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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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Scene11:満月



「・・え? この星の権利書を売った!?」
青木は、思わず叫んでいた。

「そうだ」
薪は、言った。

窓から日差しが降り注ぐ、屋敷のリビングで。
薪はソファーに座り、話す。

「この星だけじゃない。僕が父から受け継いだ物、全てだ」
「全て・・って・・!」
青木は、薪の前に立ち、口を開けたまま、それ以上の言葉を失っている。

「心配するな。だてに一連の事業の様子を見てきたわけじゃない。父の事業は、それぞれ、信用出来る人間に、正当な値段で引き継がせた。この先も、父の意思が受け継がれ、事業は全て支障無く存続して行くだろう」
ことも無げに、薪は言う。

「事業以外の資産も、全て売却した。一週間後には、ここを明け渡さねばならない。相応の準備をしろ」
「あ・・」
青木は、やっと声を出せるようになり、言った。

「・・何で、何でそんなことを! 一体その金はどうするんです!!」
「岡部にやる」
青木の叫びに、薪は即座に、答えた。

「は!?」
青木は、口を開けたまま、幾度も瞬きをしている。

「岡部は、彼女と結婚するそうだな」
薪は、何食わぬ顔で、横を向き、言った。

「ニュースで公表されていた。これは、僕からの結婚祝いだ」
「けっ・・!!」
青木は、再び絶句した。

千個の星が買える程の資産を、他人の結婚祝いに贈る人間が、どこに居るだろう・・・。

「僕はもう、何も要らない」
薪は座ったまま、窓の向こうを眺めている。

「父はきっと、僕の幸せを願っている。そう思った時、何が僕の幸せか考えた。そして僕は、自分の幸せに、父の資産は必要無いと分かった。事業も、今更僕が出て行く必要は無い、今、実際に動かしている人間にゆだねるべきだと」
眩しそうに目を細める、薪。

「そして・・出来た金は、岡部にやりたいと思った。岡部に、僕がしてやれることは、これ位しか無い。岡部には、幸せになってほしい」
「薪さん・・・」

青木が見つめるその先で。
光を受ける薪の顔には、穏やかな笑みが浮かんでいた。




「・・今日で、この星ともお別れですね」

青木が屋敷を振り返り、名残惜しそうに言う。
手荷物は、二人合わせて、トランクが2つ。
それに、ケースに入ったギターが1つ。

「青木」
呼ばれて、青木は顔を戻し、薪を見やる。

「お前、大事なことを忘れてないか?」
「え?・・」
青木が、薪を見下ろすと、薪は言う。

「僕はもう、お前に給料は払えないぞ。岡部に全て寄付したからな」
「あ・・!」

「お前は今日から、失業者だ。まさか、保険位入っているだろうが」
「保険、ですか?」
「そうだ。64歳までに、雇い主に何かあって給料が払えなくなった場合の補償だ。それ位、契約時に考えておいたろうからな」

「・・・・・・」
青木は、黙り込んでいる。

「あの・・」
青木が言い掛けると、薪は、口元を緩めた。

「安心しろ」
「え?」
「お前の名義で、僕が掛け金を払い込んでおいた」
薪の言葉に、青木は、目を見開き、次いで頭を下げた。

「あ・・ありがとうございます!!」

深々と礼をする青木に、薪は言う。
「今まで通りというわけにはいかないが、相応の金が、お前の手元に月々振り込まれることになっている。お前はその金で、好きなところで、好きなことをして、生きて行けばいい」

「あの・・」
青木は頭を上げ、薪をじっと、見つめる。

「この機会に、実家に帰ったらどうだ? 確か、お前には母親が居ただろう? これまで寂しい思いをさせたんだ。これからは一緒に暮らしてもいいだろう。それに・・」

薪の口が、彼女の名を、形作った。
「セシリアに・・会いに行ってやるといい」

「・・薪さん」
薪の顔を、青木は見つめる。
薪は、セシリアが病院に居ると思っているのだ・・

だが、続いて出た薪の言葉に、青木は、心底驚いた。

「お前は、64になるまで、彼女の墓参りに行かないつもりだったのか?」
「・・・・・は!?」

「彼女のことは、残念だったな」
「薪さん・・一体、いつ・・・?」
青木が、目をパチクリさせていると、薪は、言った。

「お前が帰郷を願い出た時、僕は、熱を出して倒れた。熱が引いてすぐ、彼女が入院していた病院に問い合わせて確認を取った。セシリアの実家宛に、見舞金も送った。それで、立派な葬式が出せた筈だ」
「あ・・あ・・」
青木は、今度は、口をパクパクさせている。

「もちろん、彼女の家族には、お前にそのことは伝えないようにと、言っておいた。そのことで、お前に変な気を遣われては、仕事に差し障りがあるからな」
「・・・・・・」

青木は、二の句が継げなかった。
この半年間、セシリアの死を悟られないようにと、自分なりに、主人に気を遣ってきたつもりだったが。
それが全て、薪にはお見通しだったとは・・・。

薪は、上目遣いで青木を見て、肩をすくめる。
青木は深呼吸をすると、改めて薪を見つめ、言う。

「あの・・薪さん。その保険金ですが、オレの自由に使うわけには、いかないんです」
「? 何故だ? セシリアの入院費は、もう必要無い筈だろう」
「そうなんですが・・。セシリアの父親から、金はオレの実家に送ることも出来ると言われ、そのようにしたんです。そしたら、母がその金で、特養に入りまして」

「とくよう?」
「特別養護老人ホームです。しかも、最高級の」
「・・・・・・」
薪と青木は、しばし見つめ合う。

ふーっ・・と息を一つ吐くと、青木は、話し始めた。

「オレが、セシリアの為に、母親を残して故郷を離れたことで、母はずっとオレに恨み言を言い続けていました。今度はその金で楽をしたいと言う母に、オレは報いるべきだと思いました。そして母は、メトロという惑星の特養に入居したんですが、そこでの生活が、大変気に言ったらしく」

「ロランドの生活とは、天と地程の差があります。母は舞い上がって、二度とロランドの貧しい生活には戻りたくないと言っているんです。それまで触れたことも無かったパソコンにも挑戦して、メールを送ってきたりもしました。添付された写真には、イケメンのヘルパーさん達に囲まれて、実に楽しそうな母が写っていました」
「・・・・・・」

「・・そんなわけで、この半年間は、メトロに居る母に給料を全額送っていました。母は、オレが戻る必要は無いから、金だけは送り続けろと言っています。なので、薪さんが掛けておいて下さった保険金は、今後も、母に送金させてもらいます」

青木の話を、黙って聞いていた薪が、口を開いた。
「それなら・・自分の生活費は、何か仕事を見つけて、自分で稼ぐんだな」
「そうですね」
青木は、ぽそりとつぶやいた。

薪は首を振り、向こうを向いて、それから何かを思いついたように、フフッ・・と、笑う。
「何か・・?」
青木が尋ねると、薪は言う。

「僕が全財産を売って、その金を岡部にやったことが、そろそろマスコミに流れる頃だ」
「ええ・・」
「父が亡くなった時、僕に近付いたハイエナ達が、今度は、岡部のもとに群がるだろうな」
「薪さん?」

「僕のもとから、逃げ出したりするからだ」
「・・・・・・」
ほくそ笑む薪の顔を見て。

金を差し出したのは、本当に岡部さんに幸せになってほしいからですか?
それとも、実は嫌がらせだったんですか?
・・と、青木は、薪に聞いてみたい気がした。

「まあ、岡部には、敏腕マネージャーが付いているからな」
そう言って、薪はギターケースを手に、歩き出す。

「あ、あの・・薪さん!」
青木が、薪を呼び止めた。

「薪さんは、この後、どうされるんですか?」
薪は足を止め、言う。
「さて、どうするかな」

薪は、前を見つめている。

「僕は、自由だ。何にも束縛されない。何をすればいいか、これから決めればいい」
その声は静かだが、どこか、自信に溢れている。

「薪さん・・」
青木は、そんな薪を見つめ。
それから、真剣な面持ちになり、言った。

「薪さん。もし、あなたが言うように、好きなところで、好きなことをして、生きて行っていいなら・・」
青木は、一度言葉を呑み込み、それから、キッパリと言った。

「オレはこれからも。薪さん、あなたの傍に居ます」

薪は、振り返る。
その目は、大きく見開かれている。

「・・いいですか?」
青木の問いに、薪は、じっと青木を見つめ。

「どうして・・」
つぶやくように言い、それから改めて、ハッキリと言った。

「どうしてだ!? 僕はもう、お前に金は払えないんだぞ!」
「・・・・・・」
青木は、頭に手をやり、困ったような表情だ。
そんな青木を、薪は、呆れたように見つめていたが。

「・・仕方ない」
薪は、言った。

「え?」
「仕方ないだろう。付いて来い」

薪の言葉に、青木は、みるみる笑顔になる。
「はい!!」

大きな声で返事をする青木に背を向け、薪は再び歩き出す。
青木は笑顔で、トランクを両手に持ち、薪の後を追う。

青木の脳裏に、薪と初めて出会った時の光景が、浮かんだ。

『彼が今日から、お前の友達になってくれる青木君だ。挨拶をしなさい』
そう父親に言われた、7歳の少年は。
まるで相手を値踏みするかのように、両腕を組んで立ち、青木を睨み上げていた。

金持ちのいたいけな坊ちゃんを想像していた、14歳の青木は、意外な登場の仕方の薪に、一瞬驚きつつも、笑顔で言った。
『青木です。どうぞよろしく』

『・・・・・・』
薪は、腕をほどき、青木の笑顔につられるように、表情を緩め・・やがて、笑顔になった。

あ・・。
青木は、その時、気が付いた。
薪が、笑うと、まるで天使のように、美しい少年だということに。

薪さん。
あなたは、ご存じないでしょうけど。

オレは、あの瞬間から。
あなたから、目が離せなくなった。

毎日、あなたの、目まぐるしく変化する表情に魅せられ。
その言動に、振り回され。
そして・・その中に流れる、純粋さに惹き付けられて。

そう・・ボディガードらしく、いかめしい顔をしているなんて、出来るわけが無い。
この10年間、あなたの傍に居るだけで。
日々、微笑まずにはいられない、思わず笑顔にならずにいられない。

だからオレは・・・・・・・

近付く青木の足音を背に、薪は前を向いたまま、微笑んでいた。
空を見上げる。

真っ青な空に。
ぽっかりと。

白く丸い月が、浮かんでいた。





夢の行方 終






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