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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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第七話:目前



薪が振り返ると、そこに、鈴木の顔があった。

「・・どうした?」
身体をかがめ、薪の顔を覗き込むようにして、鈴木は尋ねる。
薪は、とっさに首を横に向けると、言った。

「どうも」
「どうもしないという顔では無かったぞ」
「何でもない・・!」
薪は、語気を強める。

鈴木は背筋を伸ばすと、薪の顔を見て、言った。
「・・何でも無いなら、何故、店でオレを待っていなかった。今夜は行くと言ってあったろう? お前だって、待ってると言ってたじゃないか」
「・・・・・・」
鈴木の言葉に、薪は、相手を見上げ。

「忘れていた」
一言、そう言った。

薪の顔を見つめ、鈴木は、ため息を付く。
「全く。お前は、本当に・・・」
言いながら微笑み、鈴木は、薪の手を取った。

「戻ろう」




薪と二人。
山の井に向かって、通りを歩きながら、鈴木は言う。

「なる程。何故、お前が出歩く時に顔を隠しているのか、理由が分かった」
薪が、店を出た時に頭にかぶっていた布は、そのまま鈴木の懐にあった。
「・・この辺りでは、僕が山の井の薪だと、知られているからな。それでなくても、この髪の色だ。好奇の目に晒されて仕方が無い」

薪の言葉に、鈴木は改めて、周囲を見回す。
道を歩く者も、その場に佇む者も。
ある者はそれとなく、またある者はあけすけに、誰もが、薪と共に歩く自分を・・いや、薪のことを、見ている。

「好奇・・か。お前が人の目を引くのは、それだけではないと思うがな」
鈴木が言った。

鈴木は薪に向かい、更に、言う。
「人に見られるのは、嫌か?」

「お前こそ」
鈴木の問いに、薪も、問いで答える。
「店の中ならともかくも、色子と並んで歩いている様を、世間の人に見られてもいいのか?」

「・・・・・・」
鈴木は、薪を見つめる。
自分をじっと見上げる、薪の瞳が、そこにあった。

「何を言ってる」
鈴木は、ふっ・・と、微笑んだ。

「天下の山の井の薪が、こうしてオレと共に居るんだ。世間様には、もっともっと見てほしい位だ・・おーい!皆、こっちを見ろ!」
「なっ・・!」

最後に鈴木が大声を上げる様子に、止めろと薪は鈴木に怒る。
今や、見ぬフリをしていた者までもが、薪と鈴木のことを、じっと目で追っている。

だが鈴木は、そんなことにもお構いなしで、歩きながら、楽しそうに笑っていた。




山の井に着くと、店先に小池が出てきた。
「あ、薪さん!急に出て行ったものだから、旦那方が、まだ騒いでるんですよ。早くあちらに戻って下さい」

小池の言葉に、薪は、そちらを見もせずに、下駄を脱ぎながら言う。
「僕は具合が悪いから、今夜はもう、座敷には出られないと言っておけ」
「えっ!そんな・・」
小池が頭を振りながら、困った声を出す。

店の主人も出てきて、薪に座敷に戻るよう促したが、薪は聞く耳を持たず、階段を上がっていく。
主人はため息を付くと、鈴木の方に向き直った。
鈴木という上客を前に、これ以上もめても仕方が無いと思ったのか。

「これはこれは鈴木様。ようこそいらっしゃいました。どうぞ、ごゆっくりなさっていって下さい」
そう言って、深々と頭を下げた。

薪の後を追い、鈴木も二階の座敷へと上がる。
「いいのか? 客が怒って、面倒なことになるんじゃないか?」
上着を脱ぎ、預かっていた布を薪に手渡して、鈴木は言った。

「いいんだ」
薪は、言葉少なに返した。

二人で座敷に腰を落ち着け、そこに、酒と肴が運ばれてくる。
互いに黙って酒を注ぎ、飲み干すと、鈴木は、肴の煮物に手を付けた。
「この店は、焼き物は悪くは無いが、煮物は今一つだな」
食べながら、文句を付ける。

「売りは料理ではないからな。贅沢を言うな」
「見た目は悪くないんだ。だが・・煮る前のあく抜きがきちんと出来ていないんだろう。うん、きっとそうだ」
「・・料理をするような身分でも無いだろうに。分かったような口を聞くな」

薪の言葉に、鈴木は、涼しい顔で反論する。
「しばらくの間、親に反発して家を飛び出していたことがあるからな。その間は、ずっと自炊だった。今は飯を炊く者も居るが、時には自分で作ることもある」
「へえ・・・」
薪は、意外な面持ちで、鈴木を見つめた。

「まあ・・一時反発したところで、結局は、親の羽の下で生きていくしか無かったがな。オレは、世の中の何の役にも立たない、道楽者だ」
言いながら、鈴木は今一つだというその煮物を飲み下し、酒を飲んだ。

薪は、そんな鈴木の姿を、じっと・・見つめた。

頻繁に顔を合わせながら。
この男のことを、自分は、何も知らないのではないか。
今更ながら、そう思った。

それまで見えていなかった物が。
急に、眼前に広がったような気がした。

改めて、目の前に座る男を見てみれば。
こんなに肩幅の広い、背の高い男だったか。
広い肩から、太い首が伸び、すっきりと刈り込んだ襟足へと続く。

鼻筋は通り、目元は涼しげで。
よく見れば、人を射るような鋭い目つきをしている。
だが、いつもその目に笑みを湛え、相手を気後れさせることもなく。

こちらの我が侭や気まぐれにも、決して怒ることなく、いつも楽しげで。
物事を軽くあしらうようなそぶりを見せながら、その癖、深い思いやりを持ち。

その優しい瞳が。
どんな時も落ち着いた口調が。
どれだけ、人の心をほぐれさせるか。
そしてどれだけ、頼もしいものであることか。

気付いていなかった。
今まで、ずっと・・・・・・

「何を見てるんだ?」
鈴木が、酒を飲む手を止め、尋ねる。

「お前の顔だ」
薪は、答えた。

「・・・・・・」
束の間、鈴木は、呆気に取られたように、薪を見つめていたが。

くっ・・と、鈴木は吹き出して。
同時に、薪も笑い。
再び、互いに酒を注ぎ合った。

「本当に。今夜のお前は変だぞ。どうしたんだ?」
酒を片手に、鈴木は言った。

そんな鈴木を、薪は見つめた。
何もかも話してしまいたい・・そう思った。

そして薪は、語り始めた。






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