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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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ブログ「ひみつの225」管理人のにに子.さんの、こちらの青薪絵に捧げます。

「薪先生…おれ、」






「薪先生・・・おれ、」

その言葉の続きを、薪は予想していなかった。




オリジナルストーリー

「夕刻」





青木は、素直な、向学心の強い学生であった。
あまりにも素直過ぎるその言動に、愚鈍な生徒なのではないのかと、教鞭を取る者として、薪は当初、懸念を覚える部分もあったのだが。

教えれば教える程に、柔らかな海綿が水を吸い取るかの如く、吸収していくその姿に。
この者は、純粋なだけであって、愚鈍では無い、むしろ呑み込みの早い賢い生徒だと、薪が思い直すのに時間は掛からなかった。

その青木が、質問したいことがあるからと、薪の教授室を訪ねたのは、講義が終わり、構内の学生達もまばらになった夕刻のことだった。

薪が、給湯室から運んできたやかんの湯を急須に移し、湯呑に自ら茶を注いだところで、ノックが鳴った。
「入れ」
薪は湯呑を手にし、窓から入る日差しに目を細めながら、澄んだ声を響かせた。

数秒の間。
薪が湯呑から茶を一口すすり、音沙汰の無いドアを怪訝に思って見やったところで、そっと・・・ドアが開いた。

「失礼します」
学生服にマントを羽織った青木は、神妙な面持ちで、中に足を踏み入れた。

講義が終わってすぐ、後で教授室を訪ねても良いかと、青木は、あらかじめ薪に聞いていた。
いつも厳しい口調で学生達をいさめる薪の部屋を訪ねる学生は、そう多くない。
教壇で本を手に、何事かと見上げる薪に、青木は、卒業論文を執筆するに当たり、どうしても質問したいことがあるのだと、薪に告げた。
他でもない勉学のことであるならと、薪は承知したのだった。

「飲むか?」
薪は、自分の湯呑を一度置き、盆に伏せて置いた別の湯呑を手にし、青木を振り返る。
だが青木は、押し黙ったまま、首を横に振った。

薪は首をすくめ、それから改めて青木に向き直った。
青木が抱えている論文のテーマについて、いくつか質問をする。
だが、青木は心ここにあらずといった様子で、口ごもってばかりだ。

一体何しに来たのかと、薪は呆れ、青木に背を向ける。
本棚に手を伸ばし、本気で学問について論じる気が無いなら出て行け、そう叱責しようと口を開き掛けた。
その瞬間。

「薪先生・・・おれ、」
言葉と共に、ふわりと背後に寄り添う人の気配がした。

「・・・!!」
肩に手が置かれ、耳元に、人の熱い息が掛かる。
そして。

「あなたが好きです」




優秀だが厳しい教師である薪の噂は、青木の耳にも及んでいた。

実際に講義を受けるようになり、噂以上であると実感した。
その厳しさをぼやく者も多かったが、青木は、薪の指導に応える程に、自分の力が着実に伸びていくことを感じた。

薪の指導に付いて行くには、真剣に勉学に励まねば落ちこぼれてしまう。
青木は必死に学び、厳しい日々ではあったが、同時にそれは、充実した学生生活でもあった。
それが、胸が塞ぐような思いに捉われていく自分を感じ始めたのは、卒業論文に取り掛かり始めた頃だった。

教壇に立つ薪の姿を見ては、もう間も無くこの人とは会えなくなる・・・そんな胸苦しさで、いっぱいになっていった。

たまらずに、論文を口実に、薪の部屋を訪ねてみたものの。
自分でも、何がしたくて訪れたのか分からず、ドアの前で、ため息を付いた。
やっとの思いでこぶしを固め、ドアをノックしたが、薪の声を聞いた途端、自分の行動に改めて戸惑い、数秒の間、立ち尽くした。

ようやくドアを開けてみれば、そこに、薪の立ち姿が見えた。
ガラス窓から入り込む夕日の中に、薪の細い、けれど凛とした存在感を放つ姿があった。

「失礼します」
そう口にするのがやっとで、青木は中に入った。

考えてみれば、いつも大勢の学生達に交じって対峙するばかりで。
こうして、薪と二人きりになるのは、初めてのことだった。

何がしたいのか、何が言いたいのか、自分でも分からずに。
青木は、薪を見つめていた。
薪の落ち着いた声が耳に響き、けれどその内容は何も聞き取れず。
ただ・・・薪の姿の美しさばかりが、目に飛び込んできた。

薪が背を向ける。
棚に手を伸ばす。
袂から、白い腕がのぞく。

そして・・・

「薪先生・・・おれ、」
青木は、薪の背に歩み寄っていた。
その華奢な肩に、思わず手を乗せていた。

「あなたが好きです」

つぶやいた瞬間。
青木は、自分で驚いていた。

自分は、何を・・・・・・!

「・・・・・・」
沈黙の後、薪が目を上げた。
表情は変わらぬように見え、その目はただ、青木を見上げていた。

「ま・・・き・・せんせ・・・おれ・・・・・!」

青木は、真っ赤になっていた。
ちらりと薪が目をやった先には、薪の肩に乗った自分の手。

「す、すみませ・・・!」
怒鳴られる!・・・と首をすくめ、青木は慌てて手を離す。

だが、薪は、何も言わない。
無言のまま、青木のすぐ目の前に立っている。

「あの・・・」
青木は、話し出した。
考える間も無く。

ただ、溢れる想いをそのままに・・・

「薪先生、オレ、あなたが好きです。あなたのことが・・・好きなんです!」

口に出してから、その言葉を噛み締めた。
そうだ、そうだったのだ。

自分は・・・

「・・・それで?」
薪の桜色の唇が、ようやく紡いだ言葉は、その一言だった。

「え? それで・・・って」
青木が戸惑っていると、更に、薪は続ける。
「好きだから? 僕にそれを告げてどうする? まさか、プロポーズでもするつもりか?」
「えっ・・いや、その・・・」
青木は、必死に自分の気持ちを探る。

「特に・・どうしたいとか、そんな目的があったわけではありません。オレ自身、ここに来るまで、何がしたいのか分かりませんでした。ただ、オレは・・・気持ちを伝えたかったんです。あなたに」
考えながら、自分の気持ちを正直に伝える青木に、薪は言う。

「そうか」

それだけ言って、薪は再び背を向けた。
「用が済んだのなら、もう帰れ」

「・・・・・・」
青木は、そんな薪の背を見つめていた。
先刻、自分が掴んでいたその肩を、華奢な身体の線を、辿った。
そして・・・

「・・・!」
青木は、再び、薪の背後に寄り添った。
そして同時に、その肩を腕に抱き締めた。

「何を・・」
薪が眉を寄せ見上げると、青木はすかさずその小さな頭を手に捉え・・

「っ・・!」
青木は、薪に口付けた。
薪は、青木の腕の中で、動きを止めた。

薪の細い肩を抱きすくめ、強く深く口付ける青木。
その青木の腕に抱かれ、動くことを忘れた薪。

・・・やがて、青木はそっと、薪を離した。
薪は、目を伏せる。

「・・気が済んだか?」
「え?」

青木が聞き返すと、薪は、目を上げた。
「欲情の強い年頃だ。発散する場も必要とするだろう。この学校には女学生が居ない。お前が、僕のような容貌の教師を、女の代わりに見立てるということも、有り得ることだ」

「代わりだなんて、そんな・・・!」
反論しようとする青木を、薪は、強い視線で見返した。

「学生のお前には未来というものがある。今回に限り、この場で全て忘れてやろう。だが、もう二度と、こんな真似はするな」
「忘れ・・・るんですか? 今、起きたことを、全て無かった事に・・・?」
青木は、薪を見つめて、言った。

「いいか。今度こんな真似をしたら、落第点を付けてやる」
そう言い、薪は青木から離れ、窓際に立ち、その向こうを見やる。

「もう帰れ」
日は徐々に傾き、その日差しは、薪の横顔に陰を造っている。

その横顔を見つめながら、青木は言った。
「望むところです」
「・・?」
薪が目を上げると、青木は言う。

「落第にして下さい。卒業出来なければ、あなたと離れずに済む」
「・・・!」
薪は、青木から目をそらす。

「帰れ」
「・・・・・・」

「聞こえなかったか? 出て行け」
静かに、だがキッパリとそう言われ、青木は、無言のまま、薪に背を向ける。

ドアの前に立ち、もう一度薪を振り返ってから、青木は、出て行った。




薪は、窓の外を見ていた。
青木が一度立ち止まり、校舎を見上げている姿が見える。

それから、青木は背を向け、遠ざかって行った。
見送りながら、薪は思う。

あの年頃は、とんでもないことをやらかすものだ。
欲情にかられて、突っ走ることだってある。
平静に戻った時に、自分がどんなに馬鹿だったかと知ることだろう。

そう・・・青木は、未来ある若者。
この学校を出た後、エリートコースを歩み、妻をめとり、子を成すだろう。
素直で真っ直ぐなあいつなら、きっと幸せな未来を形作れる。

薪は目を伏せ、我知らず、自分の肩を自らの手で掴んでいた。
そこに、青木の大きな手が、力強い腕があったことを、思い出させた。

更に、耳に掛かった青木の吐息が。
自分の口を吸った青木の唇の感触が。

思い起こされた。

薪は腕をほどき、再び窓の外を見る。
もうそこに、青木の姿は無かったが。

薪はまるで、まだ何かを探すかのように、いつまでもその先を、見つめていた。




夕刻 終





4/11追記:現在FC2のブログ拍手ページに障害が出ている模様です。申し訳ございませんm(_ _)m
更に追記:回復したようです。






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■ 非公開コメ下さったNさま

〇6/9に非公開コメント下さったNさま

コメントありがとうございました。
先程、メールにてお返事を送らせていただきましたm(_ _)m

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