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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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Scene3:消失




薪を鈴木が呼んだのは、鈴木が木更津悠太の脳を見始めて、程なくの事だった。
鈴木の重い表情に、薪は、鈴木の見た物が、予想とは違っていた事を悟った。

「ここからだ」
端末を前に椅子に座り、システムを操作する鈴木。
薪はその傍らに立ち、共に画面を覗き込む。

事故の起こった場所に程近い路地。
街灯に照らされながら、その道を進む悠太の視界。
そこに、数人の少年達が現れた。

「防犯カメラに映っていた少年達だ」
鈴木がつぶやき、薪は無言のまま、画面に見入る。

いかにも柄の悪そうな少年達が、こちらを、悠太の姿を捉えた。
彼らと接触するのか・・・と思いきや、悠太はすぐにきびすを返す。

「接触はしていない・・・!」
薪が、小さくつぶやいた。

少年達を避け、悠太は来た道を引き返す。
そして、少し回り道をすると・・・

「どこだ。ここは」
薪は、身を乗り出した。
街灯が有るとは言え、深夜の路地だ。
薄暗がりの中に浮かび上がる、ブランコ、そしてジャングルジム・・・

「公園・・・」
薪の言葉に呼応するかのように、悠太は、入り口の看板に目を留める。
『笹沼児童公園』と、そこには書かれていた。

悠太は、公園の中に入っていく。
右に、左に、中央にと、視界は振れる。

「誰かを、探している・・・?」
と、唐突に、悠太の視点が止まった。

「何かが見えた? いや、見えたのではなくて・・・」
鈴木も、薪の言葉にうなずいた。
視線の先には、何も変わった物は見えない。
薄暗がりの中に、木々が浮かび上がるだけだ。

つまり・・・

「彼はここで、背後に声を聞いたんだ」
鈴木は言う。
悠太が振り返る。

振り返って・・・

「!!」
薪は、息を呑んだ。

悠太の視線の先。
そこに、人が立っている。
取り立てて、変わった人影ではない。
だが、悠太は・・・この視覚者は、明らかに、目の前の人物に、恐怖を感じていた。

立っているのは、細身の少年だった。
色が白く、大きな目をしており、短い髪は、暗がりの中でハッキリとは分からないが、やや赤みがかっているようだ。
ブレザーにネクタイの制服姿。
視覚者に向かい、何か話し掛けている。

『オマエハ・・・ボクヲ・・・』

薪が、少年の言葉を読唇で読み取る。
だが、どうも変だ。
鮮明なようで、時々ぼやける視界。
口の動きが、ハッキリと読み取れる時もあれば、一瞬にしてまた見えなくなる・・・

「・・・!」
少年が、悠太に向かって腕を伸ばした瞬間、薪は確信した。

「実体じゃない。だが、この腕は・・・!」
「そうだ」
鈴木は、画を一時停止した。

「オレも、始めはよく分からなかった。暗がりだからか、それとも・・・」
鈴木の言わんとする事を理解し、薪が引き継ぐ。

「間違いない。制服姿の少年は、木更津悠太の幻覚だ。だが、画像の全てが幻覚というわけではない。立っている少年は、長袖の上着を着ている。だが、手を伸ばし、悠太の手首を掴んだその瞬間、相手の腕はむき出しになっている。おそらく、実際にそこに『誰か』は居たんだ。袖の短い服を着ていた、誰かが」

鈴木は、画面を食い入るように見つめる薪を見やり、それから、再び、画像を動かし始めた。
視覚者は腕を捻られ、それを振り解く。
そして・・・そこから逃げ出した。

幾度か振り返る、その度に。
制服姿の少年が、無表情で近付いてくる。

悠太は夢中で走り、路地から大通りへと飛び出した。
一気に視界が開け、次の瞬間、眩しい光を浴びて・・・

「・・・・・・」
消えた画面を、薪も鈴木も、黙って見つめていた。

やがて鈴木は、システムのスイッチを切り、言った。
「防犯カメラに映ってた少年達は、無関係だったんだな。だが、誰かが木更津悠太の後を追っていたのは確かだ。その挙句、彼は事故に合った」

「彼は、公園の名を確認し、誰かを探していた。誰かに・・・腕を掴んだこの人物に、呼び出された可能性が高い。しかし、何故この人物に、少年の姿が重なったのか」
薪は、軽く握った手をアゴに当て、考え込む表情を見せる。

「・・・この少年と似た人物だったとか、そういう事か? いずれにせよ、これじゃ、実際にそこに居た人物の顔が分からないな」
鈴木は言い、改めて、端末に向き直った。
「オレは、もう少し、さかのぼって見てみるよ。視覚者が呼び出された経緯が分かるだろうし、見えた少年も出てくるかもしれないしな」

「僕は、木更津悠太の交友関係を照会する事にする」
言いながら、薪は既に足を踏み出していた。
その脳内で、思考が巡る。

あれは、中学か高校の制服、おそらく、視覚者の母校の物だろう。
幻覚で見えた少年については、学校に照会するか、あるいは、この件の依頼主である被害者の両親に尋ねた方が早いかもしれない・・・

薪は、すぐさま電話に向かった。




彼は、シンクで顔を洗っていた。
自宅ではなく、どこかの店のトイレのシンクのようだ。

タオルで顔を拭いながら、目の前の、壁に横に広がった鏡を見る。
そこには、細身の青年が映っていた。

彼は、自分の髪を手ですき、満足気な表情をする。
以前は、常用していた薬のせいで髪は明るい色に染まり、そんな自分の髪が嫌で、いつも短くしていた。
今、鏡に映る髪は黒く、襟首まで伸びている。

彼は、肩に掛けたバッグを手にし、中から、新聞記事の切り抜きを取り出した。
地方版に載った、ごく小さな記事。
深夜に起こった交通死亡事故を報じた物。
それをひとしきり眺め、またバッグに入れると、左右を見渡し、この室内に誰も居ない事を確かめてから、バッグに手を入れる。

今度取り出したのは、預金通帳だった。
そっと開き、金額を確かめ、また閉じる。

「・・・・・・」
通帳の表紙を眺めながら、彼は、心の中でつぶやく。

僕は今、こうして生きている。
そして、生き延びた僕には、やるべき事が有る。

ただ・・・

ごめん・・・蓮、ごめん。

僕は、君まで消すつもりは無かった。
でも、僕が生き延びる為には、こうするしか無かったんだ。

『いいんだよ・・・』
どこからか、声が、聞こえた気がした。

『いいんだよ、逸人。お前が生きられるなら、オレは、いいんだ』

青年が見つめるその先には。
手にした通帳の表紙には・・・『立川 蓮』と、書かれていた。






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