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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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Scene8:親友




コーヒーを煎れたから・・・という、ただそれだけの理由で、鈴木は室長室を訪れた。

戻ってきたばかりの薪は、顔に疲弊の色を見せている。
総監と、どんなやりとりがあったのか、鈴木には、聞かなくても想像が付いた。

「お前の分」
そう言って、鈴木は、座る薪の目の前にカップを置き、自分もカップを手に、椅子を引き寄せ、薪の傍らに座った。

「僕は、ミルクは・・・」
「入れた方がいいんだぜ。こういう時は、その方が落ち着く」
「・・・・・」
薪がカップに手を伸ばし、取っ手にその細い指を絡める様子を確認してから、鈴木も、カップに口を付ける。

ただ、黙々と。
二人は、互いにコーヒーをすすった。

「・・・仲が良かったそうだ」

唐突に、薪は言った。
鈴木は顔を上げ、けれど、質問を挟むことはなく、薪の話の続きを待つ。

「教師に話を聞いた時、桐生逸人に、親しい人間は居なかったかと尋ねた。すぐに、立川蓮の名前が出た。スポーツは出来ないが、勉強は得意だった逸人。背が高く、スポーツ万能で、サッカー少年だった蓮。全くタイプは違うが、二人は仲が良かった。二人とも、それぞれの分野でリーダーシップを発揮して、充実した学校生活を送っていたそうだ」

教師は、言っていた。
『病院に、桐生君の見舞いに行った時も、本人には会えませんでしたが、立川君に会って、桐生君の様子を伺うことが出来ましてね。立川君は、よく見舞いに行っていたようです。桐生君も、学園の関係者には会いたくないと言いながら、立川君だけは、病室に招いていたようで』

「そうか・・・。あんな辛い目に合った後でも、両親以外にも、心許せる人間が居たんだな。良かった」
鈴木の言葉に、薪は振り返る。
カップから立ち昇る湯気の向こうで、鈴木の顔は、安堵に微笑んでいるようだった。

「・・・・・・」
「そんな友人が居ながら、復讐なんて・・・」

薪が無言で見つめる中、鈴木はつぶやき、それから、思い付いたように、言った。
「そうだ。お前、その教師から聞き取りをする以前に、立川蓮について調べろって言ったよな。あれは、どうしてだ?」

「・・・映っていたからだ」
「うん?」
今度は、鈴木が薪を見つめる。

「木更津悠太の視界に。彼らが、桐生逸人を襲ったあの日、公園から出たその瞬間に、すれ違った少年が、立川蓮だった」
「え・・・!?」
「視覚者本人は、気付いていなかった。だが、立川蓮の方は、視覚の端で、ほんの一瞬、彼らを振り返っていた」
「・・・・・・」

鈴木は、記憶の中の画像を探る。
確かに、公園を出てから、木更津悠太とその仲間達は、何人かの人間とすれ違っていた。
だが、彼らと目を合わせた者はなく、知り合いらしき者の姿には、気付かなかった。

「制服ではなく、白いTシャツ姿だった。サッカーの練習の後に、着替えたのかもしれない。いずれにせよ、その顔は、アルバムに載っていた生徒の一人、立川蓮だった」
アルバムに載っていた卒業生の数は、約300人。
薪には、その顔と名前が全て記憶されている事に、いつもの事ながら、鈴木は舌を巻く。

「そのまま、蓮は、何も気付かずに公園の脇を通り過ぎたかもしれないし、気付いて立ち寄ったかもしれない。それは分からない。いずれにせよ、逸人が休学してからも付き合いが有ったのは、両親以外では、立川蓮だけだ。逸人の死の真相についても、蓮なら知っている可能性が高い」

「・・・つまり、もし、桐生逸人が復讐をしているのだとしたら、立川蓮が協力をしていると?」
「その可能性も有る。あるいは、協力を求められ、拒んでいたとしたら・・・」
「え!? まさか・・・」

「失礼します!」
室長室を、部下の一人が訪れた。
足早に、薪に近付く。

「立川蓮ですが。大学の人間によると、先月から講義に出席していないそうです。海外に居る両親に再び問い合わせたら、預金から生活費が引き出されている様子も有るし、定期的にメールもやりとりしていると。ただ・・・電話で声を聞くことは、しばらく途絶えているそうです」
「・・・・・・」
薪と鈴木は、顔を見合わせる。

「それと。先程、役所からの連絡が有りました。こちらは、病院の医師からの回答です」
「・・・・・・」
薪は立ち上がり、差し出された書類を手にする。

更に、他の部下が駆け込んでくる。
「室長! 画が出ました! 転落死した深谷貴則の脳データです」
彼らは執務室に集まり、一斉にモニターに注目した。

そこは、ビルの屋上公園の一角。
視覚者の目に映る、一人の青年。

『お前達が、僕を襲ったのも、公園の中だった』

青年の手には、ナイフが握られている。
視覚者は、後ずさる。
青年は首を傾けて、視覚者が何か言うのを、聞いているようだ。

『驚くのも無理はないな。僕は、死んだことになっていたからな。でも、こうして、僕は生きている』
『奇跡が起きたんだ。そう・・・奇跡だ』
『不思議に思うかい? 僕はね、蓮になりすましてたんだ。近所の人に目撃されると面倒だから、家を出てはいるけどね。彼の預金や持ち物は僕が使ってる。だって、僕は亡くなった人間だから、動こうとすると、他人の名義を借りなきゃならないんだよ』

『蓮は、僕が殺した。僕が生きる為には、彼は消えなきゃならなかったんだよ。彼も・・・それでいいと言ってくれた・・・』
言いながら、そっと、青年はうつむく。

しかし、次の瞬間、顔を上げた時には、目を大きく見開き、不敵な笑みを浮かべていた。
青年は、視覚者に近付いた。
『どうする? ここで僕に刺されて死ぬかい? それとも、自分から飛び降りる? どちらでも僕は構わないよ。声も出ないんだな。あの時、叫ぶ僕の口を塞いだお前が』

やや間を置き、青年は目を細め、言う。
『・・・誰でもいい。お前達がやった事、その全てを、僕は許さない・・・絶対に、許さない!』

その瞬間。
追い詰められた視覚者の体が、屋上の柵を越えた。

その瞳に、こちらを見つめる青年の姿が、映っていた。

「これは・・・」
薪も鈴木も、絶句していた。

今度は、幻覚ではなかった。
正真正銘の、現在の青年の姿が、その目に脳に、ハッキリと焼き付けられていた。

「薪さん!」
一人、どこかと連絡を取っていた部下が、薪を呼ぶ。

「山村稜介は、自宅に居ました。彼は、深谷貴則と木更津悠太の死を知り、田嶋元哉と連絡を取ったようです。そして、田嶋元哉は、ある人物に呼び出されていると言っていたそうです。山村稜介は怯えていて、行くのはやめろと言ったそうですが、田嶋元哉は、むしろ会いに行って確かめてやると言っていたと」

「確かめるだと?」
「呼び出した人物は、亡くなった桐生逸人を名乗っていたそうです。しかし、田嶋元哉は信じず、行って警察に突き出してやると、息巻いていたそうです」

「・・・・・・」
薪は再び、先程の画面を見つめる。

「その、田嶋元哉ですが、呼び出されているのは、今日の夜だと話していたそうです。正確な時刻や場所は、山村稜介も聞いていませんが、田嶋元哉は現在、部屋にも学校にもおらず、居場所が分かりません。今、彼の携帯電話のGPSを照会中です」

部下の報告を聞きながら、薪は、唇を噛み締める。
先程映っていた青年の顔。
その言葉・・・

「車を出せ!」
薪はそう叫び、足早に歩き出した。
鈴木が急いで上着を手にし、後に続く。

「え!? 一体、どういう──!?」
薪や鈴木と共にモニターを見ていた部下は、状況が、今一つ呑み込めないようだった。

だが、薪には今、周囲の声は、耳に入らなかった。

すぐに行かねば。
一刻も早くそこに辿り着かねば。

彼は──────






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