カウンター


プロフィール

かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

リンクは嬉しいので、ご自由にどうぞ♪


当ブログ拍手頁

最新の公開拍手コメのレスはこちら それ以前の公開拍手コメ&レスは、各記事の拍手ボタンを再度押していただければ読めます 鍵拍手コメにつきましては、拍手をいただいた記事下コメント欄にレスを書いております

所属してます♪


月別アーカイブ


最新記事


最新コメント


検索フォーム


 
第三話:鬼



その客、鈴木克洋は、それから頻繁に、山の井に顔を見せるようになった。

長身で、涼やかな目元を持つこの男は。
決まった勤めも無く、妻子も無く、自由に暮らしていた。
この時代、高等遊民と呼ばれる人種があったが、鈴木はそういった類の人間のようだった。

高等遊民とは、字のごとく、大学等の高等教育まで受けながら、その後、遊び暮らしている者である。
当時、こういった者達の就職先が少なかったということもあるが、そもそも、子供を大学に進ませられる親というのは、かなりの資産家であったということも大きい。
大学を出た彼らは、その後も親の庇護の元、経済的余裕がある為に、労働に従事する必要が無いのだ。

読書にふけり、音楽会に顔を出し、同じような人種と交流する。
いずれは、親の跡を継ぐなりなんなりして、気ままな暮らしからは卒業せねばならないのだろうが。
今の鈴木には、全くそういったそぶりは見られなかった。

いつも仕立ての良い洋装で、あるいは上質の着物姿で。
時には歩いて、時には車で乗り付けて、山の井に、週に2度3度と通うその姿に。
さすがは薪さんだ、紹介も無く、大した上客を掴まえたものだと、山の井だけでなく、界隈の者達まで噂し合った。

薪の方でも、いつしか、鈴木が居ることが当たり前になっていったのか。
三日姿が見えないと、どうしたことかと、心に掛かる程になっていた。

「だがもし、このことが青木さんの耳に入りでもしたら、どうなるだろうな・・?」

仲間達の噂話の中に、そんな声が交じっていることを、薪が耳にした、その夜。
いつもなら、薪が客の酒を勝手に注いで飲む様を、咎めもせず、笑って見ている鈴木が。
その日は、あぐらをかいて、酒をあおる薪の姿に、真顔になって言った。

「薪。そんな飲み方をしたら、身体に毒だ」
鈴木の言葉に、薪は、ぐい飲みを持った手を、一度は止めたが。
すぐにまた、そこにとっくりを傾けて酒を注いだ。

「薪」
並々と酒を注いだぐい飲みを持ち上げたその手を、鈴木は止める。
その拍子に、注がれた酒が半分程、薪の着物の裾に飛び散った。

「・・・・・・」
薪は、自分の手を見下ろした。
薪の白く細い手首を、鈴木の大きな手が掴んでいる。

「・・離せ」
顔を上げぬまま、薪は言う。

「僕が、この仕事をしていられるのも、酒の力があるからだ。お前にとやかく言われる筋合いは無い」
「・・・・・・」
鈴木は、黙って手を離し、薪は、くいと顔を上に向け、ぐい飲みに残った酒を呑み干した。

それからしばらく立った、ある月の夜。

その日は、馴染みにしている商人達が訪れ、一階の広い座敷に、宴席が設けられていた。
山の井の男達は、三味線、小唄、踊り等、客を楽しませる芸も心得ている。
男達の多くが、座敷に集められ、宴を華やかに盛り上げていた。

階下から、三味線の音色が響く中。
薪と鈴木は、二階の小座敷で、ひっそりと過ごしていた。

鈴木は、畳の上で、薪の膝枕に頭を預け、楽しげに薪に話し掛ける。
だが薪は、そんな鈴木の額に片手を乗せながらも、どこか心ここにあらずといった様子で、遠くを見つめていた。

「薪・・薪!」
「うん?」
薪は、瞬きをして、すぐ下にある、鈴木の顔を見やる。

「今の話、聞いてたか?」
「・・・・・・」
無言で返す薪に、鈴木は、呆れたように笑う。

「客がここに居るというのに、放ったらかしか? さっきから、何を考えてる?」
「・・何も」
薪の答えに、鈴木は小さくため息を付くと、薪の手をよけて、起き上がった。
薪の傍らに座り、両腕を組んだ姿で、薪に言う。

「いつもそうだ。お前は、オレに何も話そうとしない。昨日今日会った仲でも無し。何か悩みでもあるなら、話せばいい」
「だから、何も無い」
薪は、頑なに言い放った。

「お前は」
鈴木は、薪の顔を覗き込むようにして、話す。
「未だに、自分のことすら、話そうとしない。こういった仕事をしてる者は皆、嘘でも、作り話でも、客の要求に応えて何かしら話すものだ。なのにお前は、それすらも拒否するのか? ・・いくら何も無いと言ったところで、お前が物思いにふけっていることは分かる。一体、何があった?」

「・・・・・・」
鈴木の真っ直ぐな視線をまともに受けて、薪は、目がそらせなくなった。
そこに。

「失礼致します」

ふすまを引いて顔を見せたのは、この店の番頭を務めている、宇野という男だった。
「ちょっと・・」
客に頭を下げて見せ、それから薪を呼び出す仕草をする。

鈴木の耳に、廊下で二人が低く話す声が届く。
「ともかく、一度下まで来て下さい」
「さっきも言った筈だ。僕には、何も話すことは無い。客が酔って手が離せないとでも言っておけ」
「それじゃあ、相手は納得しませんよ・・」

宇野が階段を降りていく音が聞こえ、薪が、再び部屋に入ってきた。
薪の顔を見上げ、鈴木は言う。

「オレに遠慮は要らないぞ。下に誰か居るなら、会ってくればいい」
「さすがに、もう帰るだろう。あいつはもう、上に上がる金は持ってないからな」
薪は、鈴木の顔を見もせずに言った。

「追い駆ければ、まだ間に合うんじゃないか? 会ってこい。何だったら、この部屋へ呼んだって構わない。オレは、話の邪魔はしないぞ」
「・・冗談じゃない」
薪は言い、鈴木の前を通り過ぎ、窓辺にもたれた。

横顔と、手すりに掛けた、肘まで露わになった細い腕が。
横から差し込む月明かりに、白く浮かび上がっている。

「あいつは・・・」
薪は、ぼんやりと外を見下ろしながら、話し始めた。

「以前はなかなか羽振りの良かった、布団屋の青木という男だ。一時は馴染みだったが、今は落ちぶれて、見る陰も無い。あいつには、女房も子供も居る」
薪は、そこで一旦、言葉を途切らせた。

「・・僕は、とっくに縁を切った気でいた。なのにあいつは、今でも時々、この山の井にやって来る。遊ぶ金も無い癖に、僕を訪ねて。今も、店先までやって来たらしい。だが・・会ったところで、面倒なだけだ。恨まれることには慣れている」
言いながら、薪は少し首を伸ばすようにして、表を覗き込んだ。

薪のその仕草に、鈴木は驚いたように言う。
「おい。もしかして、そいつの姿が見えるのか?」
鈴木も窓辺に近付き、外を覗いたが、その時は既に、それらしき人影は無かった。

「もう帰った」
一言そうつぶやいて、鈴木と入れ替わりに、薪は窓辺からすいと離れた。

柱を背にして座り、立てた片膝を、両腕で抱きかかえるようにして。
薪は、目の前の畳を見つめた。

鈴木も、薪の傍らに座り直す。
「是非、そいつに会ってみたいものだ。どんな顔をしている? オレよりいい男か?」
少しからかうような口調で、鈴木は薪に言った。

薪は、ちらりと鈴木を見やり、それから目をそらして、言う。
「そんな、大した男じゃない」
「顔は大したことはない・・となると、気性に惚れたのか?」
「所詮、僕に騙されるような男だぞ。人がいいだけが取り柄の男だ」

薪は言い、それから、少し眉根を寄せて、鈴木を見上げる。
「大体、僕があいつに惚れただなんて、一言も言った覚えは無い」

きっぱりとそう言う薪を、鈴木は見つめた。
見つめて・・・

「っ!!」
薪が気付いた時は、鈴木に唇を塞がれていた。
とっさに鈴木の胸を押しのけようとする薪の手を、鈴木は掴む。
薪は、鈴木に腕を掴まれ、座ったまま背を柱に押し付けられ、逃げ場は無い。

鈴木は薪に覆いかぶさり、口付けを続けた。
薪が息を継ぐ間も与えず、せわしなく、強引に。

そのうち、薪は抗うことを止め、その腕から、力が抜けた。
それからやっと・・鈴木は、薪の腕を解放し、ゆっくりと身体を離した。

鈴木は、窓を背にして座り、背後から入る夜風に身を任せる。
「・・・・・・」

薪は、手の甲を自分の唇に当てながら、つぶやくように言った。
「どうして、こんな・・?」

鈴木が答える。
「嫉妬かな」
「嫉妬・・何故?」
「・・・さあな」

窓から入る月明りで、鈴木の顔は輪郭だけが浮かび上がり、表情は陰になって、薪からは見えない。

「青木は」
薪が言う。
「あいつは、僕にとって、金のある客だったに過ぎない。金の切れ目は縁の切れ目。あいつが客として山の井に上がれなくなった時点で、僕との縁は、切れたんだ」

薪の平静な声に言葉に、鈴木は、じっと薪を見つめると。
「ということは、オレも、金が無くなったら、途端にお前との縁は切れるということか?」
そう言った。

薪は、目を見開いて鈴木を見上げ、それから、笑みを浮かべて言う。
「そういうことになるな」
「それは酷い」
言いながら、鈴木も笑った。

一度大きく伸びをして、それから、鈴木は薪の傍らに寝そべった。
横を向き、頬杖を付く鈴木に、
「なあ鈴木。お前は、よく眠れるか・・?」
前置きも無く、薪が問う。

「うん?」
「僕は、眠れないことがある。眠っても、次々に夢を見て・・・」

どこかを見つめながらそう言う薪に、鈴木は肩をすくめて言う。
「何だ。オレのことでも夢に見てるのか? 薪、それ程オレを恋しく思っているなら、そうと告白してくれたって構わないぞ」

鈴木は、冗談めかして話していたが、そこでふと、真顔になった。
「もし・・お前がこの仕事を嫌だと思っているなら、オレが、何か策を考えてやってもいい。お前が何も言わないから、てっきりオレは、こういった暮らしの方が気楽だと、お前が思っているのかと・・」

鈴木は、薪を見据えて、話す。
「なあ、薪。一体お前は、どういう理由でここに居る? オレに・・話す気にはならないか?」

じっと自分に向けられている鈴木の瞳を、薪も見つめ返す。

「そうだな。お前には話そう・・いつか」
「いつか? 今では、駄目なのか?」
鈴木は頬杖を付いていた手を解き、薪の正面に顔を突き出した。

「どうせ話すなら、今だっていいだろう」
「駄目だ」
「何故? 理由は?」
「今夜は、僕が話す気にならない。それが理由だ」

薪の言葉に、鈴木はじっと薪を見つめ・・・やがて、微笑んだ。

薪は、ふと立ち上がると、縁側に出た。
鈴木も、薪の隣りに並んだ。
月が、周囲の様子を、くっきりと照らし出している。

「あそこに」
しばらく辺りを眺めていた薪は、何かを見つけて、通りの先を指差した。

「果物屋の前に子供が居るだろう? あれが、青木の子供だ。向こうも、僕の顔を知っている。あんなに小さくても、僕が何者か分かってるんだ。あの子は僕を・・・鬼と呼ぶ」

「・・・・・・」
鈴木は薪の横顔を見つめ、それから、その細い肩にそっと、手を回した。

鈴木の腕の中で、薪は、夜空に浮かぶ月を見上げた。






関連記事

コメント

■ 鍵拍手コメ下さったAさま

○2/19に鍵拍手コメント下さったAさま

コメントありがとうございます!

ああ、そうですね。
気付きませんでしたが、言われてみれば、青木が先に出会っているという設定は、原作と逆ですね。

鈴木さん、お似合いですか(^^)
実は、このお話は、ある方が、元ネタのこのキャラクターが「鈴木さんに思える」とおっしゃったところから、イメージが広がりました。
つまり、今回のお話は、鈴木さんから始まっているんですね。
そして主役は、当然薪さん。
薪さんの美しさや色香、鈴木さんのいい男ぶりが伝われば・・という思いで書いております(←・・青木は?)

そうです。
さすがの予想ですね。
その辺りのメンバーも出て参りました(^^;)
今後、まだ他のメンバーも出てきますので。

他にも、色々な感想を抱きながらお読み下さって、ありがとうございます。
とても励みになっております。

コメントの投稿



管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

■この記事のトラックバックURL

⇒ http://kanon23.blog36.fc2.com/tb.php/840-4395bd88

この記事に対してトラックバックを送信する(FC2ブログユーザー)

■この記事へのトラックバック

 | BLOG TOP |