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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

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でも必ず書かせていただきますので
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※清水先生の作品とは、関係ございません。


オリジナルストーリー

「約束」





「特上盛りでございますね。毎度ありがとうございます」

相手の言葉を聞き届けると、澤村は電話を切り、ソファのサイドテーブルに置いた。
そして、身体をソファに深く沈み込ませた。

窓の向こうで、夜の戸張が降りる。

その景色を見るともなく見つめながら、澤村は、回想に耽り始めた。



・・・彼が私のもとを去ってから、もう何年になるだろう。

あの日からずっと。
彼は、両親の死の謎を追い続けていた。

あの事件の後。
目覚めた後、最初彼は、何故自分だけが助かったのだと、泣き濡れていた。

だが、私が彼を助けた時に、全身に火傷を負ったのだと知ると。
彼は、そんな犠牲を払ってまで助けてくれたのだからと。
助かったことを嘆くのは止めると、まだ少年の身で、涙をこらえながら、そう言った。

その代わり。
彼は、生きる目標を定めた。
両親の死の真相を暴くという。

助けてもらい、自分を世話してくれて、感謝していると彼は言ったが。
あんな悲惨な目に合いながらも、彼を生き続けさせたのは。
私の庇護ではなく、彼自身が定めた、目標に他ならない。

その為に、彼は生きていた。
それがあったから、彼は生きながらえていた。

そう。
それだけだった。

それが・・・・・・

あの日だ。
確実に、彼が変化を見せたのは。

雨の中。
一人の青年を、自分から追って出た。

その飛び抜けた容姿と頭脳に引かれるように。
彼を追う者は沢山居た。
だがその日まで、彼自身は、誰にも興味を持つことは無かった。

それが。
あの日。
彼は、自ら追って行ったのだ。

それが、どんなに大きな出来事か。
彼自身も、まだ気付いていなかったろう。

それからの日々。
見違えるように、彼は変わっていった。

やがて。
遂に両親の死の真相に辿り着き。
その衝撃を受け止めた時。

彼の傍らには・・・あの、青年が居た。

そして彼は。
私のもとから、旅立って行った。

あの青年と共に、見つけた道を進む為に。

それからずっと。
彼が青年と共に歩む姿を、私は、遠くから見守っていた。

その矢先・・・・・・・・・

正当防衛という判決が下るまで。
身元引受人として、私は彼を引き取った。

彼は、生きる屍だった。
両親を失った、あの時のように。

いや・・・あの時以上に、惨憺たる姿だった。

両親の時には、恨む相手が居た。
両親を死に至らしめた犯人を憎むことで、生きていられた。

だが、今度は、彼が恨む相手は、彼自身だった。
彼は自分を恨み、憎み、けれど誰にも罰されることなく、だからこそ、苦しんだ。

そして彼は。
自ら、苦しみが残るその場所に立ち続けた。

私の家を出て、自分の部屋に戻ることになった時。
今回、こんな形でまたも世話になったのだからと。
彼は、今後も、定期的に顔を見せるようにと言う私の要望を聞き入れた。

それから彼は、決まった日に、私のもとを訪れるようになった。
元々彼は、子供の頃から、約束を違えたことは無かった。
急な捜査が入った時以外は、必ず、約束した日に顔を見せた。

そして、今夜も、彼はやって来る。
ただ訪れて、食事をし、帰るだけ。
だがその様子を見るだけで、私は、安堵することが出来る。

彼は、相変わらずだ。
あの青年を失った日からずっと。
重い荷を抱え、孤独に、さ迷っている。

彼はもう二度と、新たな道を見つけることは無いのだろうか・・・・・・。

出前を頼んだ店の寿司は、彼の好物だ。
彼は、相変わらず細いその手で寿司をつまみ、酒を飲むだろう。



澤村が、そんな物思いに耽っていると、傍らの携帯電話が音を立てた。
メールの着信の知らせだ。

澤村は、携帯を手に取り、その画面を開く。
「・・・・・・・・・」

『すいません。今日は行けません』

その文面を、澤村は、無言のまま見つめる。
仕事が入ったのなら、その旨、書き添えてある筈だ。
そう・・・いつもなら、急な捜査が入った時以外、彼が約束を違えたことは、一度も無かった。

何かトラブルに巻き込まれたのかもしれないと、瞬間、不安もよぎったが。
すぐに、そうではないと悟った。
彼に何かあれば、さる筋から即連絡が入るようになっている。

では、何故。

そこには、何の理由も書いていない。
こんなことは、初めてだった。

いや・・・
過去にも一度、彼が約束を違えたことがあった。

後から。
それは、あの青年と共に過ごす為だったと知った・・・。

「!・・・・・・」

澤村は、顔を上げた。
何かが腑に落ち・・・胸の中で、込み上げる物があった。

何の理由も説明も無い。
突然の、約束を断るメール。

それが、何を示すものなのか・・・・・・

火傷で顔の表面が失われた澤村は。
メールの相手に約束を破られたことで、怒っているのか。
それとも、全く別の心境なのか。
傍目には分からない。

澤村自身も。
もし、自分に顔が残っていたら。
今、自分はどんな表情をしているのだろうかと。

そんなことを、思った。

出前はキャンセルしようかと、手にしていた携帯を見つめた。
だが、思い直し、携帯を傍らに置いた。

今夜は、一人で寿司をつまみながら、酒を飲むのも悪くない。
そう・・・・・・

澤村は、立ち上がった。
美味い寿司に合う、美味い酒を、ここに運んでくる為だった。





約束 終






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