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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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Scene6:空



薪は、自室のベッドに横になっていた。
身体を横に向け、目は伏せ気味に、どこかを見つめている。

ノックの音が聞こえた。

「薪さん・・よろしいですか?」
ドアの向こうから、青木の声がする。

「岡部さんはどちらに? 一緒ではなかったんですか? それから、先程、地球のブレインから薪さん宛に連絡がありました。何か指示をされたんですか?」
「・・・・・・」
薪は、返事をしない。

青木はドアを見つめ、そこに立っていた。
「薪さん、一体どうし・・」

バンッ!!

「ダッ!!」
突然ドアが外に開き、青木は思い切り額をぶつけて、のけぞった。

「青木・・」
青木は、赤くなった額を押さえながら、目の前に立つ薪に返事をする。
「な・・何ですか?」

「岡部は、スタジオ周辺に居る筈だ。余程の馬鹿でなければ、自分の声紋に反応することに気付いて、スイッチを切っているだろうから。まさか、まだ中で悶えていることは無いと思うが」
「も、悶え? え?」
「いずれにせよ、屋敷に戻る足が無い。迎えに行ってやってほしい」

「・・分かりました」
青木は、薪にそう言った。

「それから・・」
薪は下を向いて、言い掛ける。

「岡部に・・あんなことをしてすまなかったと。伝えてほしい」
「あんなって・・?」
青木が問うと、薪は、目を上げた。
上目遣いで、じっと青木を見つめる・・・薪。

それを見て、青木の瞳が、柔らかな光を帯びる。
「何があったか知りませんが、薪さんのお気持ちはお伝えします。ですが、薪さんから岡部さんに、直接謝られた方がいいのでは?」
「・・・・・・」

薪はまた、視線を落とす。
床を見つめて、何事か考えているようだ。

「そういうところは・・子供の頃と変わりませんね」
「うん?」
青木の言葉に、薪は顔を上げる。

「父君を怒らせた時とか。薪さん、よく、オレに代わりに謝ってくれと頼んだでしょう?」
「・・・・・・」
薪の脳裏に、かつての青木の姿が浮かぶ。

『分かりました。でも、薪さんも、後で父君に、直接謝った方がいいと思います』
『大丈夫ですよ。きっと許してくれますから・・』

「大丈夫ですよ」
青木は、言った。

「岡部さん、きっと分かって下さいます」




青木が迎えに行くと、岡部は、スタジオの外に居た。
道端のベンチに腰を降ろし、頭を抱えている。

車を降りて、自分に近付く青木の姿に、岡部は気が付いた。
「岡部さん。どうされました? お顔の色が・・」
「・・大丈夫だ」
岡部は、フーッ・・と、ため息を付き、言った。

ヘヴィメタの大音響にどっぷりと浸かり。
岡部は、真っ青になってあえいでいたが。

「やめてくれ! 音楽、止まってくれーっっ!!」
・・と、叫んだら、ピタリと止んだのだ。

「・・・・・・」
岡部は、周囲を見回し、それから試しに、
「ドア、開け」
ドアに向かってそう言ったら、難無く開いたのだった・・・。

「お迎えに上がりました。車に乗れますか?」
「・・もうちょっと待ってくれ」
岡部は、呼吸を整えながら、言った。

その様子を見て、青木も、岡部の隣りに座る。

「薪さんが」
青木が言う。

「薪さんが、あなたに、すまないと言っていました」
岡部は、顔を上げる。
青木が、穏やかに微笑んでいる。

「ま、どうってことない」
岡部は言うと、背もたれに背を付け、上を見上げた。
そこにあるのは、綺麗に晴れ渡った、水色の空。

岡部は、胸ポケットを探ると、煙草を取り出した。
「あ・・」
それを見て、青木も急いで自分のポケットを探る。

「あ、火なら持ってる。気を遣うな」
「そうじゃなくて」
青木が取り出したのは、ライターではなかった。

「・・何だ? これは」
「携帯用のダストケースです。使って下さい。周辺に灰を撒き散らされては困りますので」
「・・・・・・」
火種よりも先に灰皿を出されて、岡部は、吸う気力が失われていく・・・。

「ん?・・」
青木のポケットから、折り畳んだ紙片が、滑り落ちていた。
足元に飛んだそれを、岡部が拾ってみると・・・

「あ・・!」
青木は、すぐさま、それを取り返そうとする。
だが、岡部が目を通す方が、早かった。

2枚の紙が、重なって折り畳まれていた。
1枚は、セシリアの名前が書かれた封筒。
もう1枚は、その封筒と同じ柄の便箋。

青木は、岡部の手からそれを取り返すと、すぐに、ポケットに仕舞った。

「・・どういうことだ?」
岡部が、眉根を寄せて、青木の顔を見る。
青木は、岡部から視線をそらした。

「今のは、お前の幼馴染みからの手紙だろう。なのに・・便箋に何も書いてないのは、何故だ? 『セシリア』は、本当に居るのか・・・?」
「・・あなたには、関係の無いことです」
「薪さんは、お前がセシリアと手紙をやりとりしてると信じ込んでる。お前がそう仕組んだんだ。何か事情があるんだろうが、それはお前の『秘密』なんだろう?」

「・・・・・・」
「・・人のプライバシーを取引に使いたくは無いが。薪さんに『秘密』を知られたくなかったら、オレを、ここから出してくれ」

岡部は、真剣な顔で、青木に訴えた。
青木は、観念したように首を振り、話し出した。

「『セシリア』は存在します。いえ・・半年前まで、存在していた、と言った方がいいかもしれません」
「・・・?」

セシリアは、最新鋭の設備がある病院に入院していたが。
それでも、彼女の病気は、良くなるものでは、なかった。

それは、半年程前のこと。

セシリアの病状が悪化したという連絡が入り、青木は、薪に休暇を願い出た。
『駄目だ』
薪の返答は、にべも無かった。

『お前は、64まで僕に仕えると契約したんだ。職場を放棄すれば、契約違反になる。それでもいいのか?』
『薪さん・・・』
青木が薪に詰め寄ると、薪は青木から顔をそらした。

『お願いです。薪さん・・!』
青木が、薪の腕を掴みかけた、その時。

青木の目の前で、薪が崩折れた。
『薪さん! 薪さん!』
自分の腕の中の、その身体の熱さに、青木は驚いた。

「薪さんは・・高熱を出していました。オレには一言も言わずに。そして、付き添っているうちに・・」

青木君
セシリアは 昨夜遅くに息を引き取った
だからもう 入院費を振り込む必要は無い
セシリアは最後まで 君の帰りを待っていた

セシリアの家族から、短いメールが届いた、その夜。

青木は。
自室にこもり、声を上げて・・・泣いた。

「・・・・・・」
岡部は、言うべき言葉が、見つからなかった。

「手紙は・・ロランドの知人に頼んで送らせています。薪さんは、セシリアが死んだのを知らない筈です。今まで来ていた手紙が来なくなったら、すぐに気付かれてしまう・・。これはオレの問題ですから、主人である薪さんに、気遣いをさせたくなかったんです」

「気遣いって・・」
岡部は、信じられないという風に、首を振った。

「少しは気を遣わせたっていいだろう? あのワガママ小僧には、少し物事を教えてやった方がいい」
「・・薪さんに駄目とは言われましたが、別に身柄を拘束されたわけでもない。契約違反になったとしても、オレには賠償金を払えるような蓄えはありませんし。代わりにオレを訴えて刑に服させるようなことを、薪さんがするとも思えません」

青木は、じっと前を見つめて、言った。
「結局、オレが、ここに残ることを選んだんです。だからこれは、オレの問題です。セシリアの最期の時に・・オレが傍に居てやれなかったのも、オレのせいなんです。オレが・・・」

青木は、岡部に背を向け、顔を手で覆った。
岡部も、青木から目をそらし、遠くを見やる。

・・そう言えば。
薪は、言っていなかったか?

『あの時だって、逆らえば良かったんだ。けれどあいつは、留まることを選んだ』
『青木は、仕事の為、金の為に、ここに居る。商品として、僕に仕えているだけだ。人間として、本気で僕の相手をしているんじゃない』

「・・・・・・」
岡部は、手に持っていたままだった煙草を、ポケットに仕舞い、言った。

「お前は何故、この仕事を続けてるんだ?」
「・・・?」
青木が、顔を上げる。

「訴えられないと分かっているなら、いつだって辞められるだろう。セシリアの入院費の為にこの仕事に就いたのなら、もう、その金は必要ない筈だ。なのに何故?」
「それは・・・」

青木は、口ごもる。
言いたくないのか。
それとも、言うべき言葉が、青木の中に無いのか、分からないのか・・・。

「まあ・・オレには、どうでもいいことだがな」
岡部は、立ち上がった。

「お前にはお前の立場があるんだろう。だが、オレだって、この状況を打破したいんだ。一刻も早く、あの薪さんを説得するなり、スキを見付けるなりして、オレを、この星から脱出させてくれ」
「・・・・・・」

青木も立ち上がり、岡部と共に、車まで歩いて行った。





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