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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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Scene4:使命




「捜査を・・・中止?」

座ったまま、振り返り見上げる鈴木に、背後に立つ薪が、うなずいて見せる。
「そうだ」
「何故・・・?」

「これ以上の捜査は、無意味だそうだ」
「しかし、遺族は、真実が知りたいと言ってたんだろう?」
「その遺族の意向だ」
「え?」

鈴木は目を見開き、それから、頭に片手を乗せて言う。
「どういう事なんだ・・・?」
「僕が、視覚者の目に映っていた少年の写真を送り、遺族への照会を手配したところ、回答の代わりに、これ以上の捜査は止めて欲しいとの申し入れが入ったという事だ。総監から直々に、確認の連絡も入った」

『ご苦労だった。薪警視正』
薪の脳裏に、電話口で聞こえた、総監の声がよみがえる。
その言葉は、ねぎらいと言うよりも、捜査の中止を強制する物だった。

「・・・けど、被害者が呼び出された画が見つかったところなんだ。見てくれ」
鈴木が指し示す端末の画面には、視覚者が手にしたメモが映っている。

「これは、アパートの郵便受けに入っていた。あの日、あの場所に来るように指定されている。木更津悠太は、差出人が書かれていないこのメモを目にして、一度ゴミ箱に捨て、その後もう一度拾って眺めている。そして、結局行くことにしたんだ。おそらく気になったんだろうな・・・この部分が」

「・・・・・・」
薪は、無言で画面を見つめる。
そこには『去年の10月に起きた件について、話したいことがある』と、書かれていた。

「彼には、あんな時刻に、あんな場所に呼び出されて、行かなきゃならない理由があったんだ。そしてそれは、去年の10月に起きたことに起因している・・・」
鈴木の言葉に、薪は、やや目を伏せる。
そして、その目を再び上げると、きっぱりと言った。

「この件は、これで終わりだ。鈴木」
「薪・・・」
鈴木は何か言い掛けたが、それ以上は言わず、代わりに、ふう・・・と、息を付く。

そして。
「そうだな。元々、第九で手掛けるような事件でもなかったし。いずれにせよ、直接の死因は交通事故だ。それはハッキリしてるしな。この件は終わりにして、オレも、連続殺人の捜査に戻るよ」
言いながら、鈴木はシステムを操作し、目の前の画面を消した。

それを見つめる薪は、視線を落とし、それから、静かに言った。
「・・・まずは、休んだらどうだ? 捜査の掛け持ちで、お前、ずっと仮眠も取ってないだろう」
薪が言う間に、鈴木は立ち上がり、そして口を開く。

「オレに休息を取れって?」
言いながら、鈴木の手が伸び、薪は、ハッとする。
鈴木の手は、薪の頬からアゴを捉えていた。

見上げる薪の顔。
元々白いその顔が、更に青白さを増している。
その顔色は、薪が現在、どんな生活状態にあるかを、如実に物語っていた。

「部下に指示を出すなら、まずは上に立つ者が手本を示すべきじゃないか?」
そう言って、鈴木は手を離した。

薪は、鈴木を見上げたまま。
目が大きく見開き・・・やがて、その口元に、笑みが浮かんだ。

それに呼応するように、鈴木もニッコリと微笑んだ。




連続殺人事件に関して、必要なデータが全て揃い、報告書が提出されたのは、二日後のこと。

その夜、打ち上げが予定されていたが。
「悪い。先にやっててくれ。オレはちょっと、調べたいことがあるから」
そう言って、後輩達を見送り、鈴木は一人残って端末に向かっていた。
そこに・・・

「なんだお前。まだ居たのか」
入り口から声を掛けたのは、上への報告に赴き、捜査の事後処理を全て済ませ、戻ってきた室長だった。

「ああ。ちょっと・・・」
言い掛ける鈴木に、薪が近付きながら言う。
「やはり、お前もか」
「うん?」
薪の言葉に、どういう事かと見上げる鈴木の前に、資料が置かれた。

「これ・・・!」
鈴木は、資料を手に目を見開く。

鈴木が見ていたのは、木更津悠太の脳。
そして、薪が差し出したのは、悠太の母校である高校の卒業アルバムだった。

「去年の10月にさかのぼって、今、見始めたところだ」
鈴木が言うと、薪はうなずき、アルバムをめくる。
「ここを見てみろ」
「・・・!」

薪が開いた頁には、紛れも無く、あの、悠太に見えていた、制服姿の少年が居た。
「ここにも。それに・・・ここだ。授業風景や、クラブ活動、学校行事・・・様々な写真に、彼は映っている。だが、見てみろ」
「・・・?」
薪が開いたのは、クラス毎の、個別写真が乗った頁だ。
その頁なら、先程の少年の顔写真と共に、名前も記載されている筈だった。

ところが・・・

「居ない・・・!」
鈴木は、目を瞬かせた。
「そうだ。何故なら、これは卒業生の一覧であり、彼は、卒業をしていないからだ」
薪の言葉に、鈴木は、少年が映っていた頁を再び開く。

やや赤みがかった短い髪と、はっきりとした目鼻立ちを持つその少年は、周囲の少年達と比べても、ひときわ華奢で小さい。
だが、どの写真でも、明るい笑顔で、堂々と正面に立っていた。

「名前は、桐生逸人」
薪が続ける。
「彼が映っているのは、昨年の秋口までだ。それ以降の行事には映っていない。学校に照会したところ、彼は、10月の末から休学したとの事だった」

「休学?」
「彼には持病があった。それでも、治療を続けながら学校に通っていた。成績は良かったらしい。クラス委員長や、文化祭の実行委員も務めていた。だが、病状が悪化し、学校を休学して療養する事になった。そして・・・」

薪が、ほんの一呼吸、間を置く。
それだけで、鈴木は、その先が聞かずとも分かるような気がした。

「復学する事なく、彼は、3月に亡くなったそうだ」
「・・・・・・」
鈴木は、アルバムに映る少年を見つめた。
学校生活を謳歌していた事が伺える、その笑顔が、胸に迫る・・・

「それにしても・・・。普通、亡くなったからって、個人写真から外すものなのか? ここまで映ってたら、この頁にも、クラスの他の生徒と並べて、彼も入れてやっても良さそうなものなのに」
鈴木は、首を振りながら言った。

「何か・・・有るのかもしれない」
薪の言葉に、鈴木は顔を上げる。
「何かって?」
「分からない」
「うん?」

「分からないんだ。学校側に、捜査の為の情報提供を要請したら、一通りの回答が有った。桐生逸人についても、これだけの回答が得られた。だが・・・」
鈴木は、黙って薪の話の続きを待つ。

「だが、木更津悠太と、桐生逸人の関係性について尋ねたら、急に、先方の態度が変わった」
「何も、回答は無かったのか?」
「有った。木更津悠太と桐生逸人は、同じ学年で、三年の時は、隣りのクラスだった。そういう回答が有った」
「そうか」
「だが、それだけだ」

薪は視線を遠くに運び、何かを考え込む表情になる。
「明らかに、その質問になったら、態度が変わったんだ。なのに、そんな回答しか得られなかった」
「つまり、二人の間に、何か有ったにも関わらず、口を閉ざしているという事か?」
「・・・この学園は、私立の男子校の中でも、政治家や経済界の大物の血縁や芸能関係者も多く通う、言わば名門で通っている学校だ。一方で、醜聞は学校側も保護者も隠ぺいしたがる傾向が強い筈だ」

「つまりは、何か醜聞が有ったと。この・・・おそらく、昨年の10月に」
「・・・・・・」
鈴木が言い、薪は、無言になる。

「・・・どうした?」
目を伏せる薪の様子に、鈴木は、薪の顔を覗き込む。

薪は、目を伏せたまま、話し出す。
「もしかしたら・・・掘り返さない方が良いのかもしれない。調べを進める事で、木更津悠太と桐生逸人・・・亡くなった二人の少年と、その遺族の傷を、えぐる事になるかもしれない。この二人だけでなく、周囲の、未来ある若者達をも巻き込んだ『何か』が有る可能性だって有る・・・」
「・・・・・・」
「やはり、この捜査は、止めるべきなのかもしれない」

言いながら、アルバムを閉じた薪の手に、鈴木は、自分の手を、そっと重ねる。
「なあ、薪・・・」
薪は、目を上げる。

「薪。お前、この前だって、この件はこれで終わりだって言ったじゃないか。言ったにも関わらず・・・こうして調べを進めてたのは何故だ? そもそも、この捜査を引き受けたのは何故だ? 被害者の無念を、真実を知りたいという遺族の想いを、感じたからじゃないのか?」
「・・・遺族は、もう知りたくないと言っている」

「ああ。だが、被害者本人は? 木更津悠太は、何て言った? 誰かに呼び出され、追われなければ、飛び出して車にはねられる事も無かった。最終的には事故とは言え、追ってきた相手に、殺されたも同然なんだ。相手だって、彼が事故に合う場面を見ていた筈だ。なのに、自分は無関係とばかりに、大手を振って歩いてるんだ。そんな事を、彼が、木更津悠太が望んでると思うか・・・?」

鈴木の言葉に、薪は、眉根を寄せる。
「分からない。僕は・・・」
「少なくとも、お前は、彼の無念を思い、真実を探ろうとした。オレも同じだ。これまでだったら、被害者が死んだら終わり、藪の中のままだった事件が、MRI捜査によって、真実が明るみに出るようになったんだ。その為の第九だろ?」

「・・・・・・」
「そしてオレ達は、その為の使命を帯びてるんだよ。そうだろ?」

いつの間にか、鈴木は、重ねていた薪の手を、その手に握り締めていた。
薪は、自分の手を掴む鈴木の手に目をやり、それから、鈴木の顔に視線を映し、その瞳を見つめた。




居酒屋で、一つのテーブルを前に、並んで座っている男達が居た。

「・・・来ないな」
「そうすねー・・・」
「・・・・・・」

三人は共に、ビールのジョッキを手にしていた。

「調べ物って言ってましたけど、なんか事件に関わる事なんすかね」
「さあな」
「薪さんも一緒なんすかね」
「さあな・・・」

「オレ思うんすけど」
言いながら、黒髪の男が、ジョッキを置いて、頬杖を付いた。

「あの二人って、いつもツーカーっていうか、何かにつけて、こっちは蚊帳の外っつーか、疎外されてる感じがするんすよね・・」
あとの二人は、『また始まった』とでも言うかのように、顔を見合わせる。

「いや、オレは別にいーんすけど! 室長と副室長の立場では、こっちには言えない事もあるっつーのも分かるんすけど。でも、第九ってのは、全員でチームじゃないですか。正直どうかなって思うんすよ・・・!」
頬杖を付いていた手が、いつの間にか握りこぶしに変わり、男は顔を上げて力説し始めた。

「・・・ま、いいから、飲んで食えよ」
「5人分頼んじまったからな。どんどん食え」

後の二人に促され、男は箸を手にし、目の前の唐揚げに手を伸ばした。






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コメント

■ 鍵拍手コメ下さったAさま

〇9/9に鍵拍手コメント下さったAさま

コメントありがとうございます!

「らしくていい」「自然にしてそう」とおっしゃっていただくと、ホッとします。
今回、別世界物以外の「秘密」SSを書くのがあまりに久しぶりなせいか、浮かんでくる光景が、彼らの行動が、自然な物かどうか自信が無いもので…(><;)
ありがとうございます。

小池のイメージっぽい、確かにそうですね(^^;)

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