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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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※清水先生の作品とは、関係ございません。


オリジナルストーリー

「冬の夜、雪の朝」




そのショーウインドウを見て、青木は、ふと足を止めた。

そして言った。
「・・どう思います?」

薪も足を止め、そちらをちらりと見やり、一言、答えた。
「悪くないんじゃないか?」

二人がそこで話したのは、それだけだった。
それ以上何も言わず。
何事も無かったように、二人は、先を歩いて行った。

青木が、メンズブランドショップの、そのマフラーに目を留めたのは。
少し前の、仕事帰りの出来事が、きっかけになっていた。

夜中までかかった捜査を終え、薪と青木は、歩いて帰った。
青木は寒さに身を縮込ませ、それから、ふと薪を見やった。
薪の口から洩れる吐息が、薄闇に白く浮かび上がる。

自分の身体を刺す寒さよりも、その薪の白い息が、凍て付く空気を感じさせた。

そして目に付いたのは、ウールコートの襟から伸びる、むき出しの白い首筋。
薪は、マフラーをあまり好まない。
いや、マフラーに限らず、首に巻く物は全て、最低限しか身に着けない。
ネクタイでさえ、必要不可欠とされる正式な場でしか結ばないのだ。

それが何故なのか。
青木は、尋ねたことは無かったが。

それにしても・・・。
この寒さの中、その華奢な首筋は、余りにも無防備に見えて。

「!!・・・」
薪は、目を見開いて立ち止まった。
それから、隣りに立つ青木を見上げる。

青木が身に着けていた黒いマフラー。
それが、薪の首に巻かれていた。

「・・・・・・」
無言のままの薪に、青木は、やや困惑した表情を見せた。
「あの・・やっぱり、イヤですか?」
「・・・・・・」

薪は、自分の首に幾重にも巻かれたマフラーにそっと触れ・・
「・・いや」
そう言った。

そしてまた、薪は、前を向いて歩き出した。
そして青木も、隣りに並んで歩いた。

それは、しんしんと冷え込んだ、冬の夜のこと。

青木は、薪にマフラーを贈ろうと思い立ったことは、黙っていた。
薪と付き合うようになってから。
青木は、クリスマスに、特別な物を用意したことは無かった。

それは、付き合い始めた頃は、遠距離恋愛でそれどころではなかったせいもあるが。
薪が、そういったイベントに乗ることを好まなかったせいでもある。
プレゼントや豪華なディナー等、無駄な金は使うなという、暗黙の了解が、そこにあった。

だから青木は、薪には内緒で、そのマフラーを購入した。
事前に話せば、無駄なことはするなと咎められるかもしれない。
だが、クリスマス・イヴに、既にプレゼントが用意されてしまっていたら、薪も受け取らざるを得ないだろう・・

青木は、そう踏んだのだった。






そして、12月24日の夜。

その日も捜査があったが、幸いそれ程遅くなることもなく終了した。
薪と青木は、特別なクリスマスディナー・・というわけでもなく、よく行く店で、普段と変わらぬ夕食を済ませ、家に帰った。

いつもと変わらぬ日。
いつもと変わらぬ夜。

この年のクリスマス・イヴも、そんな風に終わるかに見えた。

交替で風呂に入り、青木は、先に出た薪がソファーに居るのを確かめると、一度自室に入り、それからリビングに戻った。

「薪さん」
その声に、薪が顔を上げると。
目の前に立つ青木の手には、リボンが結ばれた包みが乗っていた。

「・・・!!」
薪が、驚きに目を見開く。

青木は、薪の隣りに座る。
それから、包みを両手に持ち、薪に差し出した。

「薪さん」
青木は、ニッコリと笑う。

「これ、オレからのクリスマス・プレゼントです」

「・・!」
薪は、青木の顔を見て、それから、その手に乗る包みを見つめた。
両手を脇に付いたまま、身動きをせずに。

手を出さない薪の様子に、青木の顔から、笑みが消えた。
「・・怒りました? 勝手にプレゼントなんて用意して」
「・・・・・・」

「薪さん、いつも、クリスマスに特別なことなんてするなって言ってましたから・・ちょっと迷ったんですけど。でも、どうしても今年はこれを渡したくて」
青木は、自分の手の上の包みを見つめ、それから薪の顔を見て、言った。

「受け取って下さい」
薪は、もう一度青木の顔を見上げ、それから、片手を差し出した。
薪の手に、包みが渡る。

「開けてみて下さい」
青木に言われ、薪は、ソファにあぐらを掻いた状態で、その膝の上に包みを乗せ、リボンを解いた。
そして、包み紙をはがし、現れた箱を開く。
そこには・・・

「・・どうですか?」
贈り物を手にした薪に、青木は尋ねる。
薪の手には、茶色の地に、ワインレッドと黒のラインが入ったカシミヤのマフラー。

「これは・・」
薪が口を開きかけると、青木は言う。
「ひと目見て、薪さんに似合うんじゃないかと思ったんです。・・あの時、薪さんも悪くないと言ってたので」
「・・・・・・」

薪は、片方の手の平で、そのマフラーの表面を、そっと撫でる。
その表情は静かで、青木には、喜んでいるのか、怒っているのかも分からない。
青木は、段々に不安になってきた。

「薪さんが・・あまりマフラーを好まないのは分かってます。もし、イヤでしたら無理には・・」
「いや」
薪は、青木の言葉をさえぎり、ハッキリと言った。

「いや。もう大丈夫だ」

「もう」とは。
「大丈夫」とは。
どういうことなのか。
薪は、それ以外、何も言わなかったが。

「薪さん・・・」
青木は、薪の頭を見つめる。
そして薪も、顔を上げる。

薪と青木の、視線がぶつかった。
じっと見つめ合う・・・。

「青木」
薪は言った。

「それを」
薪は、座ったまま、親指を立て、どこかを指し示した。
青木が、指された方角を目で辿ると・・その指は、ダイニングを指していることが分かった。

「え・・?」
青木は立ち上がり、そちらを見やる。
薪を振り返ると、薪はやや首をかしげて、青木を見上げている。

「え?・・え?」
青木は、ダイニングに回る。
そのテーブルの上には・・・

「薪さん。これ・・・」
青木は、そこに乗っていた包みを見て、それから、ハッとした。

「!!」
その包みは、青木が薪に渡した包みと、大きさも包装紙もリボンも。

全く同じ物だった。






「今日も、寒いですね」

そう言って、青木はカーテンを少し開ける。
それから、窓の外を眺めて言う。
「大分、積もってますよ。夕べの雪、一晩中降ってたんですね」

窓から差し込む朝日の眩しさに、薪は、目を細める。
ベッドの上。
胸まで掛かった布団の上に出ている肩は、何も身に着けていない。
窓辺に立つ青木も、全裸だ。

正月明け。
青木が、一度実家に行って母親に顔を見せ、薪の待つ部屋に戻ってきたのは、夕べのこと。
新年最初に確かめ合った愛は、熱く激しい一夜を生んだ。

「ちょっと、外を歩きませんか?」
青木はカーテンを引き直すと、ベッドに戻って座り、薪の額に手を当てて、言った。

「ん・・」
青木に前髪をまさぐられながら、薪は、返事とも何とも付かない声を出す。

起き上がってシャワーを浴びてから。
どうせ歩くなら、カフェまで歩いて朝食にしようと提案したのは、薪だ。

二人で朝食を取り、カフェを出て、並んで歩き出す。
「・・少し、寒くなりましたね」

来る時は晴れていた空に、雲が立ち込めていた。
冷たい風が吹き付け、青木は、マフラーに首を埋めた。

青木がしているのは、以前から持っている、黒のマフラーだ。
隣りを歩く薪は、青木に贈られた、茶色いマフラーを巻いている。

クリスマス・イヴ。
ダイニングテーブルの上には、青木が薪に渡した物と、同じ包みが乗っていた。
青木が開けてみると、果たして、箱に入っていたのは、薪に贈った物と、同じマフラーだった。

「・・・・・・」
「・・・・・・」
リビングで、青木は立ったまま、薪はソファーに座ったまま。
互いに同じマフラーを手に、しばらく無言で見つめ合った。

「どう思うかと尋ねたのは、お前が自分で身に着けるならという意味だと思った。この前、お前に借りたマフラーは、大分使い込んでいるようだったから」

確かに。
物を長く使う習慣のある青木のマフラーは、黒地に、あちこち毛玉が出来ていた。

「薪さん・・・」
そんなことを気に留めていてくれたのかと、青木は、感動で胸がいっぱいになった。
だが。

雪道を歩きながら、青木は言う。
「オレ、薪さんにもらったマフラー、まだ使う機会が無いんですよね」
「仕方が無いだろう。ペアルックはご免だ」
「・・・・・・」

青木は、出掛ける度に、薪がくれたマフラーをしようとするのだが。
薪の方が、必ずいつも、青木が贈ったマフラーを首に巻いていて。

「僕は、これ一つしか無い。お前は、別の物もあるだろう」
そう言われてしまい、青木は、依然として、使い込んだマフラーをする羽目になるのだった。

確かに、揃いのマフラーをして出掛けるのは、賢い選択ではない。
これが、ただの上司と部下だったら、偶然同じ物を購入してしまっただけのことになるのだろう。
だが、実際に恋人同士であるからこそ。
同じ物を身に着けて歩くのは、控えるべきと思われた。

だが、青木にしてみれば。
どうも自分ばかりが、愛する人に贈られた物を身に着けられないというのは、不公平なことのようにも思え・・・。

「こっちから行きますか」
怪しい雲行きに、近道となる、公園を突っ切る道を通る。

積もった雪。
踏みしだかれた足跡。
そこを二人で辿って行く。

「あ・・」
青木は、つぶやいた。

雪が、はらりと舞い降りてきた。
どちらからともなく、二人は立ち止まる。

見上げると、後から後から。
はらり・・はらりと、雪の粒が落ちてくる。

ふと、青木が気が付くと。
薪と自分は、互いに背を向けて立っていた。

寄り掛かるわけでもなく。
かと言って、離れているわけでもない。

接する背中に、かすかに、相手の体温を感じる程に。

振り返らなくても。
青木には分かる。

自分が空を見上げているように。
薪も、同じ空を見ている。

薪の吐く息は白く。
そして・・その首には、自分が贈った、マフラーが巻かれている。

薪が、やがて歩き出し、青木も再びその隣りに並んで歩き始めるまで。

二人は。
背中合わせに立ち、その場に佇んでいた。






冬の夜、雪の朝 終






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コメント

■ 

お邪魔しました。

■ 鍵拍手コメ下さったAさま

○1/2に鍵拍手コメント下さったAさま

明けましておめでとうございます。
早々のコメント、ありがとうございました。
レスが遅くなりまして、すみませんでしたm(_ _)m

ねぎらいのお言葉も、ありがとうございます。
こちらのコメントをいただいた日は、まさしく接待づくしで、午後は、家族を含めて18人分の食事の支度をしておりましたので・・お言葉に癒されました(;▽;)

そうですね、薪さんは綺麗な首をなさってるので、巻く物はお似合いになりそうですよね。
原作では、薪さんが貝沼事件以来、葬儀の席以外ではほとんどネクタイをなさっていないことに、深い意味があるのかどうかは分かりませんが・・。

当ブログの薪さんは、刃物も一時使えなかったと言いながら、青木の前でナイフを使って見せていたこともあり・・そんな風に、青木が共に在ることによって、少しずつ、何かを乗り越えていくのだと思います。

カップルが、背中合わせに立つ姿は、私の好きな光景の一つです。
いつまでも一緒に歩き続けて欲しいとのお言葉が、胸に沁みました・・(;;)

■ KalaKaLaさま

○KalaKaLaさま

いらっしゃいませ。
レスがすっかり遅くなってしまいまして、申し訳ございませんm(_ _)m

ご訪問&コメント下さいまして、どうもありがとうございました(^^)

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