カウンター


プロフィール

かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

リンクは嬉しいので、ご自由にどうぞ♪


当ブログ拍手頁

最新の公開拍手コメのレスはこちら それ以前の公開拍手コメ&レスは、各記事の拍手ボタンを再度押していただければ読めます 鍵拍手コメにつきましては、拍手をいただいた記事下コメント欄にレスを書いております

所属してます♪


月別アーカイブ


最新記事


最新コメント


検索フォーム


 
第八話:静寂



何故、薪がこんな容貌をしているのか。

薪自身も詳しくは知らないが、薪の母親の家に、異人と結ばれた者が居たらしい。
薪の母親は、やや淡い色の髪と目、それに白い肌を持っていた。

父親は、異人の血が入っているという話は無く、髪も目も黒かったが、彫りの深い顔立ちをしていた。
祖父も、父親とよく似た顔だった。
父親の家系は、代々、そういう顔だったのだろう。

薪は、母親の家系と父親の家系の、両方の血が、奇跡的に混じり合って出来た産物らしかった。

父方の祖父は、学者だった。
幼いころから神童と呼ばれ、その道では、名の知れた存在だった。
だが、書いた本がいけなかった。

「今の日本を憂い、国のやり方を批判するような物を書いた。当然、出版差し止めを食らい、祖父は徐々に、落ちぶれていった。変わり者と呼ばれ、世間の物笑いの種にされ、やがて・・無念のうちに死んだ」

うっすらと、薪には、祖父のことが脳裏に残っている。
晩年は、神経質で人を寄せ付けなかったと聞くが、薪のことは、笑って頭を撫でてくれた・・そんな記憶が。

お上に楯突いた一家。
危険思想の変わり者。
そんな風に、世間から後ろ指を指され、追われるように、薪達親子は、よその町へと移った。

薪の父親も学問をやっていて、移り住んだ町で、子供達に学問を教えた。
だが、それだけでは身が立たず、金物の飾り職人の仕事もした。

「貧しい子供には、金を取らずに教えていた。それに付け込んで、金があるのに払わない親も居た。職人の仕事の上でも、よく騙されていたりしたらしい・・学問が出来て、職人としての腕も決して悪くは無かった。なのに、家はいつも、貧しかった」

貧しい家の多いその町に、よく現れる男が居た。
男は、家々を訪ねては、子供を高値で買うと言った。

薪の家にも、男は、幾度も訪ねてきた。
その都度、薪の両親は、この子は決して手放さないと言い張り、男を追い返した。
薪自身、その男の怪しさに、敵意を覚えていた。

貧しい暮らしの中でも、父と母は、薪を可愛がった。
特に父親は、学問を学びに通う子供達の誰よりも、薪は頭がいいと、喜んでいた。

「お前はきっと、学者になる」
父は、そう言って、薪の頭を撫でた。
「何たって、あの祖父さんの血が、流れているんだから」

父親は、祖父を誇りに思っているようだった。
その祖父のせいで、人に笑われ、町を追われることにまでなったのにと、薪は、複雑な思いだった。

貧しさが身に染みた、ある出来事を思い出す。
それは、冬の日のこと。

父親も母親も働いている最中、薪は、母親に、米を買ってきてくれと頼まれた。
なけなしの金を、しっかりと握り締め、薪は米を買い、帰り道を急ぐ。

その時、行く手を阻む影があった。
薪は足を止め、顔を上げた。

前に立ち塞がっていたのは、この界隈に住む、悪童どもだ。
彼らは、薪の目立つ容姿をあげつらい、事あるごとに、薪に手を上げていた。
薪も、負けてはいない。
相手が何人で来ようとも、怯んだことは無かった。

だが・・この日は、手の中に、守るべき物があった。

「お使いか?」
「父ちゃんと母ちゃんが、ひもじいひもじいって、待ってるなあ」
にやにやと笑いながら、彼らは薪に近付いた。

「・・・!」
薪は身をひるがえし、彼らを避けて走り抜けようとする。

「おっ・・と!待てよ!」
身体ごとぶつかられ、薪の手から、袋が落ちた。
袋の口から、米がこぼれ落ちる。

袋から、地面へ。
更には、どぶ板の隙間へと・・・

「っ・・!!」
薪は、地面に顔を寄せ、下を覗き込んだ。
泥水に、米が交じり、流れていく。

薪は目を見開いて、どうすることも出来ず、それを見ているしか無かった。

すると・・腹に、衝撃を受けた。
「ぐっ!」

悪童達が、寄ってたかって、薪を蹴り上げていた。
薪は必死に、叫び声を上げるのはこらえた。
代わりに、くぐもったうめき声が出る。

その時。
突然、彼らの動きが止まった。

「がっ!!」
同時に、周囲で声がした。
誰かが、悪童どもをなぎ倒している。

彼らの悲鳴。
慌てて駆け去る足音・・・。

誰かが手を出し、薪を助け起こそうとした。
だが薪は、その手を払って、自分の力で立ち上がった。

目の前に、少年が一人、立っていた。
靖文という名で、皆が、「ガキ大将のヤス」と呼んでいる、身体の大きな子供だった。

「・・・・・・」
ヤスは、地面に落ちていた米の袋を拾うと、薪に差し出した。
薪も手を伸ばし・・

袋を掴み取ると、何も言わず、薪はその場を走り去った。

薪が、母親に手渡した袋には、わずかに、一つまみの米が残るばかりだった。
「・・・・・・」
薪は、何も言い訳をしなかった。
そして、泥と傷にまみれた薪の姿を見て、母親も父親も・・・何も言わなかった。

その夜、空腹の為に、布団の中で眠れずに過ごしながら。
薪は、自分が大人になったら、働いて、両親に楽をさせようと誓った。

だが・・薪が大人になるのを待たずに、両親は、流行り病で、相次いで亡くなった。

身寄りも無い子供が、たった一人で生きる道は、限られている。
薪の前に、子供を買うと言っていた、あの男が現れた。
男は、自分は仲買の仕事をしているのだと言い、滝沢と名乗った。

町を出る薪を、あの少年が、じっと見送っていた。
薪が、これからどこへ行くのか、尋ねることもなく。
ただ・・黙って立っていた。

「安売りはしない」
滝沢は、言った。
怪しげな印象とは裏腹に、滝沢は、薪が売られた先で大事にされているかと、最後まで気に掛け、面倒を見た。

そして今、薪はここに居る。

今でも、薪は思い出す。
優しかった父と母。
無口なガキ大将。

それが、故郷の町の思い出の・・全てだ。




話を終え、薪は、目を伏せる。
鈴木は、じっと黙って、薪の話を聞いていた。

華やかな容姿と、頭の良さと。
その両方を兼ね備えていながら、何故、薪はここに居るのか。
何が薪を、ここに導いたのだろう・・・。

「薪」
鈴木は、口を開く。

「もし・・もしも、お前が。お前が、人生をやり直したいと願うなら。ここを出て、オレの元に、来るか・・・?」

鈴木の言葉に、薪は、目を見開く。
そして、顔を上げ、鈴木を見つめた。

「鈴木・・」
薪は目を細め、じっと・・鈴木の顔を見る。

「今・・お前の言葉にすがれたら。僕が・・お前に、全てをゆだねられる人間だったら・・・・・・」
薪の言葉は、そこで、途切れた。

いつの間にか、階下の宴も幕を閉じたのか。
三味線の音も止み、ひっそりとしている。

薪が、それ以上、何も言わぬのを見て取って。
鈴木は立ち上がり、上着を羽織った。

部屋を出ようと、ふすまに手を掛けた時。
「鈴木」
背後から、声がした。

「鈴木。今日は、泊まっていけ」
鈴木は、薪に背を向けたまま、目を伏せる。

「今夜は・・・帰したくない」

「・・・・・・」
薪の言葉に、鈴木は、ゆっくりと振り向いた。

これまでの付き合いの中で。
鈴木が、薪からそんな言葉を聞いたのは、これが、初めてだった。

そして鈴木は。
薪のその言葉を、当然のごとく、受け入れた。






関連記事

コメント

■ 鍵拍手コメ下さったAさま

○2/24に鍵拍手コメント下さったAさま

コメントありがとうございます。

そうですね・・薪さんの子供の頃の光景がこんな風に見えたのは、私自身、薪さんに、親に愛されていたという記憶を抱いていてほしいという願望があるからかもしれません。

外国人の生き霊・・気になりますよね(笑)

はい。ガキ大将としてのご登場でした。
滝沢は、自分は薪さんをいくら苛めても良いけれど、他の人が薪さんを苛めるのは気に入らない・・と、思っているのではないかと(^^;)

コメントの投稿



管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

■この記事のトラックバックURL

⇒ http://kanon23.blog36.fc2.com/tb.php/845-953bc7dd

この記事に対してトラックバックを送信する(FC2ブログユーザー)

■この記事へのトラックバック

 | BLOG TOP |