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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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Scene5:宇宙船



『・・・高電圧バリヤですって?』
岡部が聞き返すと、廊下に立っていた薪が、言う。

『そうだ。気を付けろ。先日も、飼い猫のミルフィーユが触れて死んだばかりだ・・』
薪は目を伏せ、悲しそうな顔をする。

『そうですか・・』
見たことも無い、薪のその表情に、岡部は少し、胸が痛んだ。

『だが、寂しくは無いぞ』
薪が、顔を上げる。
『一度生活を共にした者は、死体を全部、ビン詰めにして取っておくんだ』
『えっ・・!?』

岡部が驚いていると、暗がりに、大量のビン詰めが現れた。
『ほら・・これも、これも・・』
薪は、生き生きとした顔で、それぞれに生き物が入ったビンを、岡部に指し示して見せる。
そして・・

『あの一番奥の大きいビンは、お前の・・・』




「うわあああああっ・・!!」

岡部は、自分の叫び声に、目を覚ました。
ベッドの上に起き上がり、額に手を当て、ハアハアと息を付く。

まったく・・・なんて夢だ。
しかも、最後に見たビンには、黒い顔をしたゴリラが入っていたように見えたのは、気のせいだろうか・・・。

「食べないのか?」
テーブルに着き、料理を前に蒼ざめている岡部に、薪が言う。

「・・少し、夢見が悪くてですね」
「見かけによらず、繊細なところがあるんだな」
「誰のせいで・・・っ!」
最後の言葉は、もごもごと、口の中でつぶやいた。

薪は、テーブルを挟んだ向こうで、一人掛けのソファに足を組んで座り、軽く握った片手のこぶしをアゴに当てて、岡部を見ている。

「出来立てのうちに食べておいた方がいいぞ。このフランクパイは、絶品だ」
「・・・・・・」
岡部は無言で薪を見つめ、それから、目の前の料理に手を伸ばした。

一口、口にして・・・
「・・美味い!」
それは、認めざるを得なかった。

「だろう?」
薪は、得意げな顔をする。
切り分けられたそれを、岡部は、また一つ、もう一つ・・と、手を伸ばし、結局、全て食べてしまった。

「ここで出て来る料理は、どれも美味いですが・・これも、コンピューター仕掛けで出来るんですか?」
「大抵の料理は、簡単なボタン操作で自動で作られる。ストックが無い物を食べたくなった時は、注文して、出来た物を送らせる場合もある」
「・・他の惑星から?」
「そうだ」

・・・輸送される間に、冷めてしまわないのだろうか。
そこは何か、特別な輸送手段があるのだろう。
金持ちって奴は・・・・・・・。

岡部が考えを巡らせていると、薪は言った。
「だが、今日のそのパイは、青木が作った。パイ生地から手作りだ」
「えっ!?」
岡部は、声を挙げた。

「自動装置で出来る料理や、外から送られる食事にも飽きたから、お前が料理してみろと言ったら、青木がその気になったんだ」
「へえ・・・」

「ここでは、ボディガードの仕事なんて、何も無いからな。せめて料理位しろと、最高級のキッチンシステムを備え付けてやった」
「・・・本来の仕事をしていない青木の負い目に付け込んで、物質と精神の両面から強制したんですね」
「最終的に、やると言ったのは、あいつだぞ」
「・・・・・・」

薪は、涼しい顔で話す。
「時々、僕の指示で、青木がこうして料理をする。最初の頃は、よく火傷をしたり切り傷を作ったりしていたが・・あいつは一度も、弱音を吐かなかった。元々、センスもあったんだろう。今ではすっかり手慣れたもので、こうして、まともな物を出すようになった」

岡部の脳裏に、青木の顔が思い浮かんだ。

「・・お前は、ロランドを知ってるか? 銀河系の末端に位置する、辺境惑星だ。そこから青木は、14歳の時に、僕の父に買われてきた」
薪も、何か遠くを見る目つきになっていた。

「そして、50年契約で、当時7歳だった僕に、仕えることになった。大人のボディガードは、いくらでも居たが。父は、もう少し年の近い人間が、僕の傍に居た方がいいと、考えたようだ」

「うん?」
岡部は、薪の話の中に、信じられない言葉が入っていたような、気がした。

「あの、今・・・50年って言いましたか・・?」
「そうだ。青木が64歳になったら、契約が切れて自由になる。月給は、故郷のロランドに送金しているらしい。この星に居ても、金を使う必要は無いしな」
薪は、事も無げに言う。

岡部は、驚きに目を見開く。
「いや、だって・・あと40年も薪さんに仕えるんですか? あの男は、結婚も出来ないじゃないですか!?」
「64歳になったら出来るだろう」
「って・・・!!」

岡部は、口を開けたまま、薪を見つめる。
それから首を振り、言った。

「信じられない!・・そんな馬鹿げた契約・・・。いくらもらったところで、そんな人生を選択するなど、有り得ない・・・」
何度も首を振り、ため息を付く岡部に、薪は言う。

「・・あいつは、人間と言うよりは、商品だからな」
「え?」
岡部は、目を上げて薪を見る。

「青木は・・金の為に、契約を交わした。仕事の為、金の為に、ここに居る。この10年間、あいつは一度も帰っていない。ここに居て・・僕の言うことを、全て聞くんだ。僕が何を言っても、決して逆らわない。いつもいつも・・。生身の人間だったら、断わることも、怒ることもあるだろう。だが、あいつは・・・」

静かな口調ながら、どこか・・熱を帯びた話し方のように、岡部は、感じた。

「あいつは、商品として、それを買った僕に、仕えているだけだ。だから、何も文句は言わない。あの時だって・・逆らえば良かったんだ。けれどあいつは、留まることを選んだ。僕が、契約上の主人だからと。人間として、本気で僕の相手をしているんじゃない・・・!」

「薪さん・・・」
岡部はそれ以上、何も言わなかった。

その頃。

青木は、自室の引き出しを開け、出した手紙を手にしていた。
『青木へ セシリアより 愛をこめて』
そこには、そう書かれていた。

青木の脳裏に。
10年前の光景が、よみがえる。

病気で寝ている少女と、その周囲で話をしている大人達。

『セシリアはどうなる?』
『よくないな』
『どこか設備のいい病院に入れないと』
『入院? どこにそんな金が?・・・』

そして、場面は変わり、セシリアが、自分を見ている。

『青木君。どこに行くの? どうして行っちゃうの?』
『遠い星だよ。でも良かったね。これで病院に入れるってさ。入院費も出るよ』
『いつ帰ってくるの? 帰ってくるんでしょう?』
『・・・うん。そのうちに』

セシリアは布団から手を伸ばす。
青木も、その手を掴む。
『青木君。早く帰ってきてね』

『・・・うん。きっとね』




「青木。手紙だ」
「・・ありがとうございます」

薪が差し出した封筒を、青木は受け取った。
そして自室へと、入っていく。

その様子を見て、岡部は薪に言う。
「このご時勢に・・手紙のやりとりなんてするんですね」
「セシリアからだ」
「セシリア?」

「青木によれば、幼馴染みということだ。・・身体が弱く、メールを打つこともままならないらしい。代わりに、こうして時々手紙が来る」

「と言うと、つまりは、青木の・・・」
岡部が言い掛け、薪はチラリと岡部を見やる。
それから視線をそらし、言った。

「詳しいことは知らないが・・。いずれにせよ、青木は、64歳になるまで彼女には会えない」
薪は、表情を変えずに、そう言った。

「・・・・・・」
岡部は何かを言おうとし・・そしてやめた。

薪は顔を上げ、言う。
「岡部。来い!」
またしても、有無を言わせず、薪は岡部を連れ出した。

広大な敷地を、電気制御された車で移動する。
着いたその先にあったのは・・・

「・・・・・・!」
岡部は、中に入ると、しばし言葉を失った。

そこは・・まるで宇宙船のような規模の・・
「スタジオ・・ですよね」
岡部は、やっと一言、そう言った。

「そうだ」
壮大なスケールのスタジオに、薪と岡部は、並んで立っていた。
岡部は、口をぽかんと開けたまま、周囲を見回している。

「これがメインスイッチだ。お前の声紋に反応するようになっている。過去のあらゆる曲を呼び出し、演奏することが可能だ。ロック音楽も入ってるぞ。・・『ロック・スター』岡部」
「う・・その話は出さないでくれますか? オレはロックは苦手なんです。特にハード・ロックやヘヴィ・メタルなんて聴くと、たちまち頭痛と吐き気がしてきて・・」

頭を掻きながら岡部は言い、隣りを見ると、薪は、微笑んでいた。
「新曲を作ることも自由だ。このスタジオは、全てオーダーメイドだ。お前の物だ・・岡部」

「薪さん・・あなたは・・・」
岡部は、大きくため息を付く。

「・・気に入らないか?」
薪は岡部を振り返って、言った。

「いや・・そうじゃなくて」
岡部は、薪の顔を見つめる。
じっとこちらを見ている、その目・・・

「いくら金が有り余ってるからと言って、こんな無駄遣いを・・」
「無駄かどうかを判断するのは、僕だ」
岡部の言葉をさえぎり、薪は言った。

「僕が、必要だと思ったから、作らせたまでだ。それに、金があることは、僕の取り柄と言っていい」
「取り柄・・?」
岡部が腑に落ちない顔をすると、更に、薪は言う。

「僕は、青木のような図体も持っていない。お前のように、音楽の才能があるわけでもない。その代わり、金があるんだ」
「・・・個人の持つ才能と、親が金持ちっていうのは別物だと思いますが」
岡部は遠慮がちに、しかし、明らかに不機嫌な様子で、言った。

薪は、済ました表情でそこに立ち、腕を組んで、言う。
「どこが違う? お前だって、その並ぶ者の無い音楽センスと、人を魅了する深みのある声は、親から受け継いだ物だろう」
「うっ・・! なんて理屈ですか。って言うか、さり気なく思いっきり人を持ち上げる言葉を入れてくるの、やめて下さいよ!・・反論出来なくなるじゃありませんかっ!」

岡部は、耳まで真っ赤になり、手で顔を隠しながら叫んだ。

「もちろん、持って生まれた物を、更に磨く努力をし続けてきたからこそ、今のお前があるのだろうが。だから僕も、金持ちの家に生まれたという才能を磨き、大いに使うべきだと思っている」
「・・・・・・」
岡部は、顔を覆う指の間から、薪を見た。
金持ちの理屈というのは・・やはり独特だ。

「岡部」
薪は、岡部を見つめ、言う。

「ここに居れば、お前の欲しい物は、何でも買ってやる。不自由はさせない。だから・・このまま、僕の傍に居てくれないか?」

「そうは言っても・・」
岡部も、薪を見つめて、言った。

「ローザも・・バンドの仲間も、オレのことを待っています。音楽ってのは、どれだけ立派な設備があっても、一人では出来ません。仲間が居て、愛する人が居て、聴衆が居て・・それで初めて、成り立つんです」

「・・・・・・」
岡部は、こちらを見ていた薪の瞳が、やや細まった・・ような気がした。

薪は、岡部から視線をそらし、言った。
「待ってる・・そうかな?」
「え・・?」

「最新のニュースをチェックしてないのか? お前のバンドは、お前がもう目を覚まさないと踏んで、別のギタリストを探しているらしいぞ」
「・・・っ、馬鹿な!」
「ローザという女性も、その件に関しては容認したようだ。お前が目覚めることを信じてはいるが、事務所に迷惑は掛けられないからと。お前が地球に戻ったところで、そこにはもう、代わりの人間が居るんだ」

「つっ・・!」
薪が声を挙げたことで、岡部は自分が、驚愕のあまり、薪の両肩を強く掴んでいたことに気が付いた。

「あ・・」
岡部は、手を離す。
そして、自分を睨む薪を残し、ドアに向かって歩き出した。

「どこへ行く!」
「どこだっていいでしょう! どうせオレは、この星から出られないんだ!」
薪は、岡部の背に向かい、叫んだ。

「どうすればいい!・・どうしたらお前は、ここに・・僕の傍に・・!」

薪は、一度顔を伏せると、傍らにあった機器のスイッチをいくつか押した。
それから岡部を追い駆け・・そして、岡部がドアを通る前に、自分が通り抜け、そのドアを閉めた。

岡部が気付いた時には、自分はスタジオの中に、薪は外に居て、透明なドアを挟んで立っていた。
「・・何をしたんです?」
岡部の問いは、防音のドアの向こうで、薪には聞こえない。

薪が、ドアの脇にあるボタンを押す。
すると、声が、互いの上にあるスピーカーから聞こえるようになった。

「ドアを、ロックした」
「えっ!?」
薪の言葉に、岡部は声を挙げる。

「エンドレスで音楽を聴けるように設定してやった。せいぜい楽しむといい」
「はあ!?」

薪は再びボタンを押すと、そこから去って行く。
その瞬間。
岡部が立ち尽くすそこで。

グワア~~~~~ッン!!
強烈なヘヴィメタの大音響が、スタジオの中に充満した。

「ぐああああああああっ!!」

岡部は、頭を抱えて座り込んだ。





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