カウンター


プロフィール

かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

リンクは嬉しいので、ご自由にどうぞ♪


当ブログ拍手頁

最新の公開拍手コメのレスはこちら それ以前の公開拍手コメ&レスは、各記事の拍手ボタンを再度押していただければ読めます 鍵拍手コメにつきましては、拍手をいただいた記事下コメント欄にレスを書いております

所属してます♪


月別アーカイブ


最新記事


最新コメント


検索フォーム


 
Scene10:埋葬



その瞬間。
全ての灯りが消えた。

同時に点灯した非常灯の灯りを頼りに。
青木は、岡部に近付いた。

「岡部さん・・」

岡部は、柵に手を掛けている。
立ち入り禁止のランプは・・・・消えていた。

「薪さん・・」
青木と岡部は、同時に後方の屋敷を見やる。

その頃、薪は。
屋敷に繋がる制御室で、大きく息を付いていた。
室内にあるモニターは、並んで立っている青木と岡部の姿を、映し出している。

「薪さんは・・バリヤの緊急解除をしたんですね」
「緊急解除?」
岡部が問うと、青木が答える。

「通常、バリヤを解くには、パスワードの入力や、離着陸する船の情報確認など、いくつかの工程を必要とします。けれど薪さんは、それでは間に合わないと判断したんでしょう。それで緊急解除のスイッチを押した・・だから、周囲のライトが一斉に消えたんです」

岡部が辺りを見渡すと、うっすらと明け始めた夜空に。
わずかな非常灯の灯りだけが、ポツンポツンと浮かんでいる。

「・・・・・・」
岡部は、柵の取っ手に手を掛ける。
それは手動で、難なく開いた。

同時に。
周囲の灯りが、一斉に点いた。
バリヤは解除されたまま、それ以外の電源が復旧したのだ。
薪は・・モニターを見ながら、復旧スイッチを操作していた。

「帰れ・・ってことか」
岡部は、つぶやいた。

「岡部さん・・」
声を掛ける青木に向かって、岡部は言う。
「悪いが、船を貸してくれないか? 坊ちゃんの気が変わる前に、オレはここから発たせてもらう」

「・・あちらの小型船なら、非常時にいつでも発てるよう、目的地の照準だけ合わせれば、自動操縦で動くようになっています」
「大気圏の突入に失敗し、なんてことは無いだろうな?」
岡部は、微笑を浮かべながら、青木を見据えて言う。

「あ・・」
青木も、肩をすくめて、微笑み返す。
「通常では、あんな事故は有り得ません。ここから地球まで、危険地帯もありませんし」
「まあ、そうだな」

「薪さん所有の船なら、税関でも自動で信号を読み取るだけで、止められること無く通過します。着いたら、目的地を帰路とするだけで、自動操縦で戻ってくる筈です」
「・・大したもんだ」
岡部は首を振り、船に向かって歩く。

青木も、後を付いて歩き、言う。
「ローザさんのこと、早急に対処しますから。岡部さんのことも。岡部さんが地球に到着するまでに、クローンと入れ替われるよう、手配しておきます」
「おう。頼んだぞ」

岡部は、船のタラップに足を掛ける。
それから一度足を止め、振り返り。

「世話になった・・と言うべきかな。お前と、薪さんに」
そう言って、青木と、それから屋敷のある方角を、見つめた。

「岡部さん・・!」
「うん?」
青木はタラップの下から、岡部に向かって言う。

「こんなに・・迷惑を掛けておいて、言えることではないんですが」
そこにヒュンと風が吹き、互いの服がはためく。

「薪さんは本当に、あなたを慕っていたんです。だからどうか・・」
「風で良く聞こえない!」
岡部が叫ぶと、青木も、声を張り上げる。

「どうか・・薪さんを許して下さい・・!!」
「・・・・・・」
青木の言葉に、岡部は目を見開き、それから、穏やかな眼差しになって、言う。

「ああ。オレも・・・・!」
「え!?」

風の中、青木が聞き返したが、岡部は片手を上げて去って行き。
同時にタラップも閉じられた。

青木が見上げる中。
モニターを通じて、薪が見つめる中。
岡部の乗った船が、空に舞い上がる。

岡部の胸中に、ここで過ごした日々が、流れていく。

ああ。
オレも・・・・

嫌いじゃなかったさ。





青木が、屋敷に戻ると。
薪が、中庭に立っていた。

広い芝生の庭の真ん中で、夜明けの空を見上げて。

「薪さん・・」
青木は、薪の背後に立つ。

「行ったな」
「ええ」
互いの顔を見ずに、言葉を交わす。

「岡部さんは、何故・・エアポートに走って行ったんでしょうか。バリヤが張られていると、分かっていながら」
「・・・・・・」
「もしかしたら・・。岡部さんは、自分が無理にでもエアポートに入ろうとすれば、薪さんはバリヤを解いてくれると・・自分の身を優先してくれるに違いないと、信じていたのかもしれませんね」

「ふっ・・」
薪の口から、笑いがこぼれた。

「単に、誘拐された彼女の身が心配で、我を忘れたんだろう」
前を向いたまま、そう言う薪の。
その顔を、青木は覗き込んだ。

「!・・・」
青木は、何も言えなかった。
薪の頬からアゴへと、伝う物が見えたから・・・。

何も言わず。
その代わり。

薪は、大きく目を開いた。
背後から、青木の腕が伸び、自分の身体を捉えていた。

自分の両肩から胸に回された、青木の腕。
薪は、その腕に自分の手を掛け。

「うっ・・くっ・・」
嗚咽を漏らし、肩を震わせていた。




翌日。
ローザは、無事に送り返された。

そして、相変わらず眠り続ける岡部の姿が、全世界に向けて映し出されていた。
そんな、ある日のこと。

「どう? 容態は?」
ローザが、岡部の病室を訪ねた。

「あ、ローザさん。岡部さんは、変わり無いですね」
看護師の言葉を聞き、ローザは岡部に寄り添う。

「毎日毎日・・よく続きますね。マネジメントのお仕事もあるでしょうし、大変でしょう?」
「ええ、でも。こうして靖文さんの顔を見るのが好きだから・・なんでも無いわ」
ローザは静かに言った。

「じゃあ・・何かあったら、呼んで下さい」
そう言って、看護師がその場を離れようとした・・その時。

「・・靖文さん」
ローザが、つぶやいた。

「靖文さん?」
いつもと違う岡部の様子に、ローザはすぐに気が付いた。

岡部は、ローザの前で・・目を開けた。

「靖文さん!! 目を・・!!」
「ドクター!ドクター!早く来て下さいっ!」
看護師が、慌てて医師を呼びに行く。

「靖文さん!」
岡部の顔を覆っていた物を外し、ローザは叫ぶ。
「靖文さん!分かる?私よ!!・・ローザよ!!」

岡部は、ベッドの上に起き上がる。
そして・・目の前に居る彼女をじっと見つめると、手を伸ばした。
岡部の両手が、ローザの頬に触れ、ローザはぽろぽろと涙をこぼす。

「ああ。分かるよ・・ローザ。会いたかった・・」
「靖文さん・・!」
「心配をかけて、悪かった」
「靖文・・さん・・・」

駆け付けた人々の中。
二人は、しっかりと、抱き締め合った。




『先月の事故以来、昏睡状態だった岡部靖文氏が、意識を取り戻しました』
テレビモニターを通して、ニュースが流れる。

『まだ退院は先になるようですが、インタビューにも答えられる程元気で。この様子では、活動再開もそう先のことでは無さそうです』

薪はソファーに座り、このニュースを見ていた。
傍らに、青木が立っている。

岡部が立ち去ってから数日後。
地球のブレイン達によって、すり替えられ、この星に送り返されたクローン体は、まるで人間を埋葬するかのように、火葬され、丁寧に埋められた。

「僕は・・岡部を身代わりにしていた」
クローンの墓を前に、薪は花輪を手にして、そう言った。

「父が亡くなって・・僕は、それをずっと、受け入れられなかった。もう一度会いたいと・・会って言葉を交わしたいと、いくら金があっても、決して叶う筈の無い願いを抱き続けて・・」
「薪さん・・」
すぐ傍らに立つ青木が、薪を見下ろす。

「だから・・岡部を身代わりにした。何の関係も無いあいつを。でも、もういい。岡部は、僕に必要な言葉をくれた。それに、彼の歌を聴いて、父はきっと、人生を終えた後も、どこかで僕の幸せを願っていると・・そう思えた」
「・・・・・・」

「やっと僕は・・前に進める気がする。父の影から抜け出して・・何をすべきか、何が大切なのか・・・」
薪は、手にしていた花輪を、そっと、墓に供えた。

「だからこれは・・父との決別だ。ずっと、僕の中に残っていた、父の影との・・・」
薪と青木は、墓を見つめ、いつまでも、そこに立っていた。

そして今。
屋敷で。

『ええ。もうすっかり、大丈夫ですよ』
『皆さんには、随分ご心配をお掛けして・・』

テレビモニターの中で、岡部が、笑顔でインタビューに答えている。

「・・・・・・」
薪は、手を組み、無言で画面をじっと見ている。
青木も、何も言わず。

二人は、ただ黙って、岡部の笑顔を、見つめていた。





関連記事

コメント

コメントの投稿



管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

■この記事のトラックバックURL

⇒ http://kanon23.blog36.fc2.com/tb.php/796-c9c229c5

この記事に対してトラックバックを送信する(FC2ブログユーザー)

■この記事へのトラックバック

 | BLOG TOP |