

岡部はまた、ため息を付いた。
自分の世界は、例えグラミー賞を100回取っても、星を1個買えるかどうかといったレベルだ。
だが、薪を、羨ましいとは思わない。
むしろ・・・

「・・ですから、次の誕生日までには、あなたを解放せざるを得ないと思います。もう、この星には居られないんですから」
「そうか・・」

岡部は言い、更に尋ねた。
「それで、薪さんの誕生日まで、あとどれ位あるんだ?」

「ええと・・あと11ヶ月と20日程・・」
「ああっ!?」
それまで静かに話していた岡部が、急に大声を挙げ、青木は耳を塞ぐ。

「まだ、そんなに先なのか!?」
岡部は立ち上がって青木に詰め寄り、青木は耳を塞いだまま、後ずさりする。

「ええ。17歳の誕生日が、つい10日前に過ぎたばかりなので」
「一年も、こんなところに閉じ込められていてたまるかっ!!」
「ですから! 『長くても』って言ったじゃありませんか。あなたさえ薪さんのご機嫌を損ねなければ、きっともっと早く解放してくれますよっ!」

青木と岡部は、そこに立ち、じっと互いの顔を睨み合った。
「・・そんな目で見たって、オレには何も出来ませんからっ」
必死な声でそう言ったのは、青木だ。

「・・・・・・」
「・・・・・・」
しばらく睨み合った後、岡部は、肩をすくめ、青木から離れた。

そして、言った。
「・・そう言うお前は、何なんだ?」
「え?」

「お前だって、まだ若いだろう?」
「・・24になりますが」
青木は、柔和な表情に戻り、言う。

「その若さで、この、二人だけの惑星で、あの坊ちゃんに仕えてるのは、どういうわけなんだ? 肩書きは執事か? それとも後見人か?」
「・・いちおう、ボディガードです」
「は!?」

岡部は、改めて、相手を足から頭までしげしげと眺めた。
確かに、背はかなり高く、肩幅もそれなりにあるが、全体的には細身で、およそ肉体派には見えない。
音楽をやる為に、体力を必要とする自分の方が、余程いい身体をしている。

何より、青木を執事たらんと見せているのは、その雰囲気だ。
ボディガードと言えば、いかめしい顔をして、周囲を威圧するイメージがある。
だが青木は、物腰が柔らかで・・表情も豊かだった。
今も、値踏みするように青木を観察する岡部を、青木は、笑顔で見つめている。

「・・ちっとも、ボディガードらしくないな」
「身体は軟弱に見えるかもしれませんが、これでもいちおう、必要な武術は全て身に付けているんです。いざという時に、薪さんを守れるように・・。でも、実際のところ、ボディガードが必要な場面なんて、ほとんど無いですけど。薪さん自身も、ひと通りの護身術は心得てらっしゃるし、ここでの生活では、危ないことなんて、何もありませんから」

「身体がヤワに見えるって言うよりも・・お前のその顔が、ボディガードらしくないって言ってるんだ」
「顔・・ですか?」
青木は、不思議そうな表情を見せる。

「お前と来たら、見る度にニコニコしてて・・ボディガードってのは、無表情で、相手に感情を悟られないようにする必要があるんじゃないのか?」
「・・言われてみれば、そうですね」
感心したようにうなずく青木を見て、岡部は、呆れたように首を振った。

そんな岡部に、青木は言う。
「そうだ、そろそろ・・薪さんのお相手を、お願い出来ますか?」

「・・お相手?」
岡部のその言葉が合図になったかのように、ドアが開かれた。

「岡部、来い」
ドアの前に立つ、この日の薪は、白いフリルの付いたシャツ姿。

それを見て、岡部は思う。
益々、どこぞの王子のように見える。
腰に剣でも下げれば、完璧だ。

「早くしろ」
薪は、岡部の腕を掴むと、有無を言わせず、廊下に連れ出した。

「ちょちょっ・・何するんですか!」
「いいから、来い」

連れられた部屋に足を踏み入れ、岡部は驚いた。
そこには・・ずらりと、ブルース・ギターの名器が並んでいた。

「これは・・」
岡部は、自然とそれらに、足が向く。
手を伸ばし・・一つに触れる。

「そんな馬鹿な・・これは、博物館にしか無い筈の・・」
「宇宙に3台しか残っていないという、幻の名品だ」
「こっちは・・ブルースの神様と言われた・・」
「そうだ。彼が実際に使っていたギターだ。お前の為に取り寄せた」

「オレの・・?」
岡部はゆっくりと顔を上げ、薪を見つめる。

「全部、お前にやる。好きに使っていい」
「全部・・・」
岡部は、室内を見回した。

部屋いっぱいに並んだ、信じられない程の、貴重なギターの数々・・・・

「・・・いや」
岡部は、手にしていたギターを元に戻すと、背筋を伸ばし、薪に向かって、言った。

「結構です。オレは、薪さんにこんなことをしてもらう理由も資格もありません」
「理由なら、ある。僕が、お前にやると言った。それが理由だ」
「いいや・・!」
岡部の声が、大きくなる。

「オレはこんな物、一つも欲しくない。そんなことより、一刻も早く、オレを地球に返して下さい! いいですか? あんたが、特別な環境で育ったことで、まともな感覚を持てなかったことには、同情の余地がある。だが、あんたが自分のワガママを通す為に、どれだけの人間を苦しめてるか分かりますか? いい加減、目を覚ましたらどうなんです!」

「・・・・・・」
薪は、岡部を見上げている。
岡部は頭を振ると、薪に背を向けた。

廊下に出て、ズンズンと先に進む。

背後で、薪の声がした。
「おい、岡部」
「止めんで下さい!」
そう言った途端・・

バチッ・・!!

大きな音がして、岡部は立ち止まる。

・・・身に付けていたネクタイの先が、焦げてボロボロになっていた。
「っ・・・・!!」
岡部は、真っ青になった。

「僕の申し出を、断わったりするからだ。気を付けろ。正規のドアじゃないところには、高電圧バリヤが張ってある。闇雲に歩くと、黒コゲのゴリラが出来上がるぞ」

「・・・!」
岡部が振り返ると、廊下の真ん中で、薪が涼しい顔をして、立っていた。

岡部は、肩を震わせる。
・・同情の余地があるなんて、思ったのが間違いだった。

こいつは・・・・とんでもなく横暴な小僧だ・・!!





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