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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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※清水先生の作品とは、関係ございません。


オリジナルストーリー


「二つの花束」






その人は。

まだ…薄暗いうちに出掛けて行く。
夕べも仕事で遅かったというのに。
シャワーを浴び、改まった服に着替えて。

夜明けと共に、その墓に参るのだ。

早朝に訪れるのは、遺族に会わないようにとの配慮だ。
自分と顔を合わせることが、相手にとっては苦痛であるだろうからと。

一緒に…行ってもいいですか?
そう尋ねたら。
その人は微笑んだ。

何も言われていないのに。
出しゃばってはいけないような、気がした。
二人の時間を…邪魔してはいけないのだ。

帰ってから。
その人は、眠る………

その人の前髪に手を差し入れ、額をそっと撫でて。
入れ替わりに、俺は家を出た。

花を買って、そこに赴く。
先程、その人が訪れた、その場所に。

人が…居た。
墓の前で、手を合わせている。
あれは…年代からすると、もしかしたら…

例え、その人本人ではなくとも。
第九に関わる人間の姿を見ることは、彼にとって、悲しく嫌な思い出を伴う物かもしれない…
そう思い、彼が立ち去ってからにしようかと、遠くから逡巡していたら。
顔を上げた彼と、目が合った。

………

相手は、こちらがどういった人間か、気付いたようだった。
彼は立ち上がり、手招きをする。

俺は一度戸惑い、それから、足を踏み出した。
彼の隣りに並び、名乗ろうとしたら、彼は手を挙げて、それを制した。

分かるよ、君のことは。
新聞で見たからね。
…何も言わなくていい。言わないでくれ。

お参りさせていただいてもいいでしょうか。
彼が頷き、正面から一歩退くのを見て、俺は花を添え、手を合わせた。

傍らで見ていた彼は、そんな俺をじっと見ていたが。
俺が振り返り、無言で頭を下げると。
その下に置かれた花束に視線を移し、言った。

…これ、誰が持って来たか、分かるかい?
君が今置いた花の、その隣りにある花だよ。

俺は、何も言えなかったが。

うん…そうか。
毎年、息子の命日に、必ず花が供えてあるんだよ。
私がどんなに早く来ても、それよりも早くね。

誰の手によるものか、見当は付いていた。
最初の頃は、その花を見るなり、たまらず、処分していた。
どうしても…耐えられなかったんだ。

だが…
毎年、毎年、欠かさず供えられている花を見るうちに。
花に罪は無いと、思うようになったんだ。

彼はそう言って、その人が持って来た花と、俺が持参した花。
双方の花を、墓の前の花立てに活けた。

…私は、赦すことは出来ない。
たぶん一生。
いや、死んでも赦せないだろう。

そこに、どんな事情が有ったにせよ。
息子の命は、帰らないのだから…

だがね。
最近は、思うんだよ。

私は赦せなくても。
息子は…息子自身は、とっくに、赦しているのではなかろうか…とね。

いや、もしかしたら、最初から。
恨んでなど、いなかったのかもしれない。

私は、どうしても。
その顔を見たら、恨んでしまう。
怒りと悲しみが、湧き上がってしまう。
息子はそんなことを、望んでいないとしてもだ。

だから…君から伝えてくれないか。

息子はきっと、恨んでいない。
だから………




たとえ。
その言葉を伝えたとしても。

その人は、自分を赦せないだろう。
ご自分を赦してあげてくださいと。
いくら繰り返したところで。

完全に、赦すことなど、出来はしない。

何故なら。
俺も、同じだからだ。

姉さん達の命を奪ったのは、この俺のせいだと。
そんな自分を赦すことは、永遠に出来ない。

一生…その罪を背負って生きて行く。

姉さん達が残したものを、大切に守り。
自分がこの世で出来ることに、精一杯取り組んでいく。
それが、俺の贖罪だ。

だが…何が有っても。
完全に、自分を赦すことなんて、出来はしない。

だから、きっと、その人も。
永遠に、その罪を背負って行くのだろう。

直接その手に掛けたことで。
俺よりも更にきっと。
ずっと重い物を、ずっと………

でも。

彼が言ったとおり。
手に掛けられたその相手は。
とっくに…その人を、赦しているとしたら。

俺のことも。
もしかしたら、姉さん達は………

空を見上げた。

無性に、その人に会いたくなった。
会って、抱き締めたくなった。

俺は足を速め、家路へと急いだ。




「二つの花束」終






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コメント

■ 

こんばんは

久しぶりにかのんさんの新作!

とっても嬉しいです。
思わず何度も何度も繰り返し読んでしまいました。

息子の想いを考えていた彼。
浮かんだ考えは最初は受け入れ難いものだったように思います。
もしかしたら一生口に出すことがなかったかもしれない言葉。
それを俺に遇った事により淡々と語る彼。
きっと彼の心の整理になったと思いますし、何よりもそれが息子への供養になったように感じました。


勝手ながら
私にはこの空気感が1巻のラストを彷彿とさせて~。
季節は違いますが
風が少し吹いていて
それは時間が過ぎて行くかのようで
優しいような
残酷なような
微睡むような
切ないような
そして心の奥底にチクンって刺さるものがある
(あくまでも私の視点ですが…)


それぞれの胸の悼みは決して消えないけれど
彼の乗り越えたものは
彼から俺へ
俺からその人へ
伝わり広がりますね

とても胸に沁みました。

■ 鍵拍手コメ下さったAさま

〇8/15に鍵拍手コメント下さったAさま


コメントありがとうございました!
こんなに!長らく!お返事書かずじまいで申し訳ありませんでした!(><;)

そうなんですよね。
Aさんのおっしゃるとおり、私も、親の立場になったら…

…でも、本人を赦すことは出来なくても、せめて、手向けられた花は受け入れられるようになったら…そして、亡くなった息子本人の想いに胸馳せられるようになったら………

決して取り返しの付かない出来事。
でも、残された者達の心情は、少しずつ…少しずつ変化していく物であり、変化していって欲しいと願います…
それが、鈴木さんにとっての本当の供養になるのではないかと…

薪さんと同じ心の世界の住人になる為に…おっしゃるとおりだと思います。
罪を背負った薪さんに対して、思い苦悩や罪を背負っていない日の当たる場所にある青木が、薪さんの手を取って救い上げてくれるものだと思っていたから…姉夫婦の事件が起こった時には、本当にショックを受けました。
青木は明るい場所に居て、薪さんに手を差し伸べて欲しいのに、薪さんを救い上げるどころか、これでは共に堕ちて行くのではないかと…

でも結局は、そういう事だったんだと思います。
薪さんの傍に立つ為には、必然だったのかと…
辛い…辛いですけどね…

どうもありがとうございました。

■ Misaさま

〇Misaさま


コメントありがとうございます!
せっかくコメントいただいたのに、こんなに長い間、お返事を書かずじまいですみませんでした!(><;)
2カ月以上もブログを放置してしまって…本当に申し訳ないです…

> 久しぶりにかのんさんの新作!
> とっても嬉しいです。
> 思わず何度も何度も繰り返し読んでしまいました。

きゃああ…!
ありがとうございます!
こちらこそとても嬉しいです…!!

「秘密」SSを書くのは本当に久々で…でも、書き始めたら躊躇する事なく一気に書き上げる事が出来ました。
やはり、自分の二時創作の原点は「秘密」だと、改めて感じられました。

> 息子の想いを考えていた彼。
> 浮かんだ考えは最初は受け入れ難いものだったように思います。
> もしかしたら一生口に出すことがなかったかもしれない言葉。
> それを俺に遇った事により淡々と語る彼。
> きっと彼の心の整理になったと思いますし、何よりもそれが息子への供養になったように感じました。

うわ~うわ~うわ~~~…
何と申し上げたらいいか…
何の説明もしなくても、込めた思いを全て汲み取っていただけたようで…いえ、込めた以上に、様々な物を感じ取っていただいて…もう感動です…!(;;)

これ以上、私が申し上げる事は何もございません。
こんな風に読んでいただいて、幸せです…

> 勝手ながら
> 私にはこの空気感が1巻のラストを彷彿とさせて~。

ありがとうございます。
私は1巻のラストのシーンが好きで。
本当に大好きで、そこからブログのタイトルも付けた位ですので…そんな空気を感じ取っていただき、嬉しいです…

> 優しいような
> 残酷なような
> 微睡むような
> 切ないような
> そして心の奥底にチクンって刺さるものがある

美しい表現ですね…泣けます…(><)。。。

> 彼の乗り越えたものは
> 彼から俺へ
> 俺からその人へ
> 伝わり広がりますね

そうなってくれたら…そう願います…

こんな短いお話に、こんなに色々な物を感じて下さって。
書き手としましては何と申しますか…感無量です。

お読み下さって、こんな素敵なコメントも下さって。
本当に、ありがとうございました…!m(_ _)m

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