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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
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Scene9:狂気




埋立地の、開発途中の公園。
柵に囲まれ、立ち入り禁止の札が出ているにも関わらず、その柵の向こう、奥の一角に、人影があった。

夜も更け、少し離れた所から、周囲を照らす照明の光が届くだけ。
薄明りの中に浮かび上がる、二人の青年の影・・・。

「・・・お前が、深谷と木更津を殺したのか!?」
「僕は何もしていない。ただ、これを持って、ちょっと昔話をしたら、自分から死んで行ったんだ。二人ともね」
青年は、相手の前に、ナイフを振りかざしながら、言った。

「くっ・・・!」
じりじりと後ずさる相手に、青年は言う。
「お前も同じようにしてくれれば、手間が掛からないんだけどな。痛い思いをするのは、イヤだろ? お前の後ろにある穴、自分からそこに落ちてくれれば、後は、まるでごく自然に埋まったかのように、土をかぶせておいてやるよ」

相手が、そっと背後を見やると、工事中の為、土を掘り返した大きな穴がある。
「!・・・」
隙を伺い、そこから走り出そうとするが、ナイフが目の前にちらつき、逃げ場を塞ぐ。

「そんなことしてみろ! 今日オレが呼び出された事、山村は知ってるぜ。オレが死んだら、お前は逮捕される!」
「そんなわけないだろ? 僕は死んだ事になってる。死んだ人間を、どうやって逮捕するんだ・・・?」

「お前は・・・桐生逸人じゃない!」
相手の言葉に、青年は肩をすくめる。
そして目を上げ、相手をキッと睨み付けた。

「なあ・・・あの時の事、覚えてるか? 僕はよく覚えてる。お前達は、僕を裸にし・・・そして田嶋、お前は、僕の腹の上にぶちまけたよな」
「っ!!」
追い詰められた青年、田嶋元哉は、目を見開き、震え出す。

「さすがにその部分は、撮影されなかった。だから、ネットにも流れていない。もちろん、僕は親や教師達にも話していない。だって・・・そんな事、話せると思うかい?」
「!・・・・・・」
元哉は顔をゆがめ、落ち着きなく、下を向き、また顔を上げ、青年を睨み返す。

「誰も知らない。・・・この事を知ってるのは、お前達四人と・・・そして、僕だけだ。僕が、桐生逸人だという証拠だ。僕は死んじゃいない。こうして、ここに立ってる・・・!」

「狂ってる・・・!」

「そうかな。そうかもね」
言いながら、青年は、更に相手との距離を詰め、ナイフを突き付ける。

「ひっ・・・!」
相手は尻を付いた。
その首に、ナイフが掛かる。

「僕をあんな目に合わせた罰だ。どうする? 僕に刺されて死ぬか? それとも、自分から後ろに落ちるか? 選べよ・・・」
「違う! 桐生じゃない! だってお前は・・・!」

その時。
二人の姿を、眩しい光が覆った。

思わず二人は振り返る。
次の瞬間、元哉は光に向かって走り出した。

青年が、手をかざして光の向こうを見つめると。
サーチライトを持つ制服警官の陰に逃げ込む、元哉の姿が目に入った。

青年は立ち上がる。
ナイフを・・・自分の首に突き付けて。

青年から数メートル離れたその場所に、制服警官が二人、そしてその前に、薪と鈴木が、並んでいた。
薪と鈴木は、前方に立つ、青年を見つめた。

薪は言った。

「もう、終わりにするんだ。── 立川蓮君」

青年の目が、大きく見開く。
ナイフを手に立っているのは、襟足まで伸びた黒い髪を持つ、細身の青年。
・・・そう、細身ながら、全身に筋肉の付いた、長身の、精悍な顔立ちの青年だった。

「蓮は、居ないよ。僕が、殺した」
まるで、アンドロイドがしゃべるかのように、抑揚の無い声で、青年は言った。

薪は、もう一度言った。
「君は、立川蓮だ」
「違う」
目を見開いたまま、青年は言う。

「違う。確かに、僕は蓮に成り済ましていた。蓮の名前であいつの親にメールを送り、蓮の口座から金を引き出していた。蓮の名義で泊まったりもしたんだ。僕は・・・」
「君は学生証を持っているね。その写真と、今ここに立っている君の顔は同じだ。整形したとでも? だが、もし顔を変える事が出来たとしても、その身長や体格までは変えられないだろう。その脚の筋肉は、君がサッカーを続けていたからこそ付いたものだ」

「僕は・・・蓮を、殺した」
うわ言のようにつぶやく青年に向かい、薪は、静かに言う。
「君は、生まれた時から、立川蓮だ。それ以外、有り得ないんだ」

「蓮・・・蓮は・・・僕は・・・」
「死んだのは、桐生逸人の方だ。死亡診断書も有る。君は知らないだろうが、診断書を書いた医師は、警察関係の仕事もしていて、僕も知ってる人物だ。診断を違えるなんて事は無い。ここに来るまでに、逸人君のご両親にも確認した。逸人君は、墓地に眠っているよ」

「はやと・・・」
青年の目が、どこかを見つめている。
その脳裏に、浮かび上がる光景・・・

『僕は、生きる。これからも生きる。必ず・・・! だって蓮、何があっても、僕はお前の中で生き続ける。そうだろう?』
『たとえ手術が失敗しても、僕が出来なかった事を、蓮なら叶えてくれる。僕は蓮の中で生きていく。蓮の中で生きて、やりたい事をするんだ・・・』

「れんの・・・なかで・・・いき・・て・・・」
青年は、つぶやいた。

これまでの出来事が、水が流れ込むように、一気に頭の中に押し寄せる。
自分を呼ぶ、誰かの姿が見える。

『蓮、来いよ!』
『蓮』
『蓮・・・!』

赤みがかった短い髪。
大きな瞳を細めて、こちらに向かって笑う・・・

「ぼく・・・おれ・・・は・・・オレは、オレは・・・」
青年は、一点を見つめ。

「ああああああああっ・・・・!!」
叫び、頭を抱える。

とっさに薪と鈴木は視線を交わし、鈴木は前に進み出た。
青年はその場に座り込み。
鈴木は腰を屈めると、慎重に・・・青年に近付き、頭を抱えるその右手に握られたナイフを、指を一本一本剥がして取り上げた。

それから、その肩に手を回し、言った。
「もう大丈夫だ。・・・終わったんだ」

青年の体が震え出し、慟哭が響く。
「あああっ・・・! 逸人・・・逸人・・・! どうして、どうして・・・!!」

青年、立川蓮は、頭を抱えたままうずくまり。
震えながら、涙を流していた。






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コメント

■ 鍵拍手コメ下さったAさま

〇9/13に鍵拍手コメント下さったAさま

コメントありがとうございます。

色々と考えつつ読んで下さったのですね。
とてもありがたいです。

そうですね。
逸人が犯人である事よりは、救いがあるかもしれません。

お陰様で、先程、最終話をUP出来ました。
見守って下さり、感謝致します。

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