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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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後編



岡部は、薪を家まで、車で送り届けるところだった。

第九メンバー皆の抱えている捜査に区切りが付き、薪と岡部は、仕事帰りに飲んできたのだ。
この日の薪は、それ程飲んでいたようにも見えなかったが、助手席の薪は、まるで酔ったように、うつらうつらとしている。

「薪さん。シート、倒した方がいいんじゃないですか? 薪さん・・?」
「んー・・」
岡部が声を掛けるも、薪は目を開けず、そのまま・・

「わっ!・・」
岡部は、思わず声を上げる。
薪の頭が、自分の腕にもたれてきた。

「ちょっ・・薪さん、シート・・」
岡部は言いながら、助手席のシートを操作しようとするが、運転中では、それもままならない。

「はあ・・」
岡部は、諦めたようにため息を付く。
だが、腕に寄りかかられたままでは、運転が危ない。
岡部は左腕を上げ、薪の頭を抱えると、自分の膝に乗せた。

「どうしたんですか? 薪さん、何だか今日は、様子がおかしいですよ」
「ん・・」
薪はそのまま、動かない。

薪の小さな頭が、岡部の膝の上に乗っている。
岡部は、なるべく揺らさないように、丁寧に運転しながら、前を向いていた。

信号待ちで止まり、岡部は、ちらりと下に目をやる。
無防備な、薪の寝顔・・・

「薪さん・・」
言いながら、岡部はハンドルから片手を離すと、その手でそっと、薪の頭に触れた。

「薪さん。何であなたはいつも、そうやって、溜め込んじまうんです。オレに出来ることは、こうして、あなたの傍に居るだけで・・・」
窓から入り込む明かりが、薪の長い睫毛の影を作る。

「そう。オレに出来ることは、あなたの傍に居ることだけだ。そしてオレは・・この先もずっと、あなたの傍に居たいと思っています」

睫毛が動き、薪は、かすかに目を開いた。
だが、薄暗い車中で、岡部は気付かない。

「分かっています。あなたにとって、オレは、ただの部下の一人に過ぎない。でも、それでいいんです。オレは、その立場を、誇りに思っています。これから先も、ずっと、あなたの傍に居ます」

岡部の大きな手の平が、薪の頭を、そっと撫でる。
そして岡部は両手をハンドルに戻し、車を発進させた。

薪は、そっと目を開けて、岡部に気付かれないように、上を見上げる。
明かりに照らし出された、その顔は。
ヒゲをたくわえ、一見無骨で、けれどとても繊細な内面を映し出している。

その落ち着いた存在を、薪は確かに、感じていた。






「もう大丈夫だ。心配ない」
薪はそう言い、車を降りると、しっかりとした足取りで車を離れる。
そんな薪の後姿を見送り、岡部は、その場から去った。

薪は、マンションのエントランスに足を踏み入れる。
すると・・・

「・・!!」
突然現れた部下に、薪は驚いた表情を見せる。

「何をしている」
薪が声を掛けると、長身の部下は、薪の傍らに立ち、言った。
「ずっと・・待ってたんです。薪さんに、どうしても話したいことがあって」

「・・・・・・」
薪は、小さくため息を付き、部下を見上げる。

「何だ」
「ここでは何なので・・部屋に、上がらせてもらえませんか?」
「お前を部屋に上げる義理は無い。話があるなら、今ここで話せ。ここでは話せない捜査のことなら、明日、出勤してからにしろ」

「・・・・・・」
薪の言葉にも、青木は、口を開こうとしない。
薪は、ぷいと横を向き、エレベーターに向かった。
青木も、後を付いてくる。

二人でエレベーターに乗り込む。
薪は前を向いたまま、無言だ。
青木も無言で・・だが、その瞳は、薪を見ている。

エレベーターを出ると、薪は真っ直ぐ自分の部屋に向かい、そして、ドアの前に辿り着くと、ドアロックに手を伸ばした。

「薪さん・・こっちを向いて下さい!」
傍らで青木が言うが、薪は答えない。

「薪さん・・!」
「っ!!」
青木の行動に、薪は目を上げる。

青木は、ドアに伸ばされた薪の腕を掴むと、手首を押さえ、ドアに押し付けたのだ。
「どういうつもりだ!」
薪が、青木を睨み付ける。

けれど青木は構わず、薪の片手を押さえたまま、薪の顔を上から覗き込む。
薪は、もう片方の手で持っていたカバンで、青木を制しようとしたが、青木はすかさずその手も掴み、カバンはあえなく床に落ちた。

「薪さん。知ってるんでしょう?・・オレの気持ち」
「・・何のことだ?」
薪は、顔を横にそむける。
その横顔に向かって、青木は言う。

「オレは・・ずっとあなたのことを、追い駆けてきました。まだ見ぬうちからあなたに憧れ・・そして、実際に会って共に捜査をして、あなたのずば抜けた有能さに魅了された。更には、あなたの内なる弱さも知って、オレは、力になりたいと思った。あなたに認められることが、オレの喜びであり、あなたの力になれることが、オレの・・生きがいになっていたんです」

「・・・・・・」
薪は、青木から目をそらしたまま、その言葉を聞いていた。
薪の耳元で、青木の息遣いが聞こえる。

「第九が解体されると・・あなたが離れてしまうと、そう思った時。オレは、衝撃を受けた。そして、知ったんです。あなたさえ居れば、オレは、生きていけると・・!」
青木は、薪の動きを封じていた手を緩める。
腕を降ろし、自分の手首に触れる薪に、青木は言う。

「すみません。あなたがこっちを見てくれないから、つい・・。痛かったですか?」
先程までの強引な態度は急に陰をひそめ、青木は、主人の顔色を伺う飼い犬のような表情を見せる。

「・・随分、勝手ですよね。自分でも分かっています。あなたが居れば、オレは生きていける。そんな一方的な主張で。でも、薪さん」
青木は、薪を見下ろし、その顔を見つめた。

「オレは・・あなたと共に、この先の未来を、生きていきたいんです・・!!」

「・・・・・・」
薪も、青木を見上げる。

「オレは、あなたが居れば生きていける。そして、あなたにも、オレと共に生きて良かったと、そう思わせる・・絶対に」
薪は、青木を前に、目を伏せた。
「薪さん・・」

青木は、落ちたカバンを拾うと、薪の手に握らせた。
「今夜はこれで、失礼します」

青木が目を上げた時、青木は既に、背を向けていた。
ずっと、薪の傍らで、薪を振り回し、薪の心を照らしてきた・・部下。

薪はすぐにその長身の後姿から目をそらし、ドアロックを解除して、部屋に入った。






『それぞれに、個性と魅力を備えた8人の男達。あなたは、誰を選びますか?』

耳に流れるナレーションを聞いて、薪は一度、ヘッドホンと眼鏡を外した。

「ふう・・・」
息を吐く薪に、傍らに居た男が、声を掛ける。
「どうでした? 薪さん」
「そうだな」

薪は、座ったまま、手元にある書類に、何かを書き込んだ。
「時々、画面のキャラクターの口の動きが、ヘッドホンから流れるセリフとずれる。それに、画像の色調も不自然に変わることがある。これは、要改善だな」

「感想は、それですか」
「他に何がある? 今回、僕がこの試作品のモニターを依頼されたのは、そういった、システムの不具合を見つける為だろう」
「それだけじゃないと思いますけど・・・」

ここは、薪と青木の部屋。
リビングの一角で、薪は椅子に座り、手元に置かれた小さなオーディオ機器のような装置を一時停止させ、ヘッドホンと眼鏡を手にしていた。

これは、開発されたばかりの、体感型ゲームだ。
ゲーム機器や、ケータイ、パソコンといった物を使用する「美少女ゲーム」「乙女ゲーム」といった、恋愛シミュレーションゲームは、古くから存在した。

薪が体験したのは、それを発展させた物。
画像はゲーム機器やパソコンの画面ではなく、特殊な機器を通して、すぐ目の前に3Dで投影される。
あたかも、そこに実際に存在するかのように。

けれどそれは、専用の眼鏡を掛けねば見えない。
この眼鏡とヘッドホンによって、ゲーム内容のプライバシーが保たれることになる。

本体と眼鏡とヘッドホン、通常なら、これだけでゲームは成り立つが、更に今回のモニター用の試作品には、オプションの椅子がセットになっていた。
この椅子には、必要な小物を全て収められるようになっており、また、椅子とヘッドホンというセットによって、音声はもちろんのこと、何かにぶつかった時の衝撃、乗り物に乗った際の揺れまでもが、リアルに再現され、体感できるのだ。

薪が、試作品のモニターを頼まれたのは、これを開発したのが、MRIシステムを開発した企業の、関連会社だからだ。
MRIシステムに何か不具合が生じれば、すぐに手を打つ、迅速で丁寧な仕事をする企業の担当者の恩に報いる形で、薪は、この役目を引き受けた。

「第九の人間がモニターに選ばれたのは、普段からMRI画像を見慣れた目によって、画像を厳しくチェックして欲しいからだろう」
「それもあるかもしれませんが・・薪さんほどの緻密さを求める人は、そんなに居ないのでは・・」
遠慮がちに、青木はつぶやく。

「それに、担当者は、楽しんで下さいって言ってたんでしょう? 何と言うか・・もっと展開を楽しんで、その上で浮かんだ素直な感想を求めているんじゃないでしょうか」
「・・だが、このメンバー達が相手で、楽しめると思うか?」
「・・・・・・」

このゲームの特徴は、画像や音声等の再現力だけではない。
自分の相手となるキャラクターを、自在に生み出せる点にある。
もちろん、ゲームのキャラクターを自分で作り出す機能も、古くからあった。

だが、このゲームの場合、年齢や職業、性格等、細かい情報を入力することによって、ゲーム内の言動が、より、その人物らしいパターンとなるのだ。

つまり、理想とする相手の情報を入力すれば、その先の展開が、より、理想に近くなる。
また、実在の人物をモデルにして、その人物の情報を入力すれば、そのキャラクターは、ゲーム内の状況で、より、実在の人物に近い言動を行うのだ。

「よりによって、何故、こいつらが相手なんだ」
薪が言い、青木が答える。
「それは、薪さんが、キャラクターの情報入力は面倒だと言うから。代わりにオレが入れたからでしょう」

「相手を女性に設定する・・という発想は無かったのか?」
「だって・・男性に設定しなかったら、オレのキャラクターが作れないじゃないですか」
青木は、まるで当然という顔で、肩をすくめて言う。

「・・だからって、何故、出てくるのが、第九やその周囲の人間ばかりなんだ?」
「薪さんを囲む男性と言うと、他に思いつかなかったからですよ」
「総監にまで言い寄られる、僕の身にもなってみろ」
「最大8人まで入力出来るとあったので。せっかくだからと思って」

全く悪びれずに言う青木を見て、薪は、小さくため息を付く。
そんな薪に向かい、青木は、尋ねる。
「第一話の最後まで来たんですよね。オレ、出てきました?」
「ああ」

「どんな感じでした?」
青木は、好奇心丸出しと言った様子で、薪ににじり寄った。

「お前が、一番強引で自分勝手だったな」
「え・・」
青木は、ちょっと身体を引いた。

「そんな言い方、無いじゃないですか」
「ゲーム内の青木がそんな態度を取ったのは、僕の責任じゃない。そういったキャラクターになるよう、情報を入力した、お前のせいだ」

淀みなく薪にそう言われ、青木は口ごもる。
「う・・まあ、そうですけど・・」

それから、青木は話をそらそうとしたのか、マニュアルを手に取り、頁をめくる。
「ここで、相手となるキャラクターを一人選んで、その後は、そのキャラクターと親密になっていくんですよね。他の7人は、主人公に横から言い寄ったりして、主役カップルの障害になったり、絆を深める要因になったりする。要は、当て馬の役割を果たすわけですね」

「そうだ。そして、主人公の言動を自分で操作することによって、その後の展開が変わる仕組みだ」
「全10話でクリアなんですね。その後、セカンドステージに進む・・・あ?」
「何だ?」

薪が尋ね、青木は、マニュアルと薪の顔を見比べながら、言う。
「これ・・セカンドステージは、R18指定になってますよ」
「そうだ。18歳以上であることを示すIDナンバーを入れないと、セカンドステージには進めない設定になっている。最初にマニュアルを見なかったのか?」
薪は、涼しい顔で言う。

「セッティングの部分ばかり読んでましたから・・まだそこまでは見ていませんでした。てことは、その・・・」
青木は、言い淀む。

「セカンドステージに進むと・・薪さんとオレは・・・」
いつしか赤くなっていた顔を、青木は、片手で覆う。
そんな青木を見て、薪は、肩をすくめる。

「どうして、僕とお前だなんて、決め付けるんだ?」
「え?」
青木は顔から手を離し、薪を見つめる。

「大体、こういったゲームは、現実とは違う体験をしたくて行うものだ。現実に、既にお前とこうして付き合っている僕が、何故、あえてゲームでもお前を選ぶ必要がある?」
「えっ!?・・」
青木は、しばし絶句する。

それから、か細い声で、言った。
「・・じゃあ、薪さんは、オレのことを・・・選んではくれないんですか?」

「・・・・・・」
薪は答えない。
ただ、青木を見つめ返し、ふっ・・と、微笑んだ。

それから薪は、再び、ヘッドホンと眼鏡を装着する。
目の前には、8人の男達が立ち並び、こちらを見つめている。

薪は、コントローラーを動かし、カーソルを、ある人物に合わせ、ボタンを押した。





百花繚乱 終






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コメント

■ 鍵拍手コメ下さったAさま

○12/20に鍵拍手コメント下さったAさま

こんにちは。
コメントありがとうございます(^^)

面白いとのお言葉、とても嬉しかったです!
そう、合言葉は「薪さん総受け」です(笑)
私自身、今回のお話はとても明るい気持ちで書けたので、読んで笑っていただけましたら、もう何も言うことはございません。

田城さん(笑)
たぶん、今回一番無理がありましたよね(^_^;)

えっ。
山本がいなくて少し残念ですか?
そっか・・そんな需要もあるんですね(笑)

青木が一番青木らしいとのお言葉も、とても嬉しく思いました。
やっぱり、青木バージョンを書く時が、何も考えず一番ノッて書けました。

私も、薪さんと今井さんがラブラブになる光景を見てみたいですね。
以前、今井×薪なお話を書いてみたくて「美酒」を書きましたが、その時も結局爽やかな展開で終わってしまいましたから(^_^;)
私の中で、今井さんは、カッコ良くてスマートで・・だからこそ、なかなか色っぽい展開にならないみたいです。

宇野がどう付き合うか・・確かに、なかなか想像出来ないだけに、私もちょっと興味があります(笑)

読んで色々と思い巡らせていただいた様子のコメントに、元気が出ました。
ありがとうございました。

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