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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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※清水先生の作品とは、関係ございません。


オリジナルストーリー

「百花繚乱」


前編




その日は。
朝から、いつもと違う、何かが起こりそうな、予感がした――――。

薪はその日、朝の迎えを呼ばなかった。
今日は少し歩きたい。
ふと、そう思ったからだ。

薪の出勤は、いつも早い。
第九メンバーの誰よりも先に、職場に到着する。
爽やかな朝の空気を吸いながら、薪は、真っ直ぐに前を向いて歩いていた。

気付くと、いつの間にか、隣りに並んで歩く者が居た。
大きな靴が目に入り、歩きながら、薪は隣りを見上げる。

颯爽と歩きながら、こちらに向かって微笑むのは・・・

「おはようございます」
柔らかな低温が響く。

「・・今井、おはよう」
薪は言葉を返すと、顔を前に戻し、歩き続ける。

「早いですね」
今井は、薪に歩調を合わせながら、話し掛ける。
「お前こそ。いつもより大分早いな」
薪がそう言い、二人は、赤信号の前で立ち止まった。

「ええ・・・」
言いながら、今井は、薪の顔を見ている。
「・・?」
視線を感じて、薪は顔を上げる。

すらりとした体躯を、仕立てのいいスーツに包んだその男は、皆が認める、第九で一番モテる男だ。
かと言って、女にうつつを抜かすわけでもなく、着実に仕事をこなし、同性からも慕われている。
上司である薪の目から見ても、今井は、安心して仕事を任せられる、デキる男だった。

今、その男が目の前に立ち。
端正な顔を、やや紅潮させて、こちらをじっと、見つめている・・・。

「・・実は、今日は、途中で薪さんのことをお待ちしていたんです。どうしても、お話したいことがあって・・・」
「?・・」
薪は、眉を寄せ、いぶかしげな顔をする。

「何だ? 今手掛けてる事件のことで何か?・・いや、それなら、向こうに着いてから聞く」
今井が早朝出勤して、薪を待ち構えているとは、ただ事ではない。
緊急の用件なのだろうと、薪は推測する。
だが、捜査のことであれば、公道で話題にするのは避けるべきだった。

「いえ。捜査のことではありません」
今井が言い、薪は、やや首をかした。

信号が青に変わり、人々が歩き出す。
けれど、薪と今井は、そこを動かず、薪は、今井の言葉の続きを待っていた。

今井は、薪に向かって口を開く。
「薪さん」
・・微笑んでいたその顔が、今や、真剣な眼差しに変わっていた。

「薪さん。オレは・・あなたを愛しています」
真っ直ぐに薪を見つめ、静かに・・けれどきっぱりとした口調で、今井は、言った。

「・・・・!」
薪も、今井を見つめる。

今井は、薪に視線を据えたまま、続けた。
「ずっと・・迷っていました。この気持ちを伝えても、あなたに迷惑を掛けるだけだと。でも、あなたを見てきて、その姿が愛しくて・・どうしても、伝えずにはいられませんでした」

今井は、そこで一度視線を外し、下を見下ろすと、ふっ・・と息を吐いた。
それから再び顔をあげ、少し照れたような笑みを浮かべて、言った。

「驚くのも無理は無いと思います。オレ自身、最初は自分の気持ちが信じられませんでしたから。まさか・・男性であるあなたを愛することになるとは、思ってもみませんでした」
「・・・・・・」
薪は何も言わず、今井を見上げている。

「出来ることなら、これから先、上司と部下という枠を超えて、あなたと共に歩んでいきたい・・・オレは、そう思っています」
今井は薪の大きな瞳を見つめ、視線をそらすことなく、言い切った。

「ですが、今すぐに返事が欲しいと言って、あなたを困らせるつもりはありません。しばらく考えてみてほしいんです。そして、ほんのわずかでも、オレの気持ちに応えてくれる可能性が見えたら・・・オレのところに来て下さい。オレは、いつまでも待ってますから」

一言、一言を噛み締めるように、今井は、言う。

「・・ですが、もし、あなたがオレの気持ちを受け入れる気が無いなら、何も言わずに、この件は忘れて下さい。オレは、これまでと変わらず、あなたの部下として、精一杯務めていきます」

言い終えると、今井は、薪に向かって一礼する。
二人の周囲を、人々が行き交う。

今井は顔を上げると、明るい表情を見せ、
「参りましょうか」
薪を促した。

渡り始めると同時に、信号が点滅を始め、二人は足早に交差点を横切る。
そのまま無言で、薪と今井は、第九の庁舎へと、並んで歩いて行った。






室長室で、薪は、ふう・・と、ため息を付いた。
時刻は昼を過ぎ、第九メンバー達はそれぞれに、捜査の合間を見て、昼食を取っている筈だった。

薪は、机に向かって座り、今井がまとめた報告書を手にしていた。
いつもどおり、いや、いつも以上に、完璧な仕上がりだった。

今井の仕事ぶりは、全く普段と変わらず、朝、あんなことがあったとは、信じられない程だった。
そんなことで、仕事が左右される男ではないのだ。

だが、自分を待ち受け、告白するまでには、相当の決意があったに違いない。
周囲に人が居る中、堂々と、自分の気持ちをストレートに伝え、それでいて、相手への配慮も忘れない。
実に今井らしい告白だった。

薪が、朝の出来事を思い返していると、ドアをノックする音がした。
「入れ」
「失礼します」

ドアが開き、覗き込んできたのは、第九のムードメーカーとも言える男の顔。
「弁当買ってきました」
「曽我。ご苦労だった」

曽我は、ニコニコしながら室長室に足を踏み入れると、弁当の入った袋を手に、薪の傍らに立つ。
「そこに置いていけ」
「はい」

返事をして、弁当を薪の机の隅に置くも、曽我は、そこに立ったままだった。
「・・?」
薪は、書類を手にしたまま、曽我を見上げる。

「!?」
曽我は、薪と目が合うと、慌てた様子で視線をそらす。
そして、きょろきょろと辺りを見回し・・

「あ、えーと・・その、お茶でも入れて行きましょうか」
そう言って、机の向こうの棚に並ぶポットやカップに近付いた。

「結構だ。自分でやる」
薪がそう言うにも関わらず、曽我はお茶の用意を始める。
「・・・・・・」
薪は肩をすくめると、書類に視線を戻した。

そんな薪の様子を、曽我は急須を手にしながら、ちらちらと見やる。
「お茶、ここに置いておきますね」
「・・・・・・」
薪は、完全に曽我を無視している。

「薪さん、オレ・・・」
曽我は、自分に全く反応せずに書類を眺めている薪に向かい、おずおずと切り出した。

「薪さん・・あの、こんなこと言っちゃうと、オレのこと、ヘンタイだと思うかもしれないんですけど」
曽我は、机を挟んで薪の前に立ち、一度深呼吸してから、言った。

「オレ・・薪さんのこと、好きになっちゃったみたいなんです・・!」

「・・・・・・」
薪は、書類に向かったまま、幾度か瞬きをする。
それから、ゆっくりと視線を上げた。

「あ・・・」
薪と目が合い、曽我は、またも、うろたえたように視線を泳がせる。
けれど、覚悟を決めたのか、一度目を閉じ、また開くと、今度はしっかりと、薪を見つめた。

そして言う。
「そのー・・オレ、薪さんを好き・・みたいです」
「それはもう聞いた」
薪が言った。

「はい」
小さく言って、それから、曽我はようやく、笑顔を見せた。
「オレ、変ですよね。薪さんを好きだなんて。いっつも怒られてばっかだし。決してオレ、Mっ気があるわけじゃないんですけど」
へへ・・と笑いながら、曽我は頭を掻く。

「何て言うのかな。薪さんはいつも厳しいけど、それって、捜査に対する正義感とか、部下に対する愛情とか、そういう物から来るんだって、分かるんですよ。怒られた時はビビるけど、後から、薪さんは正しいって、いつも思わせられるんです」

素直な言葉と、おどけた笑顔。
時に見当違いな言葉を吐くこともあるが、その存在は、殺伐とした事件の捜査に追われる第九の空気を、いつも和ませている。

「そして、その度に、薪さんは凄いなって、とても敵わないって思うんだけど。そのうち、そんな薪さんの、オレが癒しになれたらなー・・なんて」
曽我は、改めて薪の瞳をじっと見て、言う。

「自分でも、身の程知らずなこと言ってるのは分かってます。薪さんみたいな天才に向かって、オレってば何言っちゃってんのかなって・・」
「・・・・・・」
何も言わない薪に向かって、曽我は続けた。

「でも、天才程、実は孤独だったりするでしょう? 余計なお世話かもしれませんけど・・オレは、薪さんの傍で、馬鹿みたいに笑って、薪さんを癒せる男になりたいんです」

薪は黙ったまま、曽我を見上げている。
曽我は、じっと薪を見つめると・・・

「お邪魔しました!」
机を挟んで、薪に深々と礼をし、顔を上げ、回れ右をして、部屋を出て行った。






薪は、一人室長室で弁当を食べ終えた。
傍らには、空になった湯呑茶碗。

曽我が入れていったお茶を、薪は飲んだ。
飲みながら、曽我のことを考えた。

一見空気が読めないようで、実は、周囲に温かい空気を作り出している男。
決して人並以上の容姿ではないが、それを卑下することも無く、愛想を振り巻きながら仕事をこなし、後輩の面倒見も良い。
今回も、曽我らしい、相手を構えさせることの無い、穏やかな告白だった。

薪は立ち上がり、弁当の容器や茶碗を片付け、部屋を出た。
腕時計を見る。
小池が、モニタールームで、薪を待ち受けている筈だった。

部屋に入ると、正面のモニターには、既に画像が映し出されており、小池はその画面に向かって立っていた。
薪に背を向け、片手を上げ、その人差し指を立てて動かしている。
画面を指したり、下に向けたり、盛んに指を動かしながら、小池は、捜査報告の手順を確認しているようだった。

薪がそっと近付くと、小池は、何やらぶつぶつとしゃべっていた。

「・・・です。オレは・・なので・・薪さんの・・・」
「僕の、何だ?」
「う、うわああああああああっ・・・!!」

背後から、首筋の辺りでささやかれたその声に、小池は驚いて飛びのいた。
「ま・・薪さ・・いつの間に・・!」
「準備は出来ているようだな。関係部署を招いての報告会議は、1時間後だ。その前に僕がひととおりチェックを済ませる。すぐに始めるぞ」

「んっ・・・」
小池は、余程驚いたのか、まだ胸を押さえて、息を呑んでいる。
「何をしている。早くしろ!」
「・・はい」

小池は、呼吸を整えると、モニターを背にして立った。
手元のシステムを操作しながら、説明を始める。
その前には、薪が一人。
椅子に座って脚を組み、腕も組んで、小池を見上げていた。

「小池!」
「はい!」
「その根拠は何だ! 根拠を先に述べろ!」
「はいっ!!」

小池は手にした書類を見つめ、画像を少し巻き戻し、説明をやり直そうとする。
「モニターまで戻す必要は無い! 先に進めろ!」
「はいっ!・・・」

薪の罵声を浴びながら、小池は、捜査報告の事前チェックを、終えた・・・。

「よし。あと40分で会議が始まる。資料は人数分揃っているだろうな」
「はい」
「では、後は任せたぞ」
「え・・」

席を立ち、背を向ける薪に、小池が驚いた様子を見せる。
「あの・・薪さんは同席されないんですか?」
「僕は、この後、総監と会わねばならない。一度第九の執務室に戻り、それから出る」

「・・・・・・」
無言になる小池に、薪が言う。
「入れ替わりに、岡部や今井が来る。それに、ここまで出来ていれば、僕が不在でもお前は問題なく捜査報告をやり遂げるだろう。少なくとも、僕は、お前に任せることで、不安を感じてはいない」

「・・薪さん」
小池が、呆けたように薪を見つめる。
散々に小池を怒鳴った薪が、いつの間にか穏やかな表情で、小池を見ている。

小池は、手にしていた書類を傍らに置くと、薪の傍に歩み寄った。
「実は・・この報告会議が終わってからにしようと思ってたんですが」
「うん?」
見上げる薪の顔を見て、小池は口を開く。

「やっぱり、今、済ませておかないと、会議に集中出来ない気がするんで」
「確かに。捜査報告をする本人が、会議中に席を立つのは感心しないからな」
「え・・?」
「事前に済ませておけ」

薪があごをしゃくった先には・・・

「あ・・違います! トイレじゃないっすよ!」
小池は、慌てて手を横に振る。

「どちらでもいい。僕はもう行くぞ」
薪は、その場を去ろうと足を踏み出した。

「薪さん・・!」
小池が、思わず薪の腕を掴んだ。

「・・・・・・」
薪が、じろりと小池を睨み付ける。
慌てて謝り、蒼白になって手を離す・・ところだろう、いつもの小池なら。

だが、小池はその手を離さなかった。
「何のつもりだ」
鋭い視線を浴びせる薪に、小池は、真剣な顔で言った。

「薪さん」
小池の細い目が、精一杯に見開かれる。
そして、続く言葉に、薪の目も、驚きに見開くこととなった。

「薪さん、オレ・・・薪さんに惚れました・・!」






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