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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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Scene9:瞬き



屋敷に戻った岡部は、満ち足りた気分になっていた。
やはり、自分には、音楽しか無い。

愛する人の傍で。
信頼出来る仲間と共に。
もう一度・・音楽をやりたい。

それを阻んでいるのは、薪なのだが。
薪に対する嫌悪や不信感は、全くと言っていい程、無かった。

薪は、自分の歌を聴き。
心動かされていた。
それは、間違い無かった。

『お前の曲を、ずっと聴いてきた・・』
最初から、薪はそう言っていた。
それは、事実なのだろう。

そこに、父親の面影を重ね。

まだ10代の若さで。
両親を失い。
その肩に大きな物を背負って、青木と二人、この星で暮らす、薪。

自分の曲に、その歌声に、薪はずっと、力を得ていたのだろう。
音楽を手掛ける者にとって、自分の歌に救われる人が居る・・それは幸せなことだった。

明日の朝になったら。
薪ときちんと向き合い、話をしてみようと思った。

すぐに帰れないのであれば。
地球と連絡を取らせてもらうだけでもいい。

事務所の人間に、連絡を取るつもりは無かった。
そんなことをしたら、事は公になる。

クローンがそこに眠っていながら、自分が別の場所から連絡をしたら、混乱を招くだろう。
薪のしたことが明るみに出て、買収された医師や船長も、追及される。
それは避けたかった。

岡部はもう、薪をはじめ、関わった人間に、責めを負わせる気持ちは無かった。
ただ、自分を一番心配する人間を、安心させたかった。

薪に相談し、ローザにだけは、連絡を取らせてもらおう。
彼女も、事情を知ったら、最初はパニックになるかもしれないが。
長年マネージャーとして、幾多の困難を解決してきた女性だ。
きっと、時間を掛けて説明すれば、状況を呑み込むだろう。

彼女にだけは・・全てを話しておきたい。

薪は、ただのワガママな坊ちゃんではない。
きちんと話をすれば、道理の分かる人間だ。
岡部は今や、そう確信していた。

ただ・・薪を捕まえて話をするには、岡部は疲れ過ぎていた。
パーク内を引き回され。
慣れない絶叫マシンに乗り。
久しぶりに・・全身全霊を込めて、演奏し、歌った。

まずは眠り。
それから、明朝、薪と話し合おう。

ただ、その前に。
ニュースをチェックしよう。
岡部は、そう思った。

丸一日、ローザの姿を見ていない。
きっとまた、モニターに、自分が眠る傍らに付き添うローザの姿が、映し出されるだろう。

岡部はテレビモニターがある部屋に行き、スイッチを入れた。
地球の芸能ニュースを選択し、呼び出すと・・・

『大手レコード会社の女子社員が、白昼堂々、何者かに連れ去られました』
岡部は最初、それが自分の事務所であるとは、思わなかった。

『さらわれたのは、ローザ・サシェさん。彼女は岡部靖文氏のバンドのマネージャーとして有名で』
「・・・・・・!!」
岡部は、瞬きも忘れ、食い入るように画面を見つめた。

『事故に合った岡部氏に付き添っていたサシェさんは、一度自宅に戻ると言って病院を離れた後、連絡を絶っていました。更に、彼女が数人の男に拉致されたとの目撃情報が・・』

『今回の事件も、岡部氏の事故と関連があるのではないかという見方が強まっています。なお、問題の岡部氏は、依然昏睡状態で・・・』

呆然とモニターの前に佇む岡部の傍らに、青木が近付いた。
「岡部さん・・?」

「・・・どういう」
岡部の声が、低く、うなるように響いた。
「え?」
青木が、不思議そうな顔をする。

「・・どういうことだ」
「?・・岡・・」
岡部は、叫んだ。

「ローザに、何をした!!」

「な・・どう・・?」
戸惑う青木に、岡部は手を掛ける。
その胸倉を掴み、怒りに震えながら、うめいた。
「ローザが・・さらわれた。お前達は・・一体何を・・!!」

「ロー・・?」
青木は、困惑した表情をするばかりだ。

そこに、薪も現れた。
「まだ休んでいなかったのか? 一体・・」
前髪を手でかき上げ、ゆっくりと近付いてくる。

岡部は青木から手を離し、今度は薪の前に飛び出した。
「・・岡部?」
薪は、眉根を寄せて、岡部を見上げる。

「あなたは・・一体何をしたんです?」
「何の話だ?」
「ローザです。ローザがさらわれたんだ。・・あなたでしょう? 何をしたんですかっ!!」

「あ・・!」
薪の、何か思い当たる節があるようなその反応に、岡部の背後に立つ青木も、驚いた顔をする。
「薪さん?・・」

「違う・・。そうじゃない!」
薪は言った。

「違うって、何が違うんです!!」
岡部は、薪の顔を見つめ、叫ぶ。

「僕は、誘拐など指示していない。ただ・・」
「やっぱり。あんたのせいなんだ!・・そのせいで、ローザが・・!!」

ローザへの想い。
一度信頼した人間から、裏切られた思い。
荒れ狂う気持ちが、岡部を駆り立て・・・

バシッ・・・!!

岡部の目の前に、頬を叩かれた薪が居た。
だが、岡部は、手を挙げたりしては、いなかった。

薪は、呆然として、叩いた相手を、見つめている。
その視線の先には・・・青木が、居た。

「薪さん。こんなことはもう・・やめて下さい」
青木が、言った。
薪を見つめて。

「オレは・・あなたにずっと、仕えてきました。あなたの望みは、全て、叶えたいと思った。オレはどうなったっていい、そう思って。岡部さんのことも・・あなたが、父君の面影を追っていると分かったから・・きっといつか、気が済んだら、分かって下さるだろうと。でも・・」

「でも、もうこれ以上、何の関係も無い人達を、苦しめるのはやめて下さい。あなたには・・人を苦しめて平気な、そんな・・そんな人に、なってほしくないんです!!」

「・・青木」
薪は、青木を見上げ、見つめていた。

「あ・・」
そして、幾度か瞬きすると、首を振り、言い掛ける。

「そうじゃない。違うんだ。僕は、事務所のバンド活動を一時中止させるよう、しむけろと言っただけだ」
「そして・・ローザさんを・・」
「だから、話を聞け! 岡部の代役を据えるなんて、馬鹿げている・・だから少しの間、活動を停止させるように・・」

「ああ・・もういい!!」
岡部が、叫んだ。

そして、走り出した。

「岡部!」
「岡部さん!?」

岡部は、全速力で走っていた。
もう、ここには居られなかった。
ローザのもとに、行かねばならない。

「あいつっ・・! エアポートに向かっている!」
「なっ・・!!」
薪の言葉に、青木が目を見開く。

「岡部を止めろ!早く・・!!」
薪が叫ぶと同時に、青木は走り出していた。

「駄目です!・・岡部さん!! 待って下さい! バリヤが・・!!」

立ち入り禁止のランプが点滅する、その柵に向かって、岡部は走る。

「岡部さん・・!!」

岡部が、柵に手を掛けようとしたその瞬間。
見えたのは。
聞こえたのは。

美しいローザの姿と。
薪の、声だった。

お前のことも
僕が買った
だから岡部

お前はもう
この星から
逃げ出せないんだ・・・・・・





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