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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
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Scene10:鎮魂




気が付くと、いつも傍に居た。
それが、当たり前になっていた。

逸人の病気の事だって、よく分かっていたのに。
それでも、永遠の別れが来るなんて、信じられなかった。

逸人は丈夫になってきているように見えたし、医者になるという道に向かって、意欲的に歩んでいた。
自分はスポーツに身を投じていて、それぞれ、違う道を歩む事になっても。
それでも。

ずっとその笑顔が、身近に有り続けると、信じていた。

あんな事さえ、無ければ・・・

『何だよ、またあいつらが、何か・・・』
『ちょっと因縁付けられただけさ。気にしてないよ』
『気を付けろよ。何かあったら、すぐにオレに言え』

気付いていたのに。
あいつらが、逸人に目を付けている事に。

『蓮、部活の後、一緒に帰るか?』
『ああ、悪い。試合が近いから遅くなると思う。先に帰っててくれるか?』
『そっか。頑張れよ』

笑顔で、逸人は手を振った。
あの時・・・逸人より、サッカーを優先した自分。
オレが居れば、防げたかもしれないのに。
オレが・・・

『桐生の顔、見たか?』
『へへっ・・・』

『!!』」
帰る途中、耳に入った声。
遠ざかる奴ら。

まさか・・・!

『逸人! 居るのか? 逸人!?』
返事は無かった。
ただ・・・奥から、身じろぎする気配がした。

あの時の光景は・・・決して忘れられない。

逸人は、声も出さずに、泣いていた。
自分は何も出来なかった。
ただ、抱き寄せるだけで。
何も・・・

復讐してやる。
そう思った。
けれど。

『もう関わるな』
『でも・・・!』
『僕はいいんだ。またこの事で何か起こったら、父さんと母さんが悲しむ。もう・・・二人を悲しませたくないんだ』

そう言われたら。
何も出来なかった。
そんな自分が、もどかしかった。

事件の事は、学校中の皆が知っていながら、その後はあえて誰も、口にはしなかった。
その代わり、逸人を、遠巻きに見つめる。
ある者は同情の目で、ある者は冷やかすような顔で。

『逸人・・・逸人! どうした!』
真っ青になって、うずくまった逸人。
そのまま・・・学校には戻らなかった。

あの事が無ければ、病気が悪化する事も無かったかもしれない。
あんなに・・・あんなに学校の中心で活躍していた逸人が。
学校に、戻れなくなった。
戻りたいとも、思わなくなったんだろう。
だから・・・

許せなかった。
あいつらの事が。

そして・・・逸人を守れなかった、自分が。




「蓮は、逸人が亡くなる間際まで、逸人の両親と共に、付き添っていたそうだ。けれど・・・その死を、受け入れる事が出来なかったんだな」

薪は言った。
朝日の中、今出てきた建物から駐車場に向かい、街路樹を、鈴木と共に歩く。

「逸人が休学してからは、蓮もサッカーを止めて病院に通ってたんだ。余程・・・悔しかったんだろうな」
鈴木も言い、歩きながら、ため息を付く。

「多重人格・・・って事になるのか?」
「彼の症状が、解離性障害に該当するかどうか。その点については、精神科医とセラピストのチームにゆだねられる事になる」
鈴木の言葉に、薪が答えた。

薪と鈴木の胸の中に、今別れてきた、蓮の姿が浮かぶ。
復讐を求め、鬼気迫る表情をしていた時とは、まるで別人のように。
呆然と・・・虚空を見つめる瞳が有った。

友人の死を、受け入れられず。
自分が、その友人だと思い込んでいた・・・

「その方が、楽だったんだな」
鈴木は立ち止まり、ぽつりと言った。

「え?」
薪も足を止め、振り返り、聞き返す。

「彼は、友人の死を認めるより・・・大切な人間を失う事よりも、自分自身を殺す方が、楽だったんだ」

鈴木は、前を向いて言い。
それから、自分を見上げるその顔を見つめた。

片手を上げ、相手の髪に差し入れる。
小さな頭が、自分の手の中で、かしげられる。

「何だ?」

言葉を紡ぐ、桜色の唇。
かしげられた細い首に乗る、白い顔。
指に絡む、柔らかな髪。

真っ直ぐにこちらを見つめてくる、大きな瞳・・・

「いや・・・お前、顔色悪いなー・・と思って」
鈴木が言うと、薪は肩をすくめ、歩き出した。
「お前だって、相当酷い顔をしてるぞ」

鈴木も足を踏み出し、薪に並ぶ。
「ここんとこ、お互いほぼ徹夜だからな」
「今日の出勤は午後からだ。一度家に帰って休め。自分がいつまでも若いと思うなよ」
「同い年だろ。薪剛君」

その日の昼過ぎ。
集まった第九メンバー達は、また、新たな事件に挑む事になる。

「・・・結局、休日無しでまた捜査かー・・・」
「家に帰って寝れただけマシだろ」
「ま、こうなる事は分かってたからな」

そんな言葉を交わしながらも。
いざ、捜査が始まれば、彼らは薪の指揮のもと、職務に向かう。




そう・・・

誰よりも、何よりも、大切なものを。
失うくらいなら。

たとえ、それが。
間違ったやり方だったとしても。
その時は。

オレも、きっと。

きっと。





「鎮魂」終






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コメント

■ 鍵拍手コメ下さったAさま

〇9/14に鍵拍手コメント下さったAさま

コメントありがとうございます。

蓮の事、思いやって下さってありがとうございます。
犯罪者でも、自分のSSの中の人物にはもれなく感情移入してしまうので、優しいお言葉に胸が詰まりました(;;)

そうですね…
結局は、蓮の逸人に対する想いを通して、鈴木さんの薪さんに対する想いを描きたかったので。
おっしゃるように、鈴木さんはそんな風に思ったのではないかと思います。

恋愛感情が絡まない、けれど大切に想う気持ち…伝わったとの事、本当に嬉しく思いました。
書いて良かった…

こちらこそ、ずっと見守って下さって、本当に励みになりました。
ありがとうございました!m(_ _)m

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