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かのん

Author:かのん
薪さんと同身長が自慢です

基本、「薪さんと鈴木さんは精神的両想いだった」「薪さんと青木には、心身共に結ばれてほしい」という、偏った視点で書いております
創作も主に、薪さんが「青木と幸せになる未来」と、「鈴木さんと幸せだった過去」で構成されております

コメ、拍手コメ共に、過去記事にも遠慮なく投稿いただけたらと思います
レスは「コメをいただいた翌々日までにお返しする」ことを自分に課しておりますが、諸事情により遅れる場合もございます
でも必ず書かせていただきますので
ご了承下さいませm(_ _)m

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※清水先生の作品とは、関係ございません。


オリジナルストーリー


「快晴」




青木は、走っていた。

ほんの2キロ程の水辺を、一周しただけで息が上がる。
運動不足の証拠だ。

体が温まったところでストレッチをして、それからまた走り出す。
昨日までどんよりと空を覆っていた雲が今は抜け、澄み渡る青空が広がっている。
気持ちの良い朝だ。

夕べは、自分の管区で抱えていた事件が解決し、中央に報告書を提出することも出来た。
ホッとして帰宅しベッドに入ったが、心身は疲れ切っているのに、とろとろと浅い眠りが続くばかりで、熟睡することが出来なかった。
全てが終わって区切りが付いた筈なのに、横になると事件の生々しい映像がよみがえり、被害者や加害者、その周囲の人達の事を思っては、神経が高ぶり、眠れなくなってしまうのだ。

結局、それ以上眠る事を諦め、青木は夜明けと共に家を出た。

時間が出来るとジョギングをする習慣が出来たのは、まだ、薪がニューヨークで活躍していた頃だ。
薪の姿に、自分が必死になって歩き方、走り方を学んで転んでいるうちに、薪は2つも3つも階段をかけのぼっていると感じた。
そして、自分はまだ何も変わっていない、何も成し遂げていないとも思った。
そう思ったら、居ても立ってもいられなくなった。

寸暇を惜しんで一つでも多くの捜査をしなくてはいけない、そう思うと同時に。
捜査の合間に時間が取れれば、体力作りに励むようになった。
トレーニングジムで鍛えるのも良いが、外に走りに出ると、気分も晴れた。
身も心も、薪に少しでも追い付かなければ…
そんな焦りが、外の空気を吸いながら走ることで、昇華されていくような気がした。

『それは、ベータエンドルフィンの分泌によるものだろう。所詮気休めだ』
薪なら、そんなことを言うだろか。

想像して、青木は我知らず口元が緩み、同時に、足の運びも緩めた。
速度を徐々に落としていき、足を止める。
立ったまま膝に手を付き、荒い息を付く。

それから目の端に止まったベンチに歩み寄り、そこに座った。
首に掛けたスポーツタオルで、首筋の汗を拭う。

第8管区に移ってからも、なるべく体力作りを続けようとは思っているのだが、捜査が立て込むと、それどころではなくなってしまう。
捜査に区切りが付いた今日のような日に、久々に走ると、いかに自分が運動不足かを痛感する。
学生時代は、体を動かすのに多少間が空いても、こんなにブランクを感じることは無かったのだが。

「俺も年かな…」
小さく声に出て、そのことに気付き、苦笑する。

『年のせいにするな』
またも、薪の声が聞こえるようだった。

年齢で言ったら、薪は、自分より一回りも上なのだ。
だが、容姿はもちろんのこと、体力も頭脳も、全く衰えを見せない。
あの華奢な身体で、自分のような大男だって投げ飛ばすことも出来るし。
いざ捜査に入れば、飲まず食わず眠らずとも、判断の狂いを見せることなく、事件に取り組んでいく。

「敵わないよなあ…」
そう呟いて、青木は、そっとため息を付く。

追い付くどころか、どんどん先に行ってしまう、その上司を想い。
胸が…痛む。

追い付きたい。
追い付けない。
傍に居たい。
居られない。

心はいつも薪の面影を追っているのに。
薪も、今は同じこの日本に居るというのに。

薪の姿は。
未だ、遠い…

でも、だからこそ。
力を尽くさねばならない。

自分が今出来るのは、この第8管区において、捜査にまい進することだ。
『人に目指される「青木」になれ』
薪は、そう言ってくれた。

自分は、薪のようにはなれない。
自分が、青木一行が、出来ることを、成し遂げるしかないのだ。
第九の室長として、そして一人の人間として、もっともっと、成長せねば。

そして………

背後に軽やかな笑い声が響き、青木は我に返る。
振り返ると、揃いのスポーツウェアに身を包んだ男女が、並んで走り抜けていく。

腕の時計を見て、青木は立ち上がった。
そろそろ、舞や母親が起きる時刻だ。

今日は仕事は休みだ。
舞には保育園を休ませて、久しぶりに一日一緒に過ごすか。
それとも、舞を保育園まで送り、それから、年寄りの身では家事が行き届かないと嘆く母を手伝い、洗濯をし、家の掃除や買い出しをしようか。
そして早めに舞を迎えに行き、自分も手伝うと言うであろう舞と共に、夕食の支度をしようか…

「…休日と言っても、ちっとも休めないな」
青木は苦笑した。
だが、それが家族が居る幸せでもあるのだ…

青木は、空を見上げる。
向こうの空も、晴れているだろうか。
自分が今、一番家族になりたい、この同じ空の下に居るであろう、その人を想い。

青木は、帰るべき方へと走り出した。




「おはようございます。早いですね」
既にモニターの電源を付け、書類を手に立つ薪の姿に、岡部は声を掛けた。

「室長は俺なんですから。所長のあなたはもっと上役出勤でいいんですよ」
薪に近付きながら岡部は言うが、薪は顔も上げず、手にした書類に目を落としていた。
「それは何です? …ああ、例の第8管区の報告書が届きましたか。早いですね」
薪の肩越しに岡部は覗き込む。

つい…と、岡部に書類を手渡し、薪は離れた。
「僕はもう見たから。決裁を回しておけ」
「はい」
薪の言葉に岡部は応え、そして手元の書類を見て目を見開いた。
「データ送信、夜中の2時過ぎじゃないですか。来週でいいって言ったんですがね。青木の奴…」

片手を首に回しながら、フッ…と笑い、岡部は続ける。
「青木、今日は休みを取るって言ってましたね。これがこの時間に送られたんじゃ、今朝はまだ寝てるでしょうね」
「………」
「薪さん?」

岡部は顔を上げる。
薪は、窓辺に佇み、空を見上げていた。
雲一つなく青空が広がる、その空を。

ガラス越しに差し込む日の光に、薪の横顔が照らし出され…その口元は、僅かに微笑んでいるようにも見えて…

…いや、眩しくてよくは見えなかったが。

岡部はそれ以上何も言わず、今日の仕事に取り掛かった。




「快晴」終






コメント

■ 鍵拍手コメ下さったAさま

〇2/17に鍵拍手コメント下さったAさま

コメントありがとうございました!
毎度お返事がすっかり遅くなってしまって申し訳ありません…

お読み下さってありがとうございました!
身に余るお言葉…嬉し恥ずかし光栄です…(;▽;)

後書きを書きそびれていたのですが、後書きに書こうかな…と思っていたこと、全てAさんのコメントに書かれていて、「ああ、ここに込めた想いが伝わったんだなあ、分かって下さったんだなあ…」という事がしみじみ分かって感動しました。
離れていても、二人の心はいつも確実に共に有る…そんな青薪が大好きです(*´∀`*)

ありがとうございました。

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