カウンター


プロフィール

かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

リンクは嬉しいので、ご自由にどうぞ♪


当ブログ拍手頁

最新の公開拍手コメのレスはこちら それ以前の公開拍手コメ&レスは、各記事の拍手ボタンを再度押していただければ読めます 鍵拍手コメにつきましては、拍手をいただいた記事下コメント欄にレスを書いております

所属してます♪


月別アーカイブ


最新記事


最新コメント


検索フォーム


 
メロディ2015年6月号「秘密 THE TOP SECRET season0 OLIGINAL SIN ACT.6」

レビュー5:青木と沙羅・薪さんとタジク




改めて、事件を追ってみると。
タジクも沙羅も、犯罪に手を染めたのはもちろん悪い事だけれど、とても…強い人間だと思う。

アリエフ大統領に見られる倹約家という姿勢からすると、タジクの「全部食べるのが供養」という精神は、タジクの部族だけではないという風にも見受けられる。
皆、歴史的に貧しい国で、無駄を省き、堅実に生きてきたのだろうなと。

そんな国の中でも、特に貧しい部族に生まれた、タジクと沙羅。

幼い頃から放牧や工場勤めをこなし。
弱い者達が集まる場所で、更に弱みを持つ者を徹底的に痛め付けるような…そんな環境で生きてきた。
可愛がっていた羊が捌かれ調理され、口にして泣いた…

それにしてもこの冒頭のシーン、よりによって「おかしら付き」にした清水先生の残酷さよ…
まあだからこそ、容赦ない過酷さ、そうして食べていかねば生きて行けない事実が、突き付けられるのだけど。

そんな、トラウマにもなりそうな出来事を乗り越え。
タジクは、自ら屠畜、解体をする料理人に成長した。
言葉の壁も有り、外国人のシェフに偏見も有るであろうヨーロッパ各地で修業を積み。
ミシュランに絶賛されるまでに腕を磨き。
この日本に、代官山に高級フレンチの店を出した。

一方、沙羅も。
障害を患い、子供を幼くして失い、自らも癌に侵されるという不幸を背負いながら。
外国であるこの日本で、衆議院議員の秘書にまで登り詰めた。
議員本人より、まずは放蕩息子に近付く…というやり方をしたのかもしれないが。
それにしたって、専門用語も含めた通訳や翻訳をこなし、正式な場に出ても恥ずかしくない常識や作法を身に着け、政治経済の事柄に精通し、機転も効かねば、その役目は務まらないだろう。

タジクも、沙羅も。
厳しい環境の中で生き抜き、強さを育み、田舎から出て途方もない努力を積んで、今に至ったのだ。
その道のりを思うと…ため息が出る。

沙羅が、ポトノフ外相に近付く機会を得る為に、川谷議員の懐に入り込んだのか。
あるいは、議員の秘書になってから、最終処分場についての会談やポトノフ外相の談話を聞き、復讐を決意したのか。
その順序は、よく分からない。

だが、いずれにせよ。
沙羅は、子供を失い、自分の余命も少ない事を知り。
ポトノフ外相に復讐する為に、その為に生き延びてきた。

沙羅が亡くなったのは、「食事会」から四日後。
容体が急変したと有ったが。
復讐の機会を逃して、失意の為に急変したとも取れるが、実際は、もうとうに体は壊れていたのに、復讐すると言う気力で何とか保っていたのか…

療養すれば、もう少し命を長らえさせる事も、出来たかもしれない。
だが彼女は、そんな事は、望んでいなかった。

自らの命を掛けて。
恐怖に震えながら寿明の死体遺棄の手助けまでしつつ。
彼女は、復讐を行なおうとしていた。

それが、彼女の生きる目的。
彼女の残された人生の…全てだった。

それが失敗し。
人生の全てを、取り上げられてしまった彼女。

彼女の歩んだ道を思うと、相手に致命傷を負わせないまでも。
せめて一太刀、思いを遂げさせても良かったと、無責任な読者としては、思ってしまう程。
もちろん、そんな事になれば、薪さんがモノローグで言っていたように、国際問題にまで発展してしまうのだが。

全てを掛けて来たのに、それが失敗し。
失意のどん底に有った彼女が…結果的に刺した相手。
自分の人生を掛けた復讐を、邪魔した男。

自分が傷付けた相手。
その一瞬、何より誰より憎んだ相手。
…なのに、彼女は。
その相手に頭を垂れ、涙を流す。

ああ…青木だ。
そう思った。

相手は、外相を殺すという、テロを目論んだ犯罪者。
自分に深手を負わせた相手。
青木でなければ、もっと他に、言う事は有ったろうと思う。

けれど、青木の言葉はたった一言。
「すみません」
と…

その言葉に、沙羅の思いが溢れ出す。
自分の非力さ。
もうどうする事も出来ない事態。
悔しさ。
悲しさ…

どれ程に無念だったか。
けれどその思いをぶつける相手が。
復讐を邪魔したその本人であり、自分がナイフで刺した相手とは…

彼女は、哀れだ。
けれど、その復讐を阻止した相手が。
刺した相手が。
青木であった事は…彼女の救いだったのではないか。

彼女を徹底的に、みじめな立場に置いた清水先生が。
せめてもの救いに配置したのが…青木だったのではないだろうか。

薪さんも言っていた。
『おまえが嗤ってバカにしていた青木の方がずっと強い』
『ただ自分だけが刺されて倒れる事を選ぶ青木の方が』

これまでの凄惨な過去も全て。
被害者を加害者を。
人を想う強さに変えて。

全てを阻止したのが、そんな青木だった事。
あの時。
涙を受け止める相手が居た事は。
沙羅にとって。
目的の為に生き、けれどその目的を遂げられずに終わった、悲しい人生の最後で。

彼女に救いを与えてくれたのだと……そう思う。

そしてタジク。
「あなたまで巻き込んでごめんなさい」と泣く沙羅に、「大丈夫だ」と伝えられた事は、タジクにとっても、救いであった事だろう。

自分が、沙羅の援護をする筈だったのに。
『誰にも君の邪魔はさせない』と誓ったのに。
…その目的を、果たせなかった。

幼くして死んだ妹。
その妹と自分を、身を挺して庇ってくれた沙羅。
共に呪われた土地で生まれ、病に侵されながら、過酷な土地で生き延び、この日本で最後の願いを叶えようと、必死に努力し、一つの目的で結ばれてきた人。
どれ程の信念で、守ろうとしてきたのか。

なのに、守り切れなかった。
彼女の目的を、遂げさせる事が、出来なかった。

そんなタジクにとって。
タジクまで巻き込んだという彼女の罪悪感を、大丈夫だと伝え、彼女が亡くなる間際に、彼女の重荷を少しでも軽くする事が出来た事。
それはタジクにとっても、ささやかな…救いになったのではないだろうか。

二人の人生を掛けた目的は、失敗した。
けれど救いを残し、沙羅は亡くなった。

そして…タジクは生き延びる。
日本のレストランを整理して、故郷にも別れを告げて、全てを捨て去り、どこかへ行こうとしていた。

だが、薪さんは逃さなかった。
タジクと、最後の決着を付けた。

貧しい故郷に。
日本での寿明達の振る舞いに。
弱肉強食の地獄を見ていた、タジク。

他人に、遺体の後始末を負わされ。
底辺で支配されていたように見せて。
その実、寿明達を病魔に晒し、警察を翻弄し、場を支配していた、タジク。
弱い…弱い立場であったからこそ、彼は、強くなった。

そして、強くなった事で。
どこか、倫理観までもが、歪んでしまっていた。

「料理」を使って、寿明や周囲の女性達を病気で死に至らしめても構わないと思い。
人間の遺体を解体し、豚に与え、それを調理しても平気な神経になり。
その「料理」を、沙羅の犯罪の援護の手段とした。

沙羅や妹や故郷を想う気持ちは変わらずとも。
それ以外の彼の心は、荒んだ環境に、病んでしまっていた。
たぶん…自らが病んでいるとは、自覚の無いままに。

薪さんとの攻防も、警察に捕らわれるかもしれない等という不安や警戒も無く、楽しんでいたように見える。
見ず知らずの女性の為に頭を擦り付ける薪さんを見て、興味を持ち。
その薪さんのしぶとさにも、堂々と受けて立った。
自分が、絶対的優位に立っていると、確信して。

薪さんは言った。
『だがこれは「料理」じゃない』
『一流じゃない 信念もない ただの「テロ」だ 料理じゃない』
『おまえはただの 人殺しだ』

タジクが業界で絶賛された料理は。
必死に努力をして磨いた腕は、人を楽しませ幸福にさせる筈のそれは。
ただの「犯罪の道具」になっていた。

タジクはその事に、気付いていたろうか。
自分がしていることは、何なのか。
自分が追い求めてきた「料理」は、どうなってしまったのか。

全ての始末を終え、タジクは、墓参りに行く。
そして、驚愕の光景を目にする。

その墓は、網の向こう。
放射性廃棄物の処分場建設予定地には、あろうことか、タジクの妹や沙羅の娘達…国の犠牲になった幼い者達の墓地までもが含まれていた。

自分が守りたかった物。
そして…守れなかった物。
沙羅も亡くなり、故郷の墓までもが、手の届かないところへ行ってしまった…

タジクの人生とは、何なのだろう…

薪さんに、証拠の場に辿り着かれ。
手錠を掛けられ、呆気に取られるタジク。

タジクは、薪さんに敗したのだ。
その後のタジクは、まるで別人のように見える。
黙秘を続け、幻影を見続ける。

そんなタジクの心に、薪さんは話し掛ける。
何もかも失敗し、食事会の件は、事件にすらならない。
何も成す事が出来ないまま、捕らわれた自分…

けれど。
彼らが、タジクと沙羅がやった事は、全てが無駄では無かった。
もちろんそれは犯罪で、許し難い事ではあるけれど。
そんな彼らが残した結果が、「墓地は処分場から外される」という形となって…そこには有った。

全てを掛けながら…動いた結果は、ごく、ささやかな物だ。
外相も大統領も無傷のまま。
処分場が故郷の全てから去るわけでもない。

それでも…

彼らが…「犯罪」という形ではあったけれど、故郷を想ったその彼らの信念が、状況を動かしたのだと。
薪さんは、それをタジクに伝える。
『ポトノフ外相にも何か変化をあたえたのかもしれない』と、薪さんは言った。
「かもしれない」だけであって、確証では無い。

それでも、薪さんの言葉は。
タジクの心を動かす。

闇に沈んでいたタジクの瞳が。
ようやく、光を帯びる。
それは…タジクが見出した、希望。

青木が、沙羅の涙を受け止めたように。
薪さんも、タジクの故郷への想いを受け止める。

沙羅に救いが有ったように。
タジクにも、救いがもたらされた。

タジクのやった事…病に侵される料理を提供した事も、遺体の処分をした事も。
亡くなった人達の事を思ったら、それらは、酷い犯罪であり、許される事ではない。
簡単に、外に出て来る事は出来ないだろう。
出て来たその後も、犯罪者という責任と汚名は、ずっと付いて回る。

それでも。

それが、どれだけ先になったとしても。
薪さんは、タジクの料理を、食べに行くのだろう。

『ここから出たら つくりましょうか?』
その時は、犯罪の手段でも無い、病んだ心で提供する物でも無い。
本当の「料理」を、タジクは作るのだろう。

沙羅は亡くなった。
タジクも、同じ土地で生まれ育ったのなら、もしかしたら、長くは生きられないのかもしれない。
それは、分からない。

それでも、今、人生のこの時間において。
薪さんに出会い、薪さんと対峙し互いに挑戦し、薪さんに掴まった事。
それはきっと…タジクの人生の大きな転機となり、救いとなった。

沙羅も、タジクも。
過酷な環境で生き抜いてきた、人生の中で。

薪さんと青木。
彼らに出会った事。

それは救いであり。
そして………希望となったのだ。






関連記事

コメント

コメントの投稿



管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

■この記事のトラックバックURL

⇒ http://kanon23.blog36.fc2.com/tb.php/959-45319bbd

この記事に対してトラックバックを送信する(FC2ブログユーザー)

■この記事へのトラックバック

 | BLOG TOP |